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つばめの宿 海辺の一家9

    浜や食堂のさちこ母さんは、つばめが大好きだ。

    毎年、三月になると「まだかな〜 今年は何組来てくれるかな」と
    そわそわしながら、待ちわびている。


    やがて桜の咲く頃になり、一組目のお客さんがやってきた。

    そして、いつの間にか、母屋の土間に二組、外の軒下に一組
    古い巣の手入れをしたり、新しい巣を作ったりしている。

    母屋はおなじみさんで、外のは新しいカップルかもしれない。

    浜や食堂の横にある住まいの裏手は、さながら「つばめの宿」となるのだった。


    やがて雛がかえった。
    あちこちで、ピーピーとかわいい声がする。
    親鳥も朝早くから、ひなのエサを探して大忙しであたりを飛びまわっている。

    ところが、ある日つばめの夫婦の一羽が帰って来ない。

    どうしたんだろ? 


    さちこさんは、心配でたまらない。
    浜や食堂の献立もうわの空で、空を見上げてはつばめの心配ばかりしている。

    仕事を終えたなっちゃんが二階から降りて来た。

    「どうしたの?」

    「親鳥が 一羽 帰ってこんのよ」

    「そうなんだ… どっちが帰ってこんの? お父さん お母さん?」

    「どっちがお母さんだか そんな事 分かるもんかい!」

    さちこ母さんは、憮然としている。

    そうやって、四〜五日たっても、親鳥は一羽のままだ。

    このままでは雛のエサが足りないと、ペットショップで小鳥のエサを買ってきた。
    親鳥の留守をねらっては、脚立に乗りせっせと水で練ったエサを与えている。


    そして、数日たったある日、ふと背中に視線を感じて振り向いた。
    すると、近くに止まった親鳥がじっと睨んでいる。

    「あんた、うちの子に何しやるん?」

    「あ、いや その〜 おなかすかしてるんやないかと…」

    「要らんことせんといて!」

    と ツバメの母さんに怒られてしまった。

    健治父さんも

    「そんな脂っこいエサやったら、太って 巣立ちの時飛べんかもわからんぞ」
    「そやろか?」

    ちょっと おせっかいなつばめの宿のおかみは
    エサやりを止めて、様子を見る事にした。

    相変わらず、親鳥は一羽のままだったが
    それでも、雛は元気に育ち、おでぶにもならず、無事に旅立って行った。

    「おまえ ようがんばったねぇ また来年おいでよ〜」


    さちこさんは、目を細めて見送ったのでした。

    < 後書き >

    これは 実話です。
    本人の了解を得て、さちこさんのエピソードとして使わせて頂いています。
    そもそも その方がさちこさんのモデルなのです ^_^

    この食堂の名前も、二人で考えたもので
    彼女は「たぬき屋」を主張
    私は それはクセがあり過ぎる 「つばめ食堂」はどう?
    う〜ん それもちょっと 趣味に走ってるか…
    で、無難なところで 「浜や食堂」に落ち着いたのでした。


    #海辺
    #ツバメ
    #食堂
    #雛
    #親鳥
    #ペットショップ


     
     
    魔法使いに、「絶世の美女か? 量子力学の天才か? どっちになりたい?」と聞かれ  「両方!」と言ったら、張り倒されて風に吹かれている🌸

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