
🐈⬛ 消えたクロちゃん 1/3
< ある夜のできごと >
玄関ドアの外で、何やら物音がした。
夜の10時を少しまわっている。
( こんな時間に 何かしら?)
8階建てマンションの6階に住む奥さんは、そっとドアを開けた。
だが、優しい春の夜風が入ってきただけで誰もいない。
外に出て、廊下を見渡しても人影はない。
「変ねえ 回覧板でもないし…」
奥さんは、首をかしげてつぶやき、ドアを閉めた。
その頃、ひとつ下の5階 Sさん一家では
「ねえ クロちゃん知らない?」
お迎えして半年ばかりの子猫の姿が見えなくなっていた。
「えっ さっきまで いたじゃない」
「そうなんだけど、見当たらないのよ」
「ベランダも どこの窓も開いてないよ」
「おかしいなぁ」
皆 考え込む。
「あ〜 さっき お兄ちゃん コンビニ行ってきたでしょ」
「おれ 玄関 すぐ閉めたよ」
「それよ それ スッと出ちゃったのよ
あの子 真っ黒だから あんた気がつかなかったんじゃない?」
大変だ!
一同はざわめいた。
お母さんが、外の廊下に出て、あたりを見回す。
お姉ちゃんは、サンダルを突っかけて非常階段を登った。
何も知らないお父さんは、のんびりお風呂に入っている。
「ちょっと落ち着け 手分けして探そう」
クロちゃん失踪の原因を作ったのに、妙に冷静なお兄ちゃんが指揮を取る。
こうして、皆でマンション中を捜索したが
どこにも気配さえなかった。
夜の闇の中を、柔らかな風が吹き抜けているだけだ。
それに、夜ふけの事でもあるし、あまり大騒ぎもできない。
仕方なく引き上げて、お母さんは迷子ポスターを作った。
「明日の朝 管理人さんにお願いして掲示板に貼ってもらおう」
こうして5階の一家は、眠れない夜を過ごした。
〜 続く