
ディズニーランド 海辺の一家10
暗いトンネルを、カタカタと音を立てて
おんぼろ列車みたいなジェットコースターは進んで行く。
トンネルを抜けた次の瞬間、ガタッと大きく横揺れし
赤茶けた高い岩壁の急カーブの線路を
右に左に曲がりながら速度を上げ始めた。
キャー ウワァー と、子供達の悲鳴が上がる。
あまりの揺れに、今にも谷底に転げ落ちそうな気がして
みんな両手を上げて叫んでいる。
次々とトンネルを抜けて、たどり着いたのは
荒れ果てた鉱山の廃墟だ。
誰もいない建物とサボテンだけが風に吹かれている。
さらに古い坑道へ進むと
黄色いランプが闇に光り、古びた釣鐘が 不気味に揺れている。
列車は、暗い坑道を登り 急傾斜を駆け降りる。
さんざん悲鳴が響いた後、列車は元の場所に戻って来た。
「ふぅ〜」 「はぁ〜 すげぇ」
大吾と蒼太は、興奮した様子でジェットコースターから降りて来た。
従兄弟どうしの二人は、春休みのディズニーランドに来ているのだった。
外で待っていた由紀おばちゃんが、笑って手を振る。
清ばあちゃんの一人娘で、蒼太のお母さんだ。
妹の花ちゃんも一緒にいる。

蒼太に誘われて、大吾は一人 新幹線で遊びにやって来たのだ。
今日は、初めてのディズニーランドに頭がクラクラしている。
「さて これからどうする?」
由紀おばちゃんが問いかけると
「あ〜 おなか空いた」
「ぼくも」
「花 アイス食べたい」
と三人が声をそろえる。
一行は、あたりを見回しながら レストランに向かった。
暖かい日差しの中を
ミッキーマウスの風船を持った女の子が駆けて来る。
向こうからやって来るのは、ドナルドダックらしい。
遠くには、シンデレラ城がそびえている。
何もかもが夢の中のお祭りみたいだ。
食事をして、午後のパレードを待つ事にしよう。
夕方 バス乗り場まで送ってきた蒼太は
「もっと いたらいいのに…」と名残惜しそうだ。
「うん、でもあさってサッカーの試合があるんや」
お土産でふくらんだリュックを肩にかけ、大吾はバスに乗り込んだ。
「気をつけてね、ばあちゃんによろしくね」
ちょっと心配そうな由紀おばちゃんが見送る。
やがて手を振る二人を残して、高速バスはゆっくり走り出した。
買ってもらったお弁当を食べ、サービスエリアでトイレを済ませると
二日間の疲れが出たのか、大吾はすぐに眠くなってしまった。
目を覚ますと、バスは海岸沿いを走っている。
見覚えのあるバス停で降りたが、迎えの車はまだ来ていない。
大吾は大きく背伸びをし砂浜に降りた。

波打ち際の潮の香を吸い込みながら、大吾は思った。
(ディズニーランドはすごかったなあ。でも僕はやっぱり、ここがいいや)
その時、後でクラクションが聞こえ
青い軽自動車の窓から 夏美姉さんが手を振っているのが見えた。
ポケットのお土産のキーホルダーを確かめると
大吾はゆっくり歩き出した。
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