
空飛ぶ吊り橋 ダム湖のある村
A flying suspension bridge
in a village with a dam lake
二人は、両手を広げて谷川の上を飛んでいた。
吹き上げてくる涼しい川風が、少女たちの髪をなびかせる。
「ヤッホー」
「お〜い」
谷の向こうは山の緑が一段と濃く
入り混じったセミの声が、うるさいほど響き渡って谷間の大合唱になる。
美桜とメイは、谷の向こうの集落へと続く吊り橋の上に寝ころんでいるのだった。
腹ばいになって、下の谷川の流れを見つめていると
まるで谷川の上を飛んでいるような気がして
ぐんぐん流れをさかのぼっているような気がして
ちょっと酔っ払ったみたいになって来る。
メイが、さっき橋のたもとで もいで来た山桃の実をほおばる。

甘酸っぱくて 、どこか松ヤニっぽいクセがある野性味あふれる木の実だ。
赤紫色の汁が指先から流れ落ちて、メイの白いシャツにシミをつくった。
「あたしにも ちょうだい」
美桜が 大きな蕗の葉っぱに乗せた赤い実に手を伸ばす。
と、その時 さわっと風が吹き抜けて、蕗の葉っぱが風に舞い上がり
赤い実がパラパラとこぼれて、下の谷川に落ちていった。
「あ〜 」
二人の声をよそに
山桃は、あっという間に流れに飲みこまれ下流に消えてゆく。
少し下流には、前は 村人が総出で作った小さなダムと発電所があった。
美桜の父さんは、その小さな発電所を管理していたので
彼女には、発電所に遊びに行った想い出がいっぱいある。
ダム湖を眺めながら学校に通い、放水口で魚のつかみ捕りもした。
だが、電力会社から正式な電線が引かれて発電所は閉鎖されたし
ダム湖も砂に埋もれてしまった。
発電所が出来た頃、小学校に上がる前だった美桜も、もう六年生になった。
戦後の世の中が落ち着きを取り戻すにつれ
この小さな山村も少しづつ変わってゆく。
美桜は、想い出を振り払うように 元気よく言った。
「美穂ちゃんとこで アイス買って帰ろう」
「うん!」
二人は、吊り橋の手すりをつかんで立ち上がった。

空飛ぶ吊り橋 ダム湖のある村
A flying suspension bridge in a village with a dam lake
吹き上げてくる涼しい川風が、少女たちの髪をなびかせる
A cool river wind rises up, ruffling the girls' hair.
山桃は、あっという間に流れに飲みこまれ下流に消えてゆく
The mountain peach was swiftly carried away by the current, disappearing into the distance downstream.
この小さな山村も少しづつ変わってゆく
This small mountain village is undergoing a slow transformation.
発音は こちらへ
A flying suspension bridge in a village with a dam lake;
A cool river wind rises up, ruffling the girls' hair.
The mountain peach was swiftly carried away by the current, disappearing into the distance downstream.
This small mountain village is undergoing a slow transformation.
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