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知らない人の車に乗りそうになった小4の話

*リアル怖い話がでてきます。トラウマがある人はそっと閉じてくださいね。甘いもの食べてもふもふを愛でてください。

*閲覧注意




「道を教えてほしいんですけど、○○という場所、分かりますか?」
車がスーッと近寄ってきてそう言われた。

小4の夏休み。
私は塾の夏期講習に行く途中だ。

男性のいう場所はすぐ分かった。
「あ、知ってますよ!車ならここから10分くらいだと思います」
「あ、そうなんですね。良かったら案内してもらえませんか?」

男性は車に乗ったままお願いする。
車に乗って案内してくれ、ということか。

私は考える。
案内はできる。
できるが、
実は今私は、
塾の夏期講習に遅刻しているところだ。

いつもなら友達と待ち合わせて行くのだが、
友達も待てないくらいの大遅刻をしているのだ。
ぶらぶら目的もなく歩いているように見えたかもしれないが、
本来は猛ダッシュで塾へ向かっていないといけない時間なのだ。

「えっと、ごめんなさい、急いでるんです。塾が始まる時間なので」

急いではいない。
ぶらぶら歩いていた。
走ったところで遅刻決定の時間だったから
同じ遅刻ならゆっくり行っちゃお。
キティちゃんの塾バッグを揺らしながら
のんびり歩いていた。

ただ、頭の中では急がなくては!とは思っている。
頭の中では「猛スピードで走ってハアハアして
すでに塾に着いている自分」をリピートしている。

「そうなんですか?じゃあ、塾まで送りましょうか?」

急いでいるそぶりもなかった私の嘘に気が付かなかったようで、車に乗ったままのおじさんが言う。

どこまでも丁寧で、少し早口だ。

小4の私は思う。

ヤバイ。


なんて親切な人だ!
自分は道に迷って困っているというのに
私に手をさしのべてくれた。

すごく
自分が恥ずかしくなってきた。

待ってくれた友達に嫌な思いと心配をさせて
塾の先生を怒らせているはずの私。
中学受験など考えてもいないのに、
仲のいい友達がみんな塾に入ったからという理由で
塾の夏期講習に行きたいと親にお願いした私。

それでこの体たらく。
猛烈に恥ずかしい。
その上親切な人の車で送ってもらって
楽をして塾に到着なんて
お天道様に顔向けできない。

「いえ、大丈夫です!走っていきますんで!
あ、この先に交番があるので、○○の場所を教えてくれると思います!」

お辞儀をして、猛ダッシュで塾まで走り続けた。
せめてものお礼として交番が近くにあることを伝えられた。おじさん、ちゃんと目的の場所につけたかな、と思いながら塾の先生にしこたま怒られた。

という話だ。


賢明な皆さまならお気づきだろう。


私が、間一髪犯罪から免れたということに。



後から考えてみれば、
大人は子どもに道を聞かない。
車に乗って案内しろなんて言わない。
少し先に交番があるのにもかかわらず、
小学生の女の子に道を尋ねたりしない。

完全に不審者だ。

そして小4の私は
気が付かないうちに最適解を出していた。

1.急いでいると断る。
2.大人のいる場所(塾)へ行くとつげる。
3.交番がすぐそばにあると伝える。
4.脇目も振らず猛ダッシュ。

いかにも、犯罪者だと気がついた女の子の行動。
バレた!と相手を怯ませる行動をとっていたことになる。
結果的には。

と後々分かってゾッとした。
あれ、コレって
さらわれそうになってたってこと?
危なかったのか私?

パズルのピースが組み合わさっていく。


そのころから、小学校の登校が集団登校に切り替わった。
避難訓練と称して、しばらくの間親に子どもを受け渡すまで学校の先生が待機した。
親は塾への送り迎えを車でするようになった。

その理由が、女の子がさらわれそうになったとか、登下校中に不審者から声をかけられたとかまことしやかに噂された。テレビでは盛んに子どもが攫われるニュースが流され、ワイドショーで不審者が世を賑わせていた。予防策としてなのか、実際に犯罪があったのか、本当のところは子どもの私には分からなかった。


それでも当時の私は
自分が危機一髪免れたことに気がついていなかった。
車から声をかけたおじさんが不審者であるとは思っていなかったので、親にも話していなかった。
こわいね、気をつけないとねなんて親の話に相槌を打つ。
あんなに親切な人もいるのに、けしからんやつもいるもんだ。
不審者に気をつけよう!といういかにもなポスターを見ていても、自分が被害に遭いそうになった、とはつゆも思わず、むしろ小さな子が被害に合わないように気をつけようなどと思っていた。

その割に、親に車に乗った人から声をかけられたという話もしなかった。どうして1人なの?いつも友達と一緒に行くのに。と問い詰められて遅刻がバレてしまうのが嫌だったからだ。

起こりそうもない重大な危険より
確実に親が怒るであろう日常の失敗を気にしていた。

いや、怖すぎる。
小4の私、アホすぎるな。
警戒心ゼロかよ。

本やテレビから手口が教えられると
だんだん

あれ?コレって…私言われたヤツか…?
と気がつくようになった。

親切がぐるりと悪意にひっくりがえった時の
胃液がせり上がるあの感じ。
吐き出したいのに吐けない、あの感じ。
喉がヒリヒリする。
悪意ごと吐き出してしまいたい。
気持ちが悪い。


不審者と呼ぶには丁寧で、普通のおじさんだった。変質者のように気持ちの悪い目でみるとか、ヤクザみたいとかでもない。誰かのお父さんと言われたらそうだろうなとすんなり思えるくらい、普通の人で、本当に困っているように見えた。


後から考えたらそれが一番怖かった。

性的な目で見られた訳でもないし
口調に興奮も緊張も見えなかった。
逆に後ろめたさも焦りも見えない。
「悪いことを今しようとしています」
という怖さが全くなかった。
ごく普通に当たり前のことをしているように見えた。
だから、知らない人の車に乗るのもおかしなことではないかな?と一瞬錯覚したのかもしれない。


当時の私は夢みがちで、いつもと同じ道を歩いていたら、いつのまにか魔法の世界にたどり着いたとか、ある日起きたら羽が生えていたりしないだろうかと考えたりすることが好きだった。 

いつもと同じ道で、突然悪意に引き摺り込まれるなどと思いもせずに
数々の偶然という幸運に守られていた。


後、一番怖いのはここからなんだけど…。


開けっぴろげになんでも話す私でも、
なかなか言いづらい話なので、
普段は口を閉ざしていた。

ただ、ごくたまにこの話をすると
実は私も…と返ってくる率が
死ぬほど高いということに
恐怖を感じた。

車じゃなくても
公園で
帰り道
駅で

いいにくそうに
話していいのかと
こわごわと話し始める。

誰にも言えなかったと涙ぐむ子もいた。
大抵の子は親にも友達にも言えていなかった。
なかったことにしたいと記憶に封じ込めて
生きているのだから大丈夫と
自分に言い聞かせている。

ひとしきり話して泣いた子と、
「まじでピーだよね!「そーゆーヤツ、ピーがピーすればいいのに!」「マジ、ピー!!!!!」
みたいな放送禁止用語をバンバン出して話をして
心の震えを笑い飛ばした。
記憶の中の泣いている女の子が笑顔になるように。
いいすぎだから!下品すぎ!!とかいって笑いあった。



おわり


*普段はクリエイターさんの絵を選ぶのですが、話が不穏すぎて嫌なイメージが絵についたら困るので、ChatGPTに作ってもらいました。

*「知らない人の車に乗った中2の話」の話もあったりします。そちらは怖い話ではありません。
後日書きます。多分。


*不審者はマジ、ピー!!!



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