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最終章 ラストバージン

    「よお、早いな」
    「うん。なんもなかったし」
    「これやるよ」
    「え、いいの?めずらしい」
    「間違って二本買っちまったんだよ。昼に学校の自販で買ったの忘れてた」
    「なるほどね。マウンテンデューあんまりないから見つけると買っちゃうよね」
    「なにわかったようなこと言ってんだ。俺の真似して飲んでるだけだろ」
    「もう好きになっちゃってるよ。結構一人でも飲む」
    「まあうまいわな…んで?なんだよ。急に呼び出して」
    「いや…最近連絡してなかったし、どうしてるかなと思っただけだよ」
    「なんだそれ。別にどうもしてねーよ。久しぶりに学校着て疲れたわ」
    「浜田くんはしゃいでた?」
    「大はしゃぎ。うるっせーんだほんとに。妙にテンション高かったわ」
    「そうだよね…絵消されてたね」
    「…そりゃそーだろ。あのまま残しておくわけない」
    「まあそうだけどさ…思ったより何にもなかったなと思っちゃって」
    「はあ?なんにもないってなんだよ」
    「いやー…あんなに本気で描いてもなんにも変わらないし、大して問題にもならないんだなってさ」
    「…まあな。…描いてんだろ?絵」
    「うん…それなりにだけどね」
    「今日の海はどうよ」
    「まあ普通だよ。前ほど濁ったりしない。ちょっと今日は薄いかな」
    「相変わらずわけわかんねーな。薄いってなんだよ」
    「ちょっと淡いというか、サラッとしてるというか」
    「もういいよ。どうせわかんねーし」
    「…ごめん」
    「謝んなよ。逆に惨めになるわ。…あのさ、俺絵やめるわ」
    「…え?」
    「おもろ顔。別にいいだろ。他にやること見つけただけだ」
    「…なに?」
    「お勉強だよ。大学建築行きたくなって」
    「建築?美大じゃないの?」
    「行くわけねーだろ。俺色見えねーんだぞ。お前が行けよ」
    「…玲の絵はそれが良さだよ。一緒に美大行こうよ」
    「ばかか。無理だ。でも、建築の方が俺を活かせる。立体のほうが俺に合ってると思っただけだ」
    「え…でも…もっと玲と描きたいよ…」
    「泣くなバカ。お前は一人で描ける。お前ももうわかってんだろ。あの日お前はあんな描き方したんだ」
    「そんなことない!玲がいたからかけたんだ…みんなといたから…」
    「…うぜーな。お前はもう大丈夫だって。俺に方向転換させたんだ。誇れよバカ」
    「…時々見てくれる?僕の絵」
    「時々?ふざけんな。全部見せろ。ダサかったらその場で破るからな」
    「…絵とか関係なく遊んでくれる?」
    「…ああ。暇だったらな」
    「…うん…海、きれいだね」
    「…んな」
    「…マウンテンデューありがと」
    「…今度奢れよ」
    「…うん」

    潮風が原付に乗っている時くらい強く吹いている。
    寒さはあまり感じない。
    気持ちがいい。
    3回目の夏がすぐそこまできていた。


     
     

    七

     
     
    北海道の街を舞台にした短編シリーズ『同じ場所』を書いています。 それぞれの物語には一曲の音楽が流れ、読んだあとに曲を聴くと物語が完成します。 日常の空気や人々の時間を感じながら、物語と音楽の余韻を楽しんでもらえたら嬉しいです。 週4ほど更新。

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