
【公募結果】第30回絵本大賞
残念ながら落選の結果となりました。
よくみると誤字があり、うん、そりゃそうか。
ストーリー
ちぃちゃんがお母さんと、おばあちゃんの家に持っていく和菓子を買いに行った時のことだった。ガラスケースの中にある不思議な和菓子。まぁるい形のお菓子の上に、白い綿のようなものが乗っているそれに、ちぃちゃんの目は釘付けになった。
「おかぁさん、このお菓子なぁに?」
「菊の着せ綿って書いてあるわね」
「きくのきせわた?」
「それ、重陽の節句のお菓子で、秋になると毎年作っているんですよ」
会話が聞こえたのか、店員さんが教えてくれた。節句。物の節句や端午の節句と同じかな?一体何をするのだろう。ちぃちゃんは菊の着せ綿が気になって仕方なかった。
「おばあちゃんに持っていくお菓子、これにしようか」
「うん!ねぇ、おかあさん。おばぁちゃんなら菊の着せ綿について知っているかな」
「そうね。聞いてみましょうか」
「随分と可愛いお菓子だこと」
「ちぃちゃんが選んだのよ」
「まぁ。早速お茶を淹れましょうね」
おばぁちゃんの家に着いて和菓子を渡すと、おばあちゃんはニコニコと笑って喜んでくれた。温かいお茶を飲みながら、和菓子を食べると、甘くて美味しかった。だけど菊の着せ綿がなんだかはやっぱり分からない。
「おばぁちゃん。菊の着せ綿って知ってる?」
「重用の節句だねぇ。だから今日持ってきてくれたのかい?」
「可愛いなぁって思ったら、お店の人が教えてくれたの。だけどなんだかよく分からなくて」
「あんまり定着しなかった文化だからねぇ」
そう言うとおばぁちゃんは、重陽の節句について教えてくれた。旧暦の九月九日が重陽の節句であること。その前の晩に、菊の花に綿を被せること。そして次の朝、朝露を含んだその綿で身体を拭くことで、長寿や健康を願うとされていること。
「どうして菊のお花でやるの?」
「菊は昔から邪気を払うと信じられていたんだよ」
「昔ってどれくらい?」
「源氏物語が書かれた時代くらいかねぇ」
「それって何時代?」
「今が令和でしょう?その前が平成で、その前が昭和。さらにその前は大正でって、どんどん遡っていって平安という時代になるくらい昔ってことよ」
「そんなに昔から続いていて、すごいねぇ!」
「そうだねぇ」
「ねぇ、おかぁさん。ちぃちゃんも菊の着せ綿やってみたい!」
「あら、いいじゃない」
「じゃあ庭に咲いている菊を持っていくといいよ」
おばぁちゃんが庭に咲いていた菊を、切って持ってきてくれた。白色、黄色、薄ピンク。
綺麗な色とりどりのお花を束にして、帰りのバスに乗った。
家に帰ったちぃちゃんは、早速作業に取り掛かった。菊の花を丁寧に茎から取り、かごの中に入れる。そしてその上に綿を被せれば、まるで菊の花の上に雪が降ったかのような景色になった。
朝露が含まれるように、カゴをベランダの外に置くと、ちょうどおかぁさんがやってきた。
「準備はできた?」
「うん!明日の朝が楽しみ!」
「そうね。さ、夕ご飯を食べましょうか」
そうして夕ご飯を食べた後お風呂に入り、歯を磨き眠る時間。布団に入ってもちぃちゃんは中々眠れずにいた。明日の朝になったら菊の上に被せた綿は、一体どんなふうになっているのだろう。綿からは菊の香りがするのかな?考えるだけでワクワクが止まらなかった。
次の日の朝。いつもなら少し寒くていつまでも布団の中から出られないけど、今朝のちぃちゃんは違った。起きてすぐ布団から出ると、真っ先にベランダへ行きカゴを取りにいく。
「おかぁさん!できたよ!」
「じゃあこの綿で拭いていくわね」
ちぃちゃんの背中に、朝露を含んだ綿が触れる。ひんやりとした感覚で少し寒く感じるけれど、漂う菊の香りが良い香りで寒さはあまり気にならない。
「ちぃちゃんがずっと元気で過ごせますように」
「ちぃちゃんもおかぁさんにやりたい!」
「ありがとう。なら腕にお願いしようかしら」
おかぁさんが腕まくりをしてちぃちゃんに腕を出す。そこを綿で拭きながら、おかぁさんがずっと元気でいられますようにとお願いをした。
おまけ
clodeに絵本にしてもらいました。