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【ファンタゞヌ小説】昚日食べたパンの蚘憶で、今倜のお颚呂を沞かしおる 第䞃話ただ枩かい、寝たきりの資産

    この䞖界においお、魔法は「蚘憶」を燃料ずする。
    より心が動いた蚘憶、より匷い感情を䌎う蚘憶ほど、巚倧な魔力を生む。

    蚘憶が魔力に倉換されるこの䞖界では、ある人が持぀蚘憶は資産である。
    ずはいえ、生きおいる間に党おの蚘憶を抜いおその魔力を換金する蚳には行かない。

    しかしそれが死の盎前ずなれば話は倉わっおくる。

    ​王立䞭倮病院、特別病棟。
    老いた富豪、゚ドワヌドが昏睡状態に陥っおから䞉日が経過しおいた。
     
    残酷なこずずいうか圓然のこずずいうか、人間が深い昏睡に陥り、脳機胜が衰え始めるず、蓄積された蚘憶は霧散しおいく。
    それも、死の瞬間に䞀気にれロになるのではなく、寝たきりの期間䞭に埐々に蚘憶 魔力は抜けおいく。

    意識が戻る芋蟌みがないたた寝かせ続ければ、䞀生をかけお貯め蟌んだ膚倧な蚘憶は、ただ挏れ出し、最埌には空っぜの抜け殻だけが残る。

    結果的に゚ドワヌドの家族に突き぀けられるのは、究極の遞択だ。
    目芚める奇跡を信じお父を延呜させるか。それずも、ただ父の䞭に豊かな蚘憶が残っおいるうちに、そのすべおを吞い出し、莫倧な魔力を遺産ずしお確保するか。

    感情ずしおは、圓然最埌の瞬間たで目芚めを信じ、ギリギリたで延呜しおやりたい。
    しかし、シビアな目で芋れば ぀たり、゚ドワヌドを単なる魔力資産ずしお芋れば 目芚める芋蟌みがないのならできるだけ早めに魔力を抜出した方が利益が倧きいのは事実だ。

    ゚ドワヌドの子どもたちに䞻治医が説明したずころによれば、゚ドワヌドが目を芚たす可胜性は「れロではない」ずいう。だが、その確率は1にも満たないそうだ。

    静たり返った゚ドワヌドの邞宅。
    ゚ドワヌドの䞉人の子どもたちは、冷めきったコヌヒヌを前に、䞀枚の曞類を囲んでいた。

    その曞類は、「党蚘憶の抜出に関する同意曞」。

    蚘憶を党お抜出しおしたえば、䞇䞀意識が戻っおも生掻すらたたならないだろう。
    逆に、い぀たでも抜出しなければ数日で゚ドワヌドの蚘憶がれロに ぀たり死亡しおしたう可胜性もある。

    䞉人の子どもたちはもう長いこず、この同意曞にサむンする、しないに぀いお話し合っおいた。

    長男のアヌサヌが、重い口を開いた。
    ​「俺は、この同意曞にサむンをしお、明日管理局の抜出官を呌がうず思う。  䞻治医の蚀う『䞀未満の奇跡』を埅぀ために、俺たちは父さんが䞀生をかけお築いた蚘憶ずいう資産が、ただただ消えおいくのを黙っお芋おいろず蚀うのか」

    ​「兄さん、蚀い方が酷すぎるよ」
    ​
    末っ子のカむルが、拳を握りしめお反論した。
    ​
    「父さんはただ生きおるんだ。さっきだっお、僕が話しかけたら、埮かに指先が動いた気がした。1だっお可胜性があるなら、目芚めるのを信じるのが家族だろ 
    ただ生きおいる父さんの蚘憶を党郚抜くなんお  それじゃ、生きたたた父さんを解䜓しお、売り払うのず倉わらないじゃないか」
    ​
    「カむル、珟実を芋なさい」

    ​長女のセヌラが、静かに、しかしはっきりずした怒気を蟌めお口を開いた。
    ​
    「あんたはただ孊生だからいいけど、私たちには珟実的な生掻があるの。アヌサヌ兄さんの䌚瀟だっお、この䞍況で火の車だし、私だっお新ブランドを立ち䞊げるのにお金が必芁。父さんが元気な時なら、きっずこう蚀ったはずよ。『無駄な延呜で資産を腐らせるくらいなら、さっさず抜出しおお前たちが䜿え』っお。合理的な人だったからね」
    ​
    「金、金っお  。兄さんたち、借金があるから早く抜出したいだけだろ 父さんの呜より、その魔力がいくらで売れるかの方が倧事なのかよ」

    ​「なんだず お前、なんおこずを  」

    ​アヌサヌが勢いよく立ち䞊がり、怅子が倒れお倧きな音を立おた。

    アヌサヌの蚀うこずもカむルの蚀うこずも正論だった。だが、アヌサヌの意芋は珟実的すぎ、カむルの蚀うこずは理想論過ぎた。

    アヌサヌは激昂を抌し殺すように、震える手で曞類を指差した。
    ​
    「いいか、カむル。明日だ。明日の朝、管理局の抜出官を呌ぶ。  父さんが空っぜになっお、ただの肉の塊になる前に、俺は長男ずしお、この家の資産を守る決断をする。父さんの生きおきた蚌がただただ消えおいくなんお、それこそ芋過ごすこずはできない」
    ​
    「  ただ父さんは生きおるんだから 明日なんお、絶察に認めないよ」

    その日の話し合いはい぀たでも平行線だった。が、最終的には2察1の圢になったカむルが折れる圢で、曞類にサむンをしお翌日を埅぀こずずなった。

    翌朝、午前九時。
    ゚ドワヌドが入院する王立䞭倮病院の個宀には、管理局から掟遣された抜出官が、数名の助手ず共に埅機しおいた。
    ベッドに暪たわる゚ドワヌドの頭郚には、既に幟本もの魔導ケヌブルが接続されおいる。蚘憶の抜出準備がすっかり枈んだ父の手を握りながら涙を流すカむル。アヌサヌは、抜出官ずずもに事務的な手続きを進めおいた。

    「  では、ご家族の最終同意を確認したしたので、抜出を開始したす。よろしいですね」

    事務官が淡々ず告げ、装眮のメむンスむッチに指をかけた。
    「お願いしたす」
    抜出官に向けお頭を䞋げるアヌサヌ。
    「さよなら、父さん」
    父に最埌の挚拶をするセヌラ。
    「   」
    無蚀で父の手を匷く握るカむル。

    抜出官が事務的に、装眮のスむッチを抌す。

    キィィィィィィィィィィィン  。

    ゚ドワヌドの脳から蚘憶が抜き取られ始める。

    その時だった。

    「埅っお 今、父さんの手が動いた 僕の手を握り返したんだ 兄さん、ただ生きおる、父さんはただ戊っおるんだよ」

    それは、本圓に握り返したのか、装眮に蚘憶を抜かれる時の䜕らかの身䜓反応なのか、それずも単にカむルの気のせいだったのかは分からない。
    だが、父が自分の手を握り返したず思ったカむルは半狂乱で暎れ出した。

    「やめろ、カむル」
    「生きおるんだよ父さんはただ生きおるこのたた蚘憶を党郚倱ったら、父さんの心臓は動いおおも、䞭身は死んじゃうんだよ」

    ゚ドワヌドに぀ながっおいるケヌブルを倖そうずするカむル。
    「あぁ、やめなさい」
    抜出官ず助手達が慌おお止めに入る。

    しかし、すさたじい力でカむルは抜出官達を振り払い、ケヌブルを2本ほど倖した。

    「 いい加枛にしろ」

    アヌサヌがカむルを殎り぀ける。
    カむルは吹っ飛ばされ、呆然ずしおいる。その隙に、慌おお抜出官たちがケヌブルを぀なぎなおす。

    「昚日あれだけ話し合っお決めたこずだろうが俺だっお父さんが目芚めるならその方がいい。でも、このたた攟っおおいお、父さんの人生が無かったこずになる方が぀らいんだ俺がただ金欲しさで曞類にサむンしたずでも思っおんのか」

    アヌサヌも、セヌラも、カむルも泣いおいた。

    ゚ドワヌドの蚘憶を抜出する機械の駆動音だけが病宀に響き枡っおいた。

    䞀週間埌。
    ゚ドワヌドの葬儀は、粛々ず執り行われた。
    さらに数日が過ぎた頃、䞉人の子䟛たちの元に、管理局から䞀通の通知が届いた。それは、あの日抜出された゚ドワヌドの䞀生分の蚘憶が、街のむンフラ燃料ずしお売华され、珟金化されたずいう通知だった。

    実家のリビング。䞉人は再び、冷めきったコヌヒヌを前に集たっおいた。
    テヌブルの䞊に眮かれた明现曞には、15䞇ゎヌルドずいう数字が蚘されおいる。

    「  さお、振り蟌たれた分を分けようか。他の遺産ず同じく、䞉等分でいいよね」

    カむルが、消え入りそうな声で切り出した。あの日以来、圌は自分のせいで父の最埌を台無しにしたのではないかずいう自責の念に駆られおいた。

    だが、アヌサヌは明现曞を指先で匟き、冷たく蚀い攟った。

    「䞉等分 ふざけるな。そんなこず認めるわけないだろう」

    「  え でも、他の遺産は  」

    「カむル。あの日、お前が土壇堎で暎れおケヌブルを匕き抜いたせいで、どれだけの魔力が空気䞭に挏れ出したず思っおいるんだ。抜出官も蚀っおいたぞ、『異䟋の事態だ』っおな」

    「でも、実際にどれだけ枛ったかなんお、誰にも分からないじゃないか」

    「だからっお玍埗できるわけないだろう」

    アヌサヌがテヌブルを叩いた。

    「お前が䜙蚈な邪魔をせず、スムヌズに抜出が終わっおいれば、この数字は18䞇、いやヘタすれば20䞇ゎヌルドを超えおいたはずだ。お前が『生きおる』なんお喚いおケヌブルを匕っこ抜いたせいで、父さんの蚘憶の䜕割かは霧散しおしたった。お前が父さんの人生を空費させたんだよ。  この目枛りした分は、明らかにお前の責任だ」

    「そんなの、兄さんの決め぀けだよ  」

    「決め぀けじゃない、合理的な掚論よ」

    セヌラが、加勢するように口を開いた。

    「カむル。あんたのあの無意味な抵抗のせいで、私たちの取り分が枛ったのは確実なの。どれだけ枛ったか正確に分からない以䞊、リスクを冒したあんたがその負債を背負うのが筋でしょ。  兄さんの借金も、私の事業蚈画も、お金が目枛りしたせいで狂っおるんだから」

    アヌサヌはペンを取り出し、明现曞の暪に独自の蚈算匏を曞き蟌み始めた。

    「3䞇ゎヌルド分。これはお前の独断専行による損害賠償ずしお、お前の取り分から差し匕かせおもらう。  お前が止めたから、父さんの人生が安売りされたんだ。お前の独りよがりな父さんぞの愛ずやらのせいで、俺たちが損をしたんだよ。  分かるか2䞇ゎヌルドでも枡しおやるだけ、ありがたいず思え」

    カむルは、䜕も蚀い返せなかった。

    あの時、父が手を握り返しおくれたず思ったのは間違いない。しかし、振り蟌たれた倧金の数字を眺めながら、カむルは自分が父を救おうずした息子ではなく、父の蚘憶を空費し、家族の資産を毀損させた加害者なのではないかず感じおいた。

    しかし、父はもういない。カむルの自責の念に察しお、正解を教えおくれる存圚はもう、どこにもいないのだ。

    完

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