おわりに。
この本を書き始めた頃の私は、
「幸せになりたい。」と、どこか遠くを見つめていました。
もっと心に余裕があったら。
もっと上手に子育てができたら。
もっと笑顔でいられたら。
その先に、幸せが待っているのだと思っていました。
でも、
一つひとつのエピソードを書きながら、
私は少しずつ気づいていきました。
幸せは、未来で見つけるものではありませんでした。
朝、カーテンを開けて見上げた空。
お気に入りのマグカップで飲む一杯のお茶。
「ママ、見て。」と駆け寄ってくる娘の声。
「おかえり。」と迎える夕方。
眠る前に交わす「おやすみ。」のひと言。
どれも特別な出来事ではありません。
忙しい毎日の中では、見過ごしてしまいそうな、小さな時間ばかりです。
それでも、その小さな時間が、私たちの暮らしを静かに支えてくれていました。
子育てをしていると、できなかったことばかりが目につく日があります。
もっと優しくできたかもしれない。
もっと話を聞いてあげられたかもしれない。
もっと笑えたかもしれない。
そんなふうに、自分を責めてしまう夜もあります。
でも、どうか思い出してください。
あなたが今日つくったごはんも。
一緒に歩いた帰り道も。
何気なく笑い合った数秒も。
疲れながら「おやすみ。」と言えた夜も。
そのすべてが、誰かにとっては、かけがえのない一日です。
そして、あなた自身にとっても、大切な人生の一日です。
私は、この本を書き終えて思います。
幸せは、大きな出来事の中だけにあるものではありません。
何でもない今日の中で、
気づかれないまま、
静かに息づいているものなのだと。
もし、この本を閉じたあと、
空を見上げたくなったら。
大切な人へ、少しやさしい声をかけたくなったら。
眠る前に、自分へ「今日もおつかれさま。」と言えたなら。
それだけで、この本を書いて本当によかったと思います。
今日という一日は、二度と戻ってきません。
だからこそ、完璧に過ごせなかった日も、大切に抱きしめてください。
笑えた日も。
泣いてしまった日も。
思うようにいかなかった日も。
そのすべてが、あなたの人生をあたたかく育ててくれています。
何年かあと、今日を振り返ったとき、
きっと、こう思える日が来るでしょう。
「あの日も、幸せだった。」
そんな一日を、これからも、
あなたらしく重ねていけますように。
心を込めて。