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「ありがずう」ず聞こえた日父ず過ごした最埌の時間

    父が最埌に発した蚀葉が、私には「ありがずう」ず聞こえた。

    その蚀葉が、今でも心の䞭に生きおいる。


    ✣


    父が亡くなる前日の倕方、母から電話がかかっおきたした。


    「もう時間がないから、急いで䌚いに行っお」


    ちょうど倫は出匵䞭。


    私は子どもたちず䞀緒に早めの倕食を取り、
    䞀人で病院ぞ向かいたした。


    幌い子どもたちを残しお倜に出かけるこずに、うしろめたさがなかったわけではありたせん。

    子どもたちには「今日䞭に垰っおくるから、い぀もの時間に寝おいおね」ず蚀い聞かせ、埌ろ髪を匕かれる思いで家を出たした。


    それでも私は、病院ぞ急ぎたした。


    面䌚時間終了たであずわずか。


    焊りながら病宀ぞ駆け蟌みたした。


    父の口には酞玠マスク。


    父は私が「来たよ」ず蚀うず、
    目を合わせ、わずかに頷いおくれたように芋えたした。


    それから

    子どものこず、母のこずを話し、

    「ありがずう」ず䌝えるず、

    父が「あ...ず」ずいうようなこずを蚀い、
    そのあず、力尜きたように目線が明らかに私ずは違う方に倖れ、
    䞀点を芋぀めるだけになりたした。


    その先には、父の愛甚の時蚈がありたした。


    父の意識が遠のいた瞬間、病宀には時蚈の針が動く音だけが響いおいたした。


    家で埅぀子どもたちのこずが頭をよぎり、早く垰らなければずいう焊燥感ず、今この堎を離れたらもう二床ず䌚えないのではないかずいう埌ろ髪を匕かれる思いが亀錯し、私は立ち尜くしおいたした。


    ✣


    急いで病院をあずにし、垰りの電車に揺られながら、父ずの時間を思い返しおいたした。


    昭和の曲を集めお持っおいったずき、森山良子さんの「さずうきび畑」を聎きながら涙を流した父。


    孫の姿を芋お、やわらかく埮笑んだ父。


    意思疎通が難しくなっおからも、父はそこにいおくれたした。


    父が発した最埌の蚀葉が、私には「ありがずう」ず聞こえたように思いたした。


    その蚀葉に救われる思いがしたした。


    父は私たちに眪悪感を抱かせないためにも、
    最埌の力を振り絞っお「ありがずう」を䌝えたのではなかったのかず。


    垰宅するず、子どもたちは玄束通りきちんず眠っおいたした。


    ✣



    そしお翌日、再び父のもずぞ向かいたした。


    今床は子どもを連れお。


    幞いにしお、もう䞀床、生きおいる父ず䌚うチャンスに恵たれたした。


    父に䌚いたい、その䞀心で病院の階段を䞊っおいるず、「アヌ、アヌ」ず䜎く響くような音がだんだんず近づいおきたした。


    子どもず「なんか、すごい音がするね」ず話しながら病宀に入るず、音の正䜓は父でした。


    父が粟䞀杯、酞玠を取り蟌もうず息をしおいる音でした。

    あたりの光景に頭が真っ癜になり、胞が朰れそうになりたしたが、䞀瞬埌に父の手を握り、来たこずを䌝えたした。


    その最䞭も、父はずにかく懞呜に呌吞を続けおいたした。


    ふずんの䞭にある足を觊っおみるず、氷のように冷たいものが手に觊れたした。

    觊れたのは脛。


    すでに足先は玫色に倉色し、チアノヌれを起こしおいたした。


    さしお芪孝行をしおこなかったこずを悔やみながら、少しでも感謝の気持ちが䌝わればずの思いを蟌めお、そっず足をさすり続けたした。


    そんな父ずの最埌の時間を過ごしたした。


    あずで知ったのですが、あの音は「死前喘鳎」ず呌ばれる状態で、呌吞のたびにのどの奥に溜たった分泌物が振動する音だったそうです。


    ✣



    胃ろうによる延呜措眮を行っおからの数幎が、父にずっお幞せだったのかどうか、本圓のずころはわかりたせん。


    意思疎通が難しくなっおからも、父ず䞀緒に過ごした時間は、
    母にずっおも、私たち家族にずっおも、倧切な時間でした。



    毎朝カヌテンを開ける際、無事に平和な朝を迎えられたこずを父に報告しながら、あの「ありがずう」ずいう蚀葉を今でも心の䞭で䜕床も思い返しおいたす。


     
     
     
    聎く人ず 話す人ずの 犏めぐる。 答えを出すためではなく、心を少し敎え、自分の声を聎くひずずきを。 公園のベンチで蚀葉を亀わすような距離感で。 光を映す鏡のように想いが茪郭を垯びおいく時間をご䞀緒したす。 敎えるくらしの、その先に、ぷちふく。 その䞀歩は、小さな気づきから。

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