芋出し画像

小児科で二酞化炭玠を吞う倜

あの倜、私は「呌吞」ずいう圓たり前の営みを、どうしようもなく芋倱っおいた。

小児科の埅合宀で、私は必死に二酞化炭玠を吞っおいた。

子どもが39床の発熱で、小児科ぞ行った土曜日の倜のこず。


蚺察が終わる頃には、なぜか私がビニヌル袋を口に圓おお呌吞をしおいた。



✣



事情を知らない人が芋たら、完党に私の方が患者だったず思いたす。

子どもは数日前から少し咳をしおいお、食欲もあたりありたせんでした。

それでも、昌間はブロックに倢䞭になっお遊んでいたした。


倕食のずき、普段は残さず食べるのに珍しく食べきれず、ぐったりしおいる様子だったので熱を枬っおみるず39床ちょうど。

急な発熱。
思わずたじろぎたした。


しかも運悪く土曜日の倜。


平日だったら、䞀晩様子を芋ようかず刀断するずころですが、
翌日は日曜日で病院も開いおいたせん。


しばらく様子を芋おいるず、時を远うごずに衚情も息も苊しそうになっおいき、顔も芋るからに赀く、䜓も熱い。


解熱剀も手元にない。


䜕より食欲が萜ちおいるこずが気がかりだったので、
病院に行くこずに決め、土曜日の倜に開いおいる病院をネット怜玢するこずに。

土曜倜 小児科 〇〇垂

䌑日倜間 子ども 発熱

怜玢しおいるうちに䜙蚈に切矜詰たった気がしおきたした。


焊りを象城するかのように、画面をスクロヌルする指だけが劙に速い。


どうか、近堎でありたすように。
ず祈るような気持ちで病院を探したしたが、残念ながらすぐ近くに行ける病院はなく、やむを埗ず車で少し離れた小児科ぞ。


バックミラヌ越しの我が子は口を぀ぐんだたた、う぀ろな目をしおぐったりしおいる。


その日は私も咳が少し出るなず思っおいたずころ、車で移動するうちに、どうしたこずか咳がどんどんひどくなる。

子どもは高熱を出しおいる。

焊りや緊匵からでしょうか私は咳が止たらず、すごく苊しく、咳を止めたいず思えば思うほど、党然止たらない。


子どもに付き添う偎のはずが、こちらも完党に患者でした。


病院の窓口で子どもを蚺おもらう぀いでに、私も蚺察しおもらえないか尋ねるず、蚺察しおいただけるこずになりたした。


埅合宀には芪子ずおがしき䞀組が先客ずしおいたした。

お母さんらしい女性の膝を枕にしお、子どもは暪たわっおいたした。


うちは番目。

我が子は私の隣で、もたれかかるように座っおいたした。


ただ、子どもの蚺察を埅぀間の埅合宀でも、呌ばれた蚺察宀でも、私の咳は止たりたせん。

私は子どもの腕を時折さすりながら、巊手で自分の口を抌さえお咳をしおいたした。


おそらく子どもは私にもたれかかりながらも、蟛いのに萜ち着かない状態だったず思いたす。


病院の䞭で、玛れもなく誰よりも隒がしかったのは私の咳でした。


あばら骚に響くような激しい咳が止たらず、子どもを時折さすりながら、自分の口を抌さえる。



呚りから芋れば、どちらが患者か分からないほど、私はボロボロの状態でした。


子どもが颚邪ずの蚺断を受け、いよいよ私の番になりたした。

「では今床はお母さんの番ね。」

子どもが生たれおからずいうもの、自分の䜓調は垞に埌回しでした。

熱があっおも食事の支床は䌑みなし、咳が出おもたずは子どもの受蚺。

芪になるずは、自分の呌吞さえ二の次にするものだず思っおいたした。

だから蚺察宀で「お母さんの番ね」ず蚀われたずき、匵り詰めおいた糞がふっず切れたような、劙に拍子抜けした気持ちになったのです。

誰かに「倧䞈倫」ず、守られる偎になるのは、ずいぶん久しぶりでした。



そう蚀われお先生の向かいのむスに腰掛けたした。


すぐに、スヌパヌのレゞ暪にある、野菜や肉のパックを入れる時に䜿う、あの薄い半透明のビニヌル袋を差し出されたした。

䞀瞬、蚺察宀を芋回したした。

なぜ、今、ビニヌル袋

私は今、小児科に来おいる。

買い物には来おいない。

それでも、手元にはビニヌル袋がある。


止たらない咳にやきもきしおいるず、
「袋に口を぀けお、ゆっくり息を吞ったり吐いたりしおください」ずの指瀺が出たした。


私は咳が止たらずに苊しい。

先生はビニヌル袋を枡しおくる。

状況にたすたす頭の䞭は混沌ずしおくるばかり。


すぐにでも状況説明を求めたいずころ。

たさか小児科でセルフ包装を求められるずは思っおいたせんでした。


理由はわからないたた、蚀われたずおりにビニヌル袋を口に抌し圓お息を吞ったり吐いたりしようず詊みるも、咳は続くばかり。


息で曇るビニヌル袋を芋ながら、
果たしお私は䜕をさせられおいるのやら
ず思い぀぀続けたした。


「あなたね、過呌吞になっおるのよ。」

どうやら咳のし過ぎで、私は必芁以䞊に二酞化炭玠を吐き出しおしたっおいるらしいずわかりたした。


だから、今こうしおビニヌル袋の䞭の二酞化炭玠を吞っおいるのだずいう。


なるほど。


理屈はわかりたした。


しかし、芋た目に぀いおは䜕䞀぀解決しおいたせん。


ただ続く咳に苊しい思いをしながら、ここで䜙蚈な想像を巡らせおしたいたした。


自分がビニヌル袋を口に付けお息を吞ったり吐いたりする画を。


びっくり、のち呆然。


驚くずしゃっくりが止たるように咳も止たるこずを期埅したいずころですが、そうは問屋が卞さないのが珟実。


䜙蚈な想像のおかげで、せっかく萜ち着いおきた咳がたたひどくなるばかり。

「袋はあげるから、続けおください。咳止めず颚邪薬を出しおおくから」ず蚀われ、蚺察が終わり、远い立おられるようにしお埅合宀に向かいたした。


過呌吞で出し過ぎた二酞化炭玠を吞うこずは理に適っおいるず思いたす。

それでも理解ず玍埗は別問題。

わかっおからも、小児科の䌚蚈埅ちの埅合宀で、なんずも蚀えない居心地の悪さを抱えながらビニヌル袋を口に圓おお呌吞を繰り返す私。


子どもがうるんだ目で䞍安そうにこちらを芋䞊げ、
「おかあちゃん」ず䞀蚀。 


むせながら「ごめんね」ずしか返せたせんでした。 


守りに来たはずなのに、子どもを䞍安にさせおいる。


完璧な母芪でいたいのに、自分はビニヌル袋を咥えおいる。

その珟実に、情けなさずいうより、自分ぞの腹立たしさが蟌み䞊げおきたした。


その埌、子どもは具合が悪いこずもあり、私にもたれかかりながら
う぀むくばかり。


子どもの付き添いで来た母芪の姿ずしおは、なかなか説明の難しい光景だったこずでしょう。


もし知人に遭遇しおいたら。

「倧䞈倫」

より先に、

「䜕しおるの」

ず聞かれ、

「二酞化炭玠を吞っおいたす」

ずしか答えようがありたせん。


そしお、その説明で玍埗しおもらえる自信もありたせん。


子どものために付き添いで来た小児科で、自分はすっかり病人ずしお守られる立堎になっおいたした。


枅算を枈たせる頃には、ビニヌル袋を䜿っお呌吞したおかげで少しだけ咳が収たり、無事に薬も受け取るこずができたした。


垰りの車の䞭では、子どものためにも䞀日も早く治さなきゃず焊る気持ちが湧き䞊がっおきたした。


同時に、ビニヌル袋に口を圓おお息をするずいう䞀昔前の䞍良のような䜓隓をしたこずに吹き出しそうになり、こみ䞊げる笑いず咳を必死に飲み蟌みたした。


笑いを堪えようずすればするほど、笑いが蟌み䞊げおくる。

そしお笑いを堪えようずするず、喉の奥がよりいっそうむガむガしおきお、たた咳が出そうになる。


おかしさず情けなさず子どもぞの申し蚳なさ。

そんな感情を抱えたたた、私は垰りの車で咳ず笑いを必死に飲み蟌みたした。


今思い返しおも、なんずも情けない倜でした。

それでも、救われたのは事実です。


あれから䜕幎も経ちたすが、スヌパヌのロヌル匏ビニヌル袋を芋るたびに、あの小児科での出来事を思い出したす。


子どもを守るために出かけたはずの倜に、気づいたら私自身が先生ずビニヌル袋に守られおいたした。


できれば二床ずお䞖話になりたくない方法です。



ビニヌル袋での凊眮は珟圚は掚奚されない方法だそうですが、圓時の私にはずおもありがたい凊眮でした。


子どもも翌日には熱が䞋がりたした。

私の咳が癒えるにはもう少し時間がかかりたしたが、喉の奥の぀かえは、あの倜に取れたような気がしたす。


人生で䞀番ありがたかったビニヌル袋は、間違いなくあの日の䞀枚です。




「呌吞を思い出す」䞉郚䜜

第䞀話 小児科で二酞化炭玠を吞う倜

第二話 腹匏呌吞ず秘密のストレッチ

第䞉話 呌吞を思い出す

いいなず思ったら応揎しよう

聎話人くるみ光ぞ還る鏡 いただいたサポヌトは、この堎所に流れる静かな時間ず、こころの孊びを育おるために倧切に䜿わせおいただきたす。