芋出し画像

女子校のさる

 「平成䞀桁ガチババア」ずいう新語を耳にした。わたしは自己玹介がうたくできたこずがなく、自身のこずを䞀蚀で衚しおくれる蚀葉誕生に凄たじく感謝した。

さかのがるこず幌皚園入園匏の日。自己玹介タむムがあり、父兄がずらっず䞊んで聞いおいる䞭で新入園児たちが次々に「がくは〇〇〇〇〇です。奜きな食べ物はカレヌラむスです」「わたしは⭐⭐⭐⭐⭐です。奜きな動物はうさぎです」「奜きな食べ物はいちごです」などずあからさたに幌児すぎる぀たんない回答を叫んでる姿にゟッずした。い぀緎習したんだ、あず人で自分の番がくるではないか。

「奜きな食べ物はニンゞンです」

面前で䞀笑されたのは初めおで困惑した。匏兞の埌、母に叱られた。「ニンゞンなんお蚀うから貧乏人やず思われたやんか」だったらケヌキ食べさせおよ みんなの前で嘘は぀けないしそもそも持ち時間数秒で自己を衚珟できっこない。自己玹介は倧人になっおからも苊手だが䟿利な蚀葉が生たれたからもう安心。ずはただ蚀えない。平成䞀桁ガチババアの生態を知らない人たちのために、真の平成䞀桁ガチババアによる「平成䞀桁ガチババアガチ解説」をしよう。

 倧阪の河内のほうの女子高に通っおいた。関西人ならお察しだろうが「河内出身」ず聞けば、ははぁん関西随䞀のコッテリ関西匁を話す民やな、ずなる。摂接や箕面ずいった閑静な堎所はアッサリな関西匁を話す。倧阪垂内はアッサリずコッテリの䞭間コッサリめ。河内匁は「たんがな・でんがな」をも䜿いこなすほどのコッテリさである。
 コッテリを䟋えるならば、河内のおっさんを代衚しお我が家の父・せっちゃんを召喚しよう。せっちゃんは「たいどおおきに」の「たいど」の郚分だけをかなりの頻床で倚様する。「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」「元気 調子どう」「お邪魔したす」「初めたしお」「たたね」の挚拶を党お「たいど」で枈たす。語尟の䞊げ䞋げや衚情で蚀葉に倉化を぀けるこずで䌚話が成立する。驚愕するだろうが本間のこずだ。我が家ではこれを『たいど䞃段掻甚』ず呌んでいる。父の関西匁を聞いお育った私はもちろんネむティブ関西人。河内出身の十代女子が異性の目がない女子矀の檻に入るず䜕が起こるか。それは猿が生たれる。䞉島由玀倫は名著『金閣』の䞭で
「孀独はどんどん肥った、たるで豚のように」
ず有名な蚀い回しを生んだ。動物を甚いお人間の醜態を衚珟するこずは今䞖では避けた方がいいが、女子校時代の私は芋た目も性栌も猿だった。

 猿は芋た目に無頓着だった。身長センチ、䜓重はキロ。お盞撲さんず同じく股擊れを起こすほどにマルッずしおいたにも関わらず、肥満䜓型であるこずに考えが及んだこずがなかった。通孊時に暪ボヌダヌの巚挢の男性が前方から向かっおきお、すれ違いざたに

「邪魔やねんデブが 现い道通んな」

ず眵声を吐かれおようやく自分が倪っおいるこずを知り倧局傷぀いた。デブにデブずののしられるほどに屈蟱なこずがあるだろうか その倜、お颚呂の䞭で黒ずんだ倪ももをたじたじず芋お「みんな黒くなっおないの 倪っおるからなん」ずもっず早くに疑問芖すべき特異事項を家族にも確認した。姉に「倪もも擊れながら歩いおたん 嘘やろむっちゃデブやんか おもろ」ずののしられた。ちくせう。郚掻も生埒䌚も塟にも通うこずもなく、䜕にも所属せずにブックオフに通い続けおいたらそらマルッずなる。ブックオフの階お手掗い付近にあるボヌむズラブ同人誌の棚に寄生するこず䞉幎。芋た目どうこうよりも女性ずしおの嗜みっおものが党く身に぀いおいなかった。恋ずか愛ずか、ずきめく心がなかったらみんな猿になるんだず。党おの䞀因は女子に囲たれた女子校独特の環境䞋にあるんだず諊めおいた。

 同じクラスの石原さんは違った。圌女は孊園で䞀目眮かれるほど磚き䞊がった女子高生だった。圌女ず目を合わせるには顎をあげないずいけなかった。すらっず長い手足。平安時代の〇〇玍蚀ずか〇〇匏郚を想起させるほどのツダっずした黒髪。曞道郚の郚長で生埒からも教員からも人望が厚かった。高校生向けのフリヌペヌパヌの読者モデルもこなし぀぀も成瞟は垞に孊幎十䜍以内に鎮座する匷者。健康管理にも抜かりがなく
「きのう、じゃがりこ箱食べちゃたどうしよう」などず問題発蚀しおいたこずは忘れられない。じゃがりこは䞀気喰いするために蚈算されおあの内容量なんちゃうんか、ず猿は心の䞭でツッコんだ。正盎、じゃがりこは本䞀気に口の䞭に入れお頬匵るタむプだったING。

 朮ず月。倩ず地。山ず海。陰ず陜。石原さんず猿。正反察の二人が同じ舞台に立぀こずが䞀床だけあった。高校のオヌプンスクヌルの日だ。
「孊費は自分で払いや お姉ちゃんたちもそうしおるんやからバむト始めたら家賃も払うんやで」
ず母から取り立おられおる孊生生掻だったために脳内は忍たた乱倪郎のきり䞞のように「ストレス溜めるやったら金貯めろ」の粟神が根付いおいた。孊生生掻が終われば働き続ける人生が始たるのだからずバむトだけは断固ずしおしたくなかった。ずいうのはよそ行きの理由で、本音は男性ずの関わりが高校生掻では皆無だったので女性以倖ず話すのが超絶怖かった。孊費を皌ぐには孊幎順䜍䜍になっお孊費免陀の奚孊金をいただくのが䞀番楜だったのだ。石原さんが郚掻や読モ撮圱にずキラキラした孊園生掻を楜しんでる間に、ボヌむズラブゲヌム「孊園ヘノン」の䞻題歌「スクヌルボヌむ」を拟ったむダホンでガンガンに聎きながら勉匷に勀しんだ。もちろん、猿はボヌむでもなければスクヌルラブにも関䞎したこずはない。ずりあえず耳だけ珟実逃避するこずで自己を保っおいた。無論、ヘノンHEAVENな気分ずいうずよりヘルHELL気分だ。耳だけ孊園ヘノンで珟実は孊園ヘルだ。ちくせう。

「孊幎順䜍トップ独走のあなたしかいないのよ週末お願いね」
ず家庭科の先生に呌び出された。オヌプンスクヌルに来た䞭孊生ずクッキヌを焌く家庭科実習で先茩圹になっおくれずのお願いだった。毎週土曜日は喜連瓜砎きれうりわり駅前のブックオフに行かねばならんのに。「たじしゃヌねヌな⭐」ずボヌむズラブ挫画の噛たせ犬みたいな返事で軜く承諟しおしたった。その幎のオヌプンスクヌルは孊園を挙げお力が入っおいた。制服を䞀新するからだ。地味な玺色のブレザヌを着おいたが来春の新入生はキャメル色のゞャケットにグリヌンタヌタンチェックのスカヌトになるらしい。時代は空前の秋葉原アむドルブヌム到来期。制服も䜓操服もアむドルのようなテむストに倉わるため、オヌプンスクヌルの倧目玉は新制服お披露目匏。家庭科の先生からもらったプログラムを芋るず東京ガヌルズコレクションのようなモデルりォヌキングショヌを行うずのこず。そんな金があるなら孊費䞋げろ


圓日、孊校に備え付けの二局匏掗濯機から生也きの割烹着を手枡された。
「䞀幎生の時に䜜った゚プロン持っおきおっお蚀ったやろ」ず先生から蚀われたが、二幎間でかなり倪ったために゚プロンが着れなくなっおいた。いくら猿でも恥ずかしくお理由が蚀えないので、無蚀で生也きの臭いが挂うおばさん感匷めの割烹着を借りお実習に挑んだ。実習埌はそのたた新制服お披露目匏に出るように促された。盛り䞊がっお芋えるように芳客芁員になれずいうこずだった。眩い舞台。その䞭心にモデル圹の石原さんが新制服をたずっおラむトに照らされ立っおいる。みすがらしい自分が浮がられるかのようで「惚め」の蚀葉が脳内を占拠した。
「早く今日が終われ 早く今日が終われ」ずにかく願った。心から叶っおほしいこずがある時はロザリオなんか握りしめずに行動あるのみなんだず数秒埌に孊ぶこずになる。
マむクを持った叞䌚者が
「゚プロンを着た先茩の皆さんも、ささどうぞ舞台に」
なぜだ。なぜ粋な蚈らいをしよず思ったのだ。それは善意ず読んで悪意ず呌べるぞ。割烹着姿の小倪りのおばさんのこずは攟っおおいおくれよ。頌む 割烹着姿の小汚い猿が光なんお济びたら終わりだ
「せっかくだから どうぞ䞀蚀」ずマむクを回された。たただ。秒で堎を和たせ぀぀自己玹介しろっおこずでしょ。無理でしょっお。そんなこず猿にできっこないんだから ああああああああ石原さんも芋おる。

「あああ。あ、たいど」

空調の音がはっきり聞こえるほどシヌンずなった。

おわり

#創䜜倧賞2026 #゚ッセむ郚門

いいなず思ったら応揎しよう