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あわいろパレット ― 京の怪異ず、君ず描く私の䞖界 ― 第13話 わたしず、芖線ず、癜石さん

    六月の終わり、梅雚はただ居座っおいお、空は薄い灰色をしおいた。

    玗桜はい぀も通り、窓蟺の自分の垭で倖を芋おいた。

    博物通ず閑照寺かんしょうじで祓ったん、誰やったんやろ

    昚日は怪異隒ぎで人もおったし、譊察もおったのに、どうやっお誰にも気づかれんず入ったんやろ

    怪異だけ祓っおどこかぞ行き、去るずきでさえ、玗桜が気づかないほど気配がなかった。

      なんでこそこそしおるんやろ

    悪いこずしおぞんねやったら、ひず蚀くらい声かけおくれおもええのに

    恥ずかしがり屋なんか

    お姉ちゃんが蚀うように誰かに気づかれたら面倒やから避けたんか、それずも、そもそも名乗れぞん理由があったんか  

    机の端に眮いた指先を握った。

    䞭玚の䞋は、わたしも祓ったこずあるけど  あんな短時間では無理や

    ほんた、手緎れやな

    だれや、ほんたに

    握った指先を開いお、考えをいったん切り䞊げた。

      んヌ、考えおおもしゃあないか。垰りに閑照寺に寄っお調べおみよ

    そう考えおいるず、遠くの方からクラスメむトの声が流れおきた。
    玗桜の呚りは盞倉わらず薄い膜みたいに静かで、声だけが颚に乗っお届く。

    「昚日の譊報、びっくりしたなぁ」

    「ほんたそれなっ」

    教宀の反察偎で、女子生埒二人が机を挟んで話しおいた。

    「うち、閑照寺の近くにおっおん。あの蟺、芳光客倚いやん 逃げる人で、わぁヌっおなっおお、めっちゃ焊ったわ」

    「マゞかっ。んで、怪異芋たん」

    「芋おぞん、芋おぞん。境内におったらしいし。あ、でも、倉な子は芋た」

    「倉な子」

    「寺に入っおいく子がおっおん」

    えっ!?

    玗桜の目が倧きく開いた。

    寺に入っおいく子っお、昚日の人ちゃうん!?

    もっず詳しく聞きたい。
    急に䌚話ぞ入ったら迷惑かもしれない。
    盗み聞きしおいたず思われお、嫌われたらどうしよう。

      聞く でも  どうしよ

    昚日の調査で確認しおるっお蚀えば、倉には思われぞんよな

    玗桜は意を決しお垭を立ち、二人のもずぞ向かった。

    「あ、あ、あの  」

    声をかけるず、二人がそろっお振り向く。

    「あ、由良さん。どうしたん」

    生埒の䞀人が気さくに返しおくれた。
    それだけで緊匵が増し、玗桜の声が小さくなった。

    「そ、その、ぞ、倉な子っお  ど、どんな子やった き、昚日の調査で、確認したくお  」

    「倉な子 ああ、昚日のね」

    質問された女子生埒は、蚘憶を探る顔をした。

    「どんな子っお蚀われおも、はっきり芋えたわけちゃうねん」

    「なんやそれ」

    隣の女子生埒が笑う。

    「寺の入り口に坂あるやん。あの坂の暪の竹林から入っおいくずころを、ちらっず芋えただけやねん。竹で芋えにくかったし。でも、この孊校の女の子やったで」

    「なんで分かるん」

    「スカヌトが同じやったもん」

    「スカヌトが  同じ」

    やっぱり、二日前ず同じ人や

    「怪異おるのに、よく入るよなぁ。怖いもの芋たさやったんかな」

    「ほんたそれな」

    二人は顔を芋合わせお笑ったあず、玗桜ぞ芖線を戻した。

    「ごめんな、由良さん。こんな薄い情報しかなくお」

    「い、いえ。あ、ありがずう」

    玗桜が瀌を告げるず、その子の衚情が柔らかくなった。

    「由良さんも、ありがず」

    「え」

    思いがけない蚀葉に、玗桜は瞬きを繰り返した。

    「怪異、祓っおくれおるやん。い぀もありがずう」

    「え、あ  い、いえいえ」

    同幎代の子から、正面きっお感謝されたこずなどなかった。
    うれしい。
    でも、恥ずかしい。
    頬が熱くなり、この堎に立っおいるのが急に萜ち着かなくなる。

    「あ、で、では  」

    「うん、たたね」

    二人がひらひらず手を振る。
    玗桜もぎこちなく振り返し、自分の垭ぞ戻った。
    怅子に座るなり、ゆるみきった口元を芋られたいず窓の倖ぞ顔を向ける。

    えぞぞ  怪異を祓うんは圓たり前やず思っおたけど、ありがずうっお蚀っおもらえるん、うれしいな

    窓ガラスに映った自分は、隠しきれない笑顔だった。
    垭に着いお数秒埌。
    玗桜は重倧なこずに気づいた。

    あぁヌっ 昚日、祓ったんわたしちゃうっお蚀えぞんかった

    舞い䞊がっお、そこたで気ぃ回らんかった  

    玗桜は机に䞡手を぀き、心の䞭で二人ぞ謝った。

    ご、ごめんなさい  

    そのずき――

    廊䞋から鋭い芖線が突き刺さり、ぞわりず背䞭の産毛が逆立った。

    玗桜はすぐに廊䞋の方ぞ顔を向けた。

      誰もいない。

    すれ違う生埒も、先生も、たたたた芖線を向けた気配もない。

    芋慣れた廊䞋。
    ありふれた昌䞋がり。

    えっ  なんなん、今の

      気のせい いや、あの鋭い芖線、気のせいちゃう

    怪異   怪異の気配ちゃう

    じゃあ、なに

    理由のわからない芖線は、それだけで十分䞍気味だった。

    玗桜は気になり、芖線のあった廊䞋ぞ向かった。
    廊䞋に出お呚囲を芋おも、䞍審な動きをする生埒はいない。
    おかしな気配もない。

    玗桜は自分の垭に戻ろうずしたずき、窓蟺に䜇む䞀人の人物に目が留たった。

    ん、あの子は  

    癜石さんや

    癜石さんは、窓の倖を眺めおいた。
    昌の明るさの䞭に、ひずりだけ静かな圱を萜ずしおいるみたいだった。

    癜石さん、なにしおるんやろ。ただ倖芋おるだけなんかな。ん、ひずりなんや。い぀もだれかず䞀緒におるのに。た、ひずりのずきもあるか

    玗桜は自分の垭ぞ戻ろうず振り向いた。

    「あっ由良さん」

    背䞭から、癜石さんの声が届いた。
    たさか呌び止められるずは思っおいなくお、玗桜は肩をびくりず揺らす。
    䞍意を突かれお、返事の出だしが裏返った。

    「  は、はい」

    慌おお癜石さんの方ぞ向きなおした。

    「昚日持っおた匓が由良さんのい぀も䜿っおる匓」

      匓

    匓のこずを聞かれるずは思っおいなかった。
    癜石さんの声は軜い。
    ただ気になったから聞いおみた、ずいうくらいの調子だった。

    なんで、匓のこず聞くんやろ

    ただの興味かもしれない。
    深い意味なんお、ないのかもしれない。
    玗桜は返事をする前に、癜石さんの衚情をうかがった。
    声も、衚情も、倉なずころはない。

      普通、やな

    「え、あ、うん」

    癜石さんの顔が明るくなった。

    「あんな長い匓持っお、動きながら狙い定めお。由良さん、すごいなぁ。匓っお重いの」

    「い、いち  䞀キロも、ないよ」

    「そなんやぁ」

    癜石さんは興味深そうに、玗桜の䞡手ぞ芖線を向けた。

    「そうそう。二日前、由良さんがこけそうになったずき、ヒダッずしたよ」

    こけそう 氷瞛、撃ったずきか

    「あ、あれは、わ、わざず、なんよ」

    「えっ、そうやったんや。さすが由良さん」

    たっすぐ耒められ、玗桜は返す蚀葉を芋倱った。

    「あ、え、その  いえいえ」

    なんで知っおるんやろ。あんずき、五条の鎚川には近づけぞんかったはずやのに  

    「ご、五条に、いたの」

    癜石さんの笑顔が、わずかに止たった。

    「え、えっず、うちのベランダから芋えおん」

    「そ、そやったんや」

    癜石さんが次の問いを重ねた。

    「匓っお、あの䞀本だけ」

    「そ、そう。あ、あれだけ」

    「前からあの匓なん」

    「い、いえ。き、去幎、真矢に、み、認められおから」

    「真矢」

    「あ、あ、い、䞀人前の、蚌」

    「䞀人前の祓い人や。すごっ。由良さん、ほんたにすごい。かっこいいな」

    「え、え、え、あ、あ、ありがずう」

    玗桜の顔に熱が集たった。
    ほめられすぎおうれしくお、思考停止した。
    癜石さんが玗桜の顔をのぞき蟌み、目の前で手を振った。

    「あれ、由良さん。由良さヌん」

    「あっ、ご、ごめん」

    止たっおいた思考が再起動した。

    あかん、あかん。うれしすぎお、違う䞖界行っおた

    玗桜は倧きく息を吞い、熱くなった頬を䞡手であおいだ。

    「由良さん、おもしろ」

    癜石さんは楜しげに笑っおいる。

    「えぞぞぞ」

    玗桜も照れ隠しに笑ったずころで、ある蚀葉が遅れお戻っおきた。

      っおか、昚日持っおた匓っお蚀っおたよな。っおこずは、昚日

    「き、昚日っお、か、閑照寺に、いたの」

    癜石さんは、特に気にした様子もなく答えた。

    「あ昚日、近くにいたよ」

    さっき話しおた子ず同じでたたたた通りかかったんかな

    「あ、あ、そか」

    玗桜がぎこちなく返事をするず、癜石さんは申し蚳なさそうに笑った。

    「あ、ごめんね、呌び止めおしたっお」

    「い、いえ」

    䌚話はそこで途切れた。
    癜石さんはスマホを取り出し、画面の時蚈に目を萜ずす。

    「もうチャむムが鳎るね。じゃあね」

    癜石さんは手を軜く振っお教宀に入っおいった。

    「うん」

    玗桜も自分の垭に戻った。

    なんで匓のこず聞いおきたんやろ

    癜石さんの衚情にも声にも、倉なずころはなかった。

      たあ、考えすぎか

    玗桜はそう自分に蚀い聞かせた。

    今日、けっこう話せおたんちゃう クラスの子ずあんなに䌚話続いたん初めおやん。成長しおる、わたし

    玗桜の口元に、満足げな笑みが浮かんだ。
    今日の自分には、癟点をあげおもいい気がした。

    チャむムが鳎り、授業は進み、䜕も起こらないたた時間だけが過ぎおいった。

    あれからなんもなかったな  

    昌間のあれ、なんやったんやろ

      た、いっか。なんもなかったし

    ずりあえず、閑照寺や。あっち調べたら、なんかわかるかもしれぞん

    to be continued


    #創䜜倧賞2026 #ファンタゞヌ小説郚門

     
     
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