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TO ZION 改稿版|第02話「踊る少女」

    ※この作品は連載小説です。
    はじめて読む方は、第1話または目次からどうぞ。
    ▶ 第1話「プロローグ」
    ▶ 目次


    【チャプター0 イメージ映像】
    一筋のスポットライトを浴びて少女が舞っている。少女の姿は流れるように、あるいは唐突に変化する。水源の水が時に静かに、時に荒々しく、細くなり、太くなりながら、大河の濁流となるかのように。

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    スポットライトの外側で、細かな光がいくつか瞬いていた。それが照明なのか、涙で滲んだ光なのかは分からない。

    少女の舞をなんと表せばよいか分からない。速い動きではない。それなのに、目が追いつかない。

    足裏は床に吸いついている。なのに、肩先や指先だけが水のように遅れて流れる。体の中心は少しも揺れないまま、髪とロザリオだけが一拍遅れて軌跡を描いた。

    次の瞬間には、鋭く止まる。止まったはずなのに、こちらの呼吸だけが置いていかれる。

    踊りの種類など分からなかった。ロックにも、ヒップホップにも、バレエにも、日本舞踊にも見える。だが、そのどれかではなかった。

    決められた振付ではない。即興で舞っている。直観でわかる。

    その姿はどこまでも美しく、頭からつま先までの軸がぶれることが無い。しなやかに、指先まで完璧なラインを描いている。

    肩までの髪は墨で描いたように黒く、つやを帯びて輝いている。髪と同じ色の薄いドレスの胸元で激しく揺れるロザリオが、スポットライトを浴びて幽かに瞬く。

    そうして少女は長い時間舞っていたが、やがて力尽きてその場に腰をつく。大きく吐き出した息は白かった。

    少女は遠くを見つめている。邪気を感じさせないその顔は幼な子のようだ。彼女の視線が向きを変える。

    こちらと目が合った。

    少女が放つ印象が変わった。不思議なことに、慈母に見つめられたような安らぎに包まれた。

    踊り疲れているのだろう、立ち上がる時に少しよろめきながらも、少女は静かに歩み寄り、手を伸ばしてくる。

    触れ合いたい衝動に駆られた。こちらも手を差し出す。アームカバーから延びた蝋細工のような指先は、ラピスラズリに似た深い瑠璃色に彩られていた。

    その指先に、強いが小さい光が砕ける。青い爪が、ほんの一瞬だけ瞬いた。

    その手を握りたい。手を取れば安らぎに包まれる。衝動は一瞬にして確信に変わった。

    あと少し。

    だが、時間はハイパースローモーションのように遅々として進まない。手と手が触れる刹那、スポットライトが消えた。砕けていた光も同時に消えた。

    そして、全ては闇の中に消えていった。

     
     
    小説、社会批評、働き方、AI時代の人間関係について書きます。 まじめな話を、できるだけ笑える形で扱いたい人です。

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