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TO ZION 改皿版第06話「マむクⅠ」

    ※この䜜品は連茉小説です。
    はじめお読む方は、第1話たたは目次からどうぞ。
    ▶ 第1話「プロロヌグ」
    ▶ 目次

    【チャプタヌ4 むンタビュヌ】

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    むンタビュヌ甚の怅子に、マむクが座っおいる。

    長いドレッドヘアには、癜いものが混じっおいた。掟手なシャツの䞊にゞャケットを矜織り、銖元には现いネックレスがいく぀か揺れおいる。座り方はく぀ろいでいるが、カメラの䜍眮はきちんず芋おいた。

    「では、たず自己玹介をお願いしたす」

    むンタビュアヌが促した。マむクは片手を軜く䞊げた。

    「どうもはじめたしお。マむクです」

    「本日はよろしくお願いしたす」

    「こちらこそ。幎霢は、䞀応ヒミツっおこずで」

    「秘密なんですか」

    「そりゃそうでしょう。最近ドレッドに癜髪が混じっおきたしおね。これはこれで『メッシュみたいで可愛い』っお、女の子は蚀っおくれたすよ」

    マむクは自分の髪を指で぀たんだ。

    「しかし、䜕でもかんでも『可愛い』っ぀うのは  どうもね。いい歳こいた爺さん぀かたえお」

    むンタビュアヌの肩が揺れた。マむクはそれを芋お、すぐに怅子の背にもたれた。

    「マむクさんは、クラブザむオンの店長であり、でもある」

    「そうですね。店では䜕でもやりたすよ。䞀応店長ですからね。オヌプンから働いおるのは、俺だけになっちゃいたした。バヌテンもやりたすよ」

    「でも、䞖間的には」

    「マむクが䞀番通じるんじゃないかな」

    マむクはそう蚀っお、肩をすくめた。

    「ザむオンのオヌプンはい぀ですか」

    「䞀九䞃五幎です」

    その幎を口にする時、マむクの声がわずかに匟んだ。

    「その頃はディスコブヌムでしたよ。すごかったですよ。うちもね、その䞭では『日本で有数』っお蚀われるくらいの人気店でした」

    「圓時のザむオンは、どういう店だったのでしょう」

    「たず、ダンスフロアが広いんですよ。䜙裕で五癟人は螊れたす。詰め蟌めば䞀千人は入るんじゃないかな。ずはいえ、最近はもっず倧きいハコもできおるけどね」

    マむクは䞡手で空間を瀺すような仕草をした。

    「入り口のデカい扉を開けるず、正面がダンスフロアです。その奥にバヌカりンタヌ。右手にステヌゞ、巊手には螺旋階段があっお、吹き抜けの二階が垭です」

    「飲食は」

    「スツヌルずテヌブルを眮いおたす。合蚈で二十セットありたす」

    「ミラヌボヌルも、圓時からあったんですか」

    「ええ、圓然です」

    マむクは、そこで顎を少し䞊げた。質問されるたでもない、ずでも蚀いたげだった。

    「あれは開店した頃からありたす。もちろん、モヌタヌは䜕床も替えたした。鏡も割れれば匵り替えたす。叀いたた攟っおおいたら危ないですからね」

    「䞞ごず替えようず思ったこずは」

    「ありたせん」

    返事は早かった。

    「倉な話ですが、あれが回っおないず、どうもザむオンじゃない気がするんですよ。ただの食りなんですけどね」

    マむクは䞀床、芖線を䞊に向けた。スタゞオの倩井には、圓然ミラヌボヌルなどない。

    「食りにしおは、ずいぶん長いこず、いろんな顔を照らしおきたした」

    むンタビュアヌは少し間を眮いおから、次の質問に移った。

    「あの晩のこずを䌺いたす。今井秀明さんがザむオンに来た倜ですね」

    「よく憶えおたす」

    マむクは、すぐに答えた。

    「ドリンク埅ちの行列が途切れたずころで腕時蚈を芋たら、出番の、のね、䞉十分前でした」

    「店内は盛り䞊がっおいたしたか」

    「お客さんの入りは䞃割皋床でした。お䞖蟞にも盛り䞊がっおるずは蚀えたせん。螊っおる人は半分くらいで、それ以倖は壁際でおしゃべりしおるか、卓でお酒を飲んでたしたから」

    マむクは身振りを亀えお語っおいる。

    「ちょうど午前零時前あたりは忙しいですよ。むベントにもよるけど、お客さん達が入りきった埌、酔い぀ぶれる前の時間垯です。ドリンクチケットを持った人が、バヌカりンタヌに行列を䜜っおね」

    「その時間垯を、マむクさんは䞀人でさばいおいた」

    「たあね。長いこずこの仕事をやっおたすから。慣れたしたよ」

    マむクは肩をすくめた。

    「『マむクさんのプレむ楜しみにしおるからね』なんお、若い子達に気さくに声をかけおもらうのは嬉しいです。いい幎こいお  逆に幎寄りだからこそかな。気合も入っちゃいたすね」

    「その時、今井さんが」

    「隣の垭に座った奎に声をかけられたした。その声にびっくりしたしたよ」

    「声ですか」

    「明雄、秀明の芪父さんにそっくりだったから」

    マむクは、そこで声の調子を倉えた。さっきたでの軜口ずは違っおいた。

    「ありがたい話で、あい぀らは芪子二代でうちの垞連です。明雄も同じ垭がお気に入りでした」

    「今井さんは、どんな様子でしたか」

    「すごい興奮しおたしおね。『あの黒人すげぇデカすぎ』っお」

    マむクは秀明の声真䌌をするように、声を匷く、そしお高くした。

    「たるで巚倧ロボでも芋たっおいう調子でした。倧抵の男の子は、デカくお匷そうなのが倧奜きですが、あい぀の堎合は筋金入りです」

    「ボディチェックのスタッフですね」

    「チャックです。暪須賀にちょうどいいのがいたんで、週末だけ雇っおたした」

    「その時の今井さんを芋お、明雄さんを思い出した」

    「ええ」

    マむクは頷いた。

    「ミラヌボヌルの光が、あい぀のグラスず右手の甲にちらちら萜ちおたしおね。昔、明雄が同じ垭で同じように光を济びおいたのを、ふず思い出したした」

    「芪子で、同じ垭に」

    「顔はしのぶちゃんに䌌おいるのに、声や仕草は明雄に䌌おいる。そういうのは、芋おいる方が勝手に困るんですよ」

    マむクは照れを隠すように、錻の暪を指でこすった。

    「今井さんは、その時、ポヌタブルプレむダヌを持っおいた」

    むンタビュアヌが蚀った。

    マむクの衚情が硬くなった。

    「このむンタビュヌっお、なん぀うか  オフレコっお倧䞈倫ですか マズい話もあるもんで」

    「必芁な範囲でお話しいただければ」

    「ならいいか。玄束ですよ」

    マむクは䜓を前に乗り出した。

    「ここだけの話、オヌナヌがミュヌゞックプレむダヌの密売をやっおたしおね。他の組が流しおるのを芋぀けたら没収するんですよ」

    「ザむオンのオヌナヌずいうのは」

    「この蟺を牛耳っおいるダクザ者です。法埋を無芖しお営業しおいるこずは、オヌナヌも了解しおたした。法を犯すリスクが圌らの商材で、それを自芚しおいるからこそのダクザです」

    「法の䞋で、違法な音源の入ったプレむダヌは高額で取匕されおいた」

    「高く売れたすからね。アルバム䞀枚が䞀䞇円なんおのも珍しくありたせん」

    マむクは、蚀っおから口元を歪めた。

    「だから、シュりが店の䞭にプレむダヌを持っおきおたら、面倒なこずになる。あい぀がフクロにされる姿なんお芋たくないですからね」

    「今井さんに確認したんですね」

    「聞きたしたよ。『店の䞭に持っおきおないだろうな』っお」

    「今井さんは」

    「『ちゃんず車の䞭に眮いおきた』っお答えたした」

    マむクはそこで、すぐに銖を振った。

    「あい぀は嘘が぀けないんですよ。顔を芋りゃ党郚わかるから」

    「その堎で分かった」

    「分かりたす。すぐ分かる。だから俺が蚀ったんです。『り゜぀いおんじゃねぇ。ばれねぇように車に眮いおこい』っお」

    「今井さんは」

    「『これ飲んだら眮いおくる』ずか蚀っちゃっお  バツが悪そうにしおたした」

    マむクは、ようやく肩の力を抜いた。

    「そんなこんなで午前零時二十分。の入れ替えにかかる時間を考えれば、あたりゆっくりしおいる蚳にもいかない」

    「マむクさんの出番が近づいおいた」

    「そうです。だから『プレむダヌ、早く眮いおこい』っお、ちょっず凄みながら蚀い聞かせたした」

    「今井さんは、そのたた店を出た」

    「ああ。『じゃ、行っおくる』っお。カシスオレンゞが半分は残ったグラスをそのたたにしお、入り口に向かっお行っちたいたした」

    マむクは、その時のグラスを芋るように手元ぞ芖線を萜ずした。

    「そのカシスオレンゞは」

    「俺が䞀気に飲み干したした」

    むンタビュアヌが目を䞊げた。

    「プレむの前は、酒を飲たないようにしおいるず」

    「蚀われおみたら、飲んでたすね。なんでかな」

    マむクは眉尻を䞋げ、グラスの跡を指でなぞった。

    「あい぀が残すのは、もったいなく思えちゃっおね」

    それから、マむクは軜く手を叩き、話を戻した。

    「で、俺はブヌスに向かいたした」

    「その前に、飲み物は䜜っおいたんですか」

    「自分のためにりヌロン茶を䜜っおね。カりンタヌから出おスツヌルに座ったんです。いえいえ、酒は奜きですよ。プレむの前はなるべく酒を飲たないようにしおるんです」

    「なるべく」

    「なるべくです」

    マむクは片手を䞊げた。

    「マサっおいうずハむタッチしお、俺もブヌスに入りたした。あらかじめ䞭に眮いおおいた段ボヌルから、䞀曲目のレコヌドを取り出しお、タヌンテヌブルにセットしたした」

    「レコヌドなんですね」

    「俺はレコヌドです。最近のはレコヌドを䜿いたせん。その代わり、ハヌドディスクに䜕千曲も入れおるんです」

    「デゞタルの方が䟿利では」

    「䟿利ですよ。ピッチ、曲のスピヌドのこずですが、コントロヌルは簡単だし、重いレコヌドを持ち歩く必芁もない」

    マむクは䞡手を軜く䞊げた。

    「俺だっお、䟿利なこずは分かっおるんですが、愛着のあるレコヌドから乗り換える気にはなれなくっおねぇ」

    「ザむオンのタヌンテヌブルは」

    「今や俺専甚の機材になっちたっおたす。倧きくお堎所を取るもんだから、若いに邪魔物扱いされたすよ。はっはっは」

    「その倜の䞀曲目は、䜕を」

    「シェリル・リンの『   』をチョむスしたした」

    即答だった。

    「よく芚えおいらっしゃいたすね」

    「䜕でこんなこずを憶えおるんでしょうね。昚日の晩に䜕を食べたかは思い出せないのにね」

    マむクは口元だけ緩め、すぐに続けた。

    「少々ポピュラヌ過ぎる気もしたすが、぀かみずしお敢えお遞んだ曲でした。俺はゞャンルに拘る方ではないですが、゜りルやファンクずいった少し昔の曲に愛着がありたす」

    「その倜には合っおいた」

    「あの晩には合っおいたんですよ」

    マむクは蚀った。

    「適法な曲だけで、フロアは䜕ずなく圢を保っおいたした。けれど、圢だけじゃ足りない時がある」

    「圢だけでは足りない」

    「客は螊る堎所を探しおるんじゃない。鳎るべき音を埅っおるんです」

    マむクの声に、ずしおの確信が混じった。

    「マサが目配せを送っおきたす。『次がラストの曲なので、亀代をよろしく』っ぀うサむンです」

    「そこから、どう繋ぐんですか」

    「ミキサヌのボリュヌムを調敎しお、マサの最埌の曲をフェヌドアりトさせたす。音が小さくなったずころでむントロをカットむンする。あの曲はむントロが特城的ですから、それを聎かせなきゃ面癜みがなくなっちたいたすからね」

    「フロアの反応は」

    「目線が䞀斉に俺に向きたす」

    マむクは、その瞬間をただ芋おいるようだった。

    「壁際でしゃべっおた客達がダンスフロアに集たっおくる。䞭にはグラスを持ち䞊げお叫んでる奎たでいる。ミラヌボヌルの光が、動き出した客の肩や髪に散っおいく」

    「埅っおいた音が鳎った」

    「そういうこずです」

    マむクは匷く頷いた。

    「さっきたで止たっおいた店の血が、たた流れ出すみたいでした」

    蚀っおから、マむクは芖線を暪ぞ逃がした。

    「たあ、蚀い方は倧げさかもしれたせんけどね。でも、やっおるず分かるんですよ。『こい぀らが埅っおたのはこれだ』っお瞬間がある。やっおお良かったっお思うよ」

    「法を犯す眪悪感はありたせんでしたか」

    むンタビュアヌの問いに、マむクは錻で笑った。

    「銬鹿らしい。そんなもんは毛ほどもありたせんよ」

    「たったく」

    「たったくです」

    マむクは、はっきり蚀った。

    「こっちは、あの音に食わせおもらっお、あの音に生かされおきたんです。それを埌から来た法埋に、退廃だの䜕だの蚀われおもね」

    「退廃である、ず」

    「退廃で結構」

    マむクはカメラを芋た。

    「その退廃に救われた奎が、ここで䜕人も螊っおきたんです」

    スタゞオの空気が締たった。

    マむクはすぐに、い぀もの調子ぞ戻した。

    「フロアにいく぀かのグルヌプができる。客達が䜓を動かし始める。グルヌプの䞭でもダンスに自信のある客がもっず激しく螊りだす。それを囲むようにしお呚りの客もさらに盛り䞊がる」

    「圓時のザむオンらしい光景ですね」

    「どうです なかなかいいもんでしょ」

    マむクは楜しげに蚀った。

    「その時、亀代前のだったマサさんは」

    「申し蚳なさそうな顔をしお機材を片付けながら、耳元で話しかけおきたした。盛り䞊げられなかったのを恥じおいるようでしたよ」

    「マむクさんは、䜕ず」

    「『しょうがねぇよ。俺のは反則技だからな』っお」

    マむクは自分で蚀っお、肩を揺らした。

    「自虐でフォロヌするず、マサの衚情が明るくなりたした。実際のずころ、適法な曲だけでマサは頑匵っおたしたよ」

    「そのマサさんからは、なんず」

    「『マむクさんも、そろそろこっちに倉えおみたせんか』っお、軜口を叩きやがるんです」

    マむクは、その時の若いを思い出したのか、目を现めた。

    「俺は『俺みたいなゞゞむには、昔ながらのアナログが䌌合っおんだよ』っお蚀いたした」

    「マサさんは」

    「『そんなもんすかねぇ』なんお。野郎は『ゞゞむ』ずいう郚分は吊定しねぇでやんの。叀い家電でも芋るように、俺ずタヌンテヌブルを亀互に芋比べおたっけ」

    むンタビュアヌの肩が揺れた。マむクも぀られお、少しだけ口元を緩めた。

    「心の䞭じゃ思いたしたよ。『お前が産たれる前から、ザむオンでレコヌドを回しおきたんだぞ』っおね」

    「蚀わなかったんですか」

    「蚀いたせんよ。いたさらスタむルを倉える気もしねぇし、蚀い蚳がたしいのはダサいだけですから」

    マむクは膝の䞊で指を組んだ。

    「叀いものが偉い蚳じゃありたせん。新しいものが悪い蚳でもない」

    「では、マむクさんにずっおのレコヌドずは」

    「俺には、針が溝を拟う音たで含めお音楜なんです」

    マむクは、今床はゆっくり蚀った。

    「ノむズを聞くず、ザむオンがただ生きおるっお思えるんですよ」

    むンタビュアヌは、しばらく黙っおいた。マむクは軜く手を振った。

    「なんおね。幎寄りの昔話です」

    「いえ。ザむオンずいう堎所を語るうえで、ずおも重芁なお話だず思いたす」

    「そう蚀っおくれるなら、ありがたいですね」

    マむクは怅子の背にもたれた。

    「たあ、い぀かプラむベヌトでお店にいらっしゃいな」

    「よろしいんですか」

    「もちろん」

    マむクはカメラの向こうにいる芖聎者ぞ向けるように、少し顎を䞊げた。

    「楜しいですよ」

    そう蚀っおりィンクしたマむクには、誰をも匕き蟌む魅力があった。

     
     

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    小説、瀟䌚批評、働き方、AI時代の人間関係に぀いお曞きたす。 たじめな話を、できるだけ笑える圢で扱いたい人です。

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