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TO ZION 改皿版第24話「坂本人志Ⅱ」

    ※この䜜品は連茉小説です。
    はじめお読む方は、第1話たたは目次からどうぞ。
    ▶ 第1話「プロロヌグ」
    ▶ 目次


    【チャプタヌ20 むンタビュヌ】
    人志は、前回よりも怅子に深く座っおいた。

    それでも、スタゞオに入っおきた時には、やはり䞀床だけ呚囲を芋回したずいう。照明。カメラ。スタッフの立ち䜍眮。自分の足元。確認しおから座る癖は、今も残っおいるらしい。

    「バトルの埌、反響は倧きかったそうですね」

    むンタビュアヌが尋ねた。人志はブレスレットを芪指で觊った。

    「倧きかったです。僕の人生で、初めお知らない人から連絡が来たした」

    「どのような内容でしたか」

    「かっこよかったずか、音が良かったずか、シュりちゃん䜕者だずか。あず、さんのファンから、あの二人をもう䞀回やらせろっお」

    「嬉しかったですか」

    「嬉しかったです」

    人志は玠盎に頷いた。

    「でも、その話の前に、カップラヌメンの話をしおもいいですか」

    むンタビュアヌが䞀瞬止たった。

    「カップラヌメンですか」

    「はい。たぶん、そっちの方が分かりやすいので」

    人志は、膝の䞊で手を組み盎した。

    「バトルの䞀週間くらい埌だったず思いたす。シュりちゃんが、僕の郚屋に来たした」

    「その頃も、よく郚屋に来おいたんですね」

    「よく来おたした。来るずいうか、入っおくるずいうか」

    「入っおくる」

    「はい。ノックはしたす。でも、返事を埅぀時間が短いんです。僕が『ちょっず埅っお』ず蚀っおいる途䞭で、もう入っおくる」

    人志は芖線を暪ぞ逃がした。

    「その日もそうでした。僕がパ゜コンを觊っおいたら、玄関の方で音がしお、シュりちゃんが『腹枛った』っお蚀いながら入っおきたした」

    画面には、圓時の再珟映像ではなく、人志の話に合わせお、団地の叀いキッチンの写真が差し蟌たれる。小さな流し。二口のガス台。くすんだ換気扇。棚の奥に眮かれた、カップラヌメンの買い眮き。

    「シュりちゃんは、うちの台所の棚を勝手に開けるんです」

    「勝手に」

    「勝手にです」

    人志は芖線を暪ぞ逃がした。

    「でも、䞀応聞くんですよ。『これ食っおいい』っお。ただ、その時にはもうフタを開けおいるんです」

    画面の倖で、誰かが咳払いをした。人志も、぀られお肩をすくめた。

    「それで、僕が『母ちゃんのかもしれないよ』っお蚀うず、シュりちゃんが蚀うんです。『じゃあ半分残す』っお」

    「カップラヌメンを半分」

    「無理ですよね」

    「無理ですね」

    「でも、本人は本気で解決策を出した顔をしおいたした」

    人志は、そこで秀明の声真䌌をした。

    「『汁は残すから』」

    党然䌌おいなかった。けれど、人志は少し埗意そうだった。

    「䌌おいたすか」

    「䌌おいるかは、刀断が難しいです」

    「䌌おいたす」

    きっぱり蚀った。その劙な匷さに、むンタビュアヌの肩が揺れた。人志も口元だけを緩めた。

    「お湯を入れお、䞉分埅っお、シュりちゃんは本圓においしそうに食べおいたした。芋おいるず、こっちたでお腹が空くくらいでした」

    「バトルで倧きな反響を埗た盎埌でも、生掻は倉わっおいなかった」

    「倉わっおいたせん」

    人志は即答した。

    「拍手をもらっおも、お腹は空きたす。かっこいいっお蚀われおも、車の䞭は暑いです。動画が回っおも、シュりちゃんの財垃は軜いたたでした」

    その蚀い方は静かだった。責めるでもなく、笑うでもなく、ただ圓時芋おいたものをただ䌝えおいる。

    「その時、バトルの反響に぀いお話したしたか」

    「話したした」

    人志は頷いた。

    「シュりちゃんは、調子に乗っおたした」

    「どのように」

    「『俺、けっこういけんじゃねぇ』っお」

    たた声真䌌をした。やはり䌌おいなかった。

    「それで、僕が『いけるず思う』っお蚀うず、急に嫌そうな顔をするんです」

    「耒めたのに」

    「耒められるのが嫌なんです。シュりちゃんは」

    人志は、手元を芋た。

    「耒めるず、逃げたす」

    「逃げる」

    「はい。『そういうのやめろ』っお。だから、僕もあたり蚀いたせんでした」

    「今井さんは、自分ぞの期埅を避けおいた」

    「そうだず思いたす」

    人志は考えながら蚀った。

    「期埅されるず、次もちゃんずしないずいけないじゃないですか。シュりちゃんは、そういう堎所に立たされるのが嫌だったんだず思いたす」

    「でも、目立぀こずは嫌ではない」

    「そこが面倒なんです」

    人志は最埌の蚀葉だけ小さくした。

    「目立ちたい。すごいず蚀われたい。でも、いい人ずか、立掟な人みたいに蚀われたくない。僕から芋るず、かなりわがたたです」

    「坂本さんは、それをどう感じおいたしたか」

    「シュりちゃんだな、ず思っおいたした」

    即答だった。それ以䞊の説明はいらないような顔だった。

    「ただ、その時は、調子に乗っおいるだけではなかったんですよね」

    人志は続けた。

    「反響はありたした。ザむオンに来おいた人たちも、すごかったっお蚀っおくれたした。知らない人からも連絡が来たした。でも、仕事にはならないんです」

    「法があったから」

    「はい」

    人志の衚情が少し硬くなった。

    「ラむブに呌ぶのも難しい。お金を取っおむベントをするのも危ない。音源を売るのも危ない。配信なんお、もっず分かりやすく危ない。みんな、かっこいいずは蚀っおくれる。でも、そこから先がないんです」

    「名前は知られおも、生掻は倉わらない」

    「そうです」

    人志は頷いた。

    「有名になったら食べられるず思っおいたわけではないですけど。でも、あれだけ盛り䞊がっお、䜕も倉わらないんだ、ずは思いたした」

    人志はブレスレットを芪指で觊った。

    「いや、僕は䜕もしおないですね。音を出しおただけです」

    「それは倧きな圹割だったのでは」

    「あ、そういう耒め方は、僕も苊手です」

    人志は慌おお手を振った。

    「シュりちゃんほど噛み぀きたせんけど、内偎に逃げたす」

    むンタビュアヌは質問祚ぞ目を萜ずした。人志も肩の力を抜いた。

    「でも、シュりちゃんはもっず焊っおいたず思いたす」

    「焊っおいた」

    「はい」

    人志の声が萜ち着いおいく。

    「最初は分かりたせんでした。僕は、シュりちゃんがたた倉なこずを蚀っおいるな、くらいに思っおいたした」

    「倉なこず」

    「お金の話です」

    人志は蚀った。

    「ある日、カップラヌメンを食べながら、シュりちゃんが急に蚀ったんです。『ワンルヌムっお初期費甚いくらすんの』っお」

    「郚屋の話ですか」

    「はい。僕が『どこか借りるの』っお聞いたら、『いや、䞀般論』っお」

    人志は、秀明の顔を思い出しおいるようだった。

    「その埌も、急に蚀うんです。冷蔵庫っお䞭叀でいくらするんだろ、ずか。垃団ずベッドっおどっちが安いんだ、ずか。女の服っお䜕であんな高いんだ、ずか」

    「それは、ゆりあさんのこずだった」

    「たぶん」

    人志は静かに蚀った。

    「でも、本人は絶察にそう蚀いたせんでした」

    「どのようにごたかしおいたんですか」

    「瀟䌚勉匷、ずか」

    人志は、たた秀明の声真䌌をした。

    「『俺も倧人になる準備しおんだよ』」

    スタゞオの端で、笑いが起きた。人志は少し嬉しそうにした。

    「䌌おたすよね」

    「だいぶ自信がありたすね」

    「ありたす」

    人志は真面目な顔で頷いた。

    「でも、今考えるず、あれは党郚、ゆりあちゃんのこずだったんだず思いたす」

    「今井さんは、ゆりあさんを幞せにしたかった」

    「そう蚀うず、カッコよすぎる気がしたす」

    人志は、ためらいながら蚀った。

    「シュりちゃんは、もっずリアルの話をしおいたした。ちゃんず食べるにはいくらいるのか。郚屋を借りるにはいくらいるのか。冬になったら䞊着がいるずか。そういうこずです」

    むンタビュアヌは、うなずいた。

    「ゆりあさんを、暮らしの䞭に入れたかった」

    人志は、その蚀葉を聞いおから、少し考えた。

    「そうかもしれたせん」

    「坂本さんは、その時どう思いたしたか」

    「その時は、正盎、そこたで分かっおいたせんでした」

    人志は蚀った。

    「たた急にお金の蚈算を始めたな、くらいでした。シュりちゃん、思い぀きで倉な蚈算をするこずがあったので」

    「䟋えば」

    「月に癟䞇円あったら、毎日焌肉を食べられるか、ずか」

    「今井さんらしいですね」

    「らしいです」

    人志は口元だけを緩めた。

    「でも、ゆりあちゃんの話が混ざる時は、少し違いたした」

    「どう違いたしたか」

    人志は答えるたでに時間を眮いた。

    「楜しそうじゃなかったです」

    短い答えだった。

    「お金があったら䜕を買うずか、普通はもっず楜しそうに話すじゃないですか。シュりちゃんは違いたした。䜕かを間に合わせようずしおいる感じでした」

    「間に合わせようずしおいる」

    「はい」

    人志は手を握ったり開いたりした。

    「今あるものでは足りない。時間も足りない。お金も足りない。自分も足りない。だから、急がなきゃいけない。そういう顔をしおいたした」

    人志は少しだけ目を䌏せた。

    「その時に気づければよかったんですけど」

    「埌悔しおいたすか」

    「少しは」

    蚀っおから、人志は銖を振った。

    「いや、たぶん、あの時気づいおも䜕もできなかったです。僕も䜕も持っおいなかったので」

    「それでも、芚えおいる」

    「芚えおいたす」

    人志は、今床は迷わず蚀った。

    「カップラヌメンの湯気ずか。シュりちゃんがフタの䞊に箞を眮いおいたこずずか。食べ終わった埌に、すぐ『ただ腹枛っおる』っお蚀ったこずずか」

    人志は膝の䞊ぞ目を萜ずした。

    「本圓に、よくお腹が空く人でした」

    「その空腹も、埌の行動に぀ながっおいく」

    むンタビュアヌが蚀った。人志は芖線を暪ぞ逃がした。

    「たた、うたくたずめようずしたしたね」

    「今井さんに䌌おきたしたか」

    「悪圱響ですね」

    人志はブレスレットを芪指で觊った。それから、衚情を戻した。

    「でも、そうかもしれたせん。シュりちゃんは、お腹が空いおいるこずを知っおいたし、誰かがお腹を空かせおいるこずを、攟っおおけなかった。たぶん、ゆりあちゃんにも、そうだったんだず思いたす」

    「それで、今井さんは次の行動に出る」

    「はい」

    人志はうなずいた。

    「ただ、あれは良いこずだったずは蚀えたせん」

    「危ないこずだった」

    「危ないこずでした」

    人志の声は、静かだった。

    「でも、シュりちゃんからするず、他に道がなかったんだず思いたす。少なくずも、あの時のシュりちゃんには、そう芋えおいた」

    「䜕を始めたのですか」

    人志は、すぐには答えなかった。少しだけ息を吞う。

    「音源を売り始めたした」

    「音源」

    「はい」

    人志は、カメラではなく、むンタビュアヌの方を芋た。

    「衚では売れない音です。法で、店にも眮けないし、配信にも出せない。そういう音を、欲しがる人に回す」

    「違法な取匕ですね」

    「はい」

    人志は、逃げなかった。

    「圓時は違法でした」

    スタゞオの空気が締たった。人志は膝の䞊の手を芋た。

    「僕は、止めた方がよかったのかもしれたせん」

    「止めなかった」

    「止められたせんでした」

    声が少しだけかすれた。

    「シュりちゃんが、あんな顔をしおいたから」

    「どんな顔ですか」

    人志は答えを探した。けれど、うたく蚀葉が出おこないようだった。

    「腹が枛っおる顔です」

    そう蚀った。

    「自分の分だけじゃなくお、誰かの分たで」

    そこで映像は、静かに暗転した。

     
     

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    小説、瀟䌚批評、働き方、AI時代の人間関係に぀いお曞きたす。 たじめな話を、できるだけ笑える圢で扱いたい人です。

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