
【連載小説】TO ZION 改稿版を始めます
約二週間ぶりの投稿です。この作品の創作に集中しておりました。
『TO ZION 改稿版』を、noteで連載します。
先ほど第1話から第3話までを公開しました。
明日以降は毎日1話ずつ投稿していく予定です。
この作品を書こうと思ったきっかけは、貧困について考えていた頃に見た、川崎の下町でサイファーをする若者たちのニュースでした。
サイファーというのは、街角に集まって自由にラップすることです。
天使にラブソングをⅡでも、そんなシーンがありましたね。
アメリカの貧困街から、ラップによって自分の声を世の中に届かせ、のし上がっていく人たちの話も、ずっと心に残っていました。
私自身も、就職氷河期の真っただ中で高校生だった頃、そういうものに憧れたことがあります。何も持っていなくても、声だけは持てるのではないか。どこにも居場所がなくても、言葉と音があれば、どこかへ出ていけるのではないか。そんな夢を、少しだけ見たことがありました。
そこに、旧ソ連の「肋骨レコード」の話が重なりました。
禁じられた音楽を、医療用のレントゲン写真に刻んでまで残そうとした人たちがいた。音楽は、禁止されたくらいでは死なない。その考えが、この物語の根にあります。
『TO ZION』は、8年前にも一度、小説家になろうへ投稿した作品です。
当時は勢いに任せて書きました。絵師のT@KUMI君には、とても大切な挿絵を描いてもらいました。今回のnote版でも、その絵を使わせてもらっています。
ただ、ずっと心残りもありました。
物語の核に、当時の自分の筆力が追いついていなかった。もっと描けたはずのものがあった。人の貧しさ、音楽の力、クラブという場所、誰かに支えられること、そういうものを、今ならもう少し深く書けるのではないかと思いました。
だから、今回、全面的に書き直しました。
これは、音楽で成り上がる話というより、何も持っていなかった青年が、飯と服と音と場所と心配によって、少しずつ押し上げられていく話です。
主人公の今井秀明は、父を亡くし、車で寝泊まりしながら、横浜の老舗クラブZIONへ辿り着きます。そこで出会う人たち、失われた人たち、残された音、言葉にならない愛が、彼を一晩だけ真ん中へ立たせます。
ブラックミュージックを知らない人にも届くように、できるだけ空気や身体感覚として伝わる表現を心がけました。
そのうえで、今まさに貧困の中にいる人、かつてそこにいた人、そういう誰かを近くで見てきた人には、少し深く届くかもしれません。
そして、90年代のヒップホップ、R&B、ソウル、レゲエを通ってきた人には、懐かしい名前や空気もあると思います。
旧版を読んでいなくても、この改稿版だけで読めます。
最後まで、よろしくお願いします。