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【創䜜倧賞2026゚ッセむ郚門倧賞🥇(予定)】無職日和~7幎目の真実~


 吟茩は無職である。仕事はもうしない。

【無職】1.5畳の王囜

 がくは1.5畳の郚屋に䜏んでいる。

 この話をするず、倧抵の人は䞀瞬黙る。「それはもう郚屋ではなく収玍では」ず思っおいるのだろうが、みんな瀟䌚性があるので口には出さない。人類はこういう時だけ劙に優しい。

 ふむ、たしかに狭い。

 寝返りを打おば壁にぶ぀かるし、冬堎に゚アコンを぀けるず3分ほどで宀内が東南アゞアみたいになる。加湿噚など焚こうものなら郚屋党䜓が霧のロンドンみたいな趣になる。おしゃれな男が郚屋にスモヌクを焚いおいるのをSNSで目にしたこずがあるが、この郚屋でやるおしゃれな感じにはならない。

 床には図曞宀で借りた本が積たれおいる。本棚を眮くずがくの居䜏スペヌスが消滅するため、本は積むしかない。「読む予定の本」「途䞭たで読んだ本」「返华期限が迫っおいる本」が地局のように堆積しおいる。

 こんな郚屋に䜏んでいるが、困っおはいない。

 むしろ、この郚屋くらい狭いず劙な諊めが぀く。「おしゃれな間接照明を眮きたい」みたいな欲望が発生しないのである。芳葉怍物も眮けない。怍物スペヌスの代償にがくが退去するこずになるからだ。

 人間、空間が小さくなるず欲望も瞮小する。

 ちなみに月の生掻費は5䞇円くらいである。

 こう曞くず「䜕を食べお生きおいるんですか」ず聞かれそうだが、別に雑草を煮お食べたりはしおいない。普通にスヌパヌぞ行くし、サりナにも行く。本を読む。散歩をする。たたに旅行もする。友達ずスマブラだっおやる。たたに、野菜や米やカップ麺のような食料物資も送られおくる。

 文章だけ芋るず山奥で埳を積んでいる仙人みたいだが、実態はただの無職である。

 がくはnoteを曞いお暮らしおいる。その傍ら「無職教」ずいう、名前だけ聞くずかなり危険なコミュニティを運営し、「党日本おさんぜ協䌚」などずいうさらに意味䞍明な掻動たで始めおしたった。気が向いた時には「レンタル無職」ずしお人の盞談にも乗っおいる。

 「普段䜕をされおいるんですか」ず聞かれるたび説明を詊みるのだが、「散歩ずかです」ず答えるこずになる。我ながら情報量が少なすぎるし、聞いた方も気たずそうにしおいる。聞くな。


【朝】Hello World!

 朝、目が芚める。

 狭い郚屋なのでベッドから立ち䞊がるずいう抂念が存圚しない。郚屋党䜓が寝宀である。぀たり、起床即掻動ずなる。

 がくは垃団の暪ぞ積たれた本を避けながら起き䞊がる。返华期限の玙がひらひら出おいる。かなりたずい。しかし図曞通ずいうのは返しに行けば意倖ず蚱しおくれる。人類瀟䌚は案倖そのくらいの緩さで回っおいる。

 顔を掗い、歯を磚き、トむレを枈たせる。

 䞖間では、すでに倧量の人間が働いおいる気配がする。電車遅延。䌚議。朝掻。筋トレ。株䟡。人類は朝から忙しい。

 䞀方がくは、1.5畳の郚屋で靎䞋を探しおいる。

 人生ずは、本圓に分からないなず思う。

 出かける時の荷物はスマホだけである。財垃すら持たない。珟代瀟䌚ではスマホがあればだいたい生きおいける。文明ずいうのは本圓にすごい。ピラミッドを建蚭した人類が、最終的に「スマホだけ持っお散歩する無職」を生み出したのである。

 がくは靎を履き、倖ぞ出る。

 平日の朝の街には、ちゃんず瀟䌚をやっおいる人々が倧量にいる。スヌツ姿の䌚瀟員。駅ぞ吞い蟌たれおいく矀衆。配送トラック。コンビニでコヌヒヌを買う人々。

 無職になったばかりの頃、がくはこの時間垯に倖を歩くのが少し苊手だった。䞖界党䜓が「お前だけ違うぞ」ず蚀っおくる気がしたのである。

 だから圓時のがくは、散歩䞭なのに劙に急いでいた。どこぞ向かうわけでもないのに早歩きしおいたのである。目的もない無職のくせに。

 しかしい぀からか、そんな気持ちになるこずもなくなった。

 そもそも、誰もがくのこずなど芋おいないのだ。これは自虐ではなく、救いだず思っおいる。みんな自分の人生で忙しい。

 空は劙に青い。無職日和である。


【午前】河川敷から眺める䞖界

 河川敷には、い぀行っおも同じような時間が流れおいる。犬がいお、鳩がいお、あず、だいたいおじさんがいる。

 平日の午前䞭から河川敷に存圚しおいるおじさんずいうのは、なんだか独特である。瀟䌚から完党にドロップアりトしおいるわけでもなく、かずいっお今から重芁な䌚議ぞ向かう感じもない。みんな、がんやりしおいる。がんやりしたたた歩き、がんやりしたたた川を芋おいる。あれはたぶん「人生に察しお完党に勝぀こずも負けるこずもしない人類」の顔なのだず思う。あるいは既に戊堎から垰っおきお平穏な生掻に興じおいる功劎者だ。

 ベンチぞ座るず、鳩が近づいおくる。圌らは、人間が最終的にはパンくずを萜ずす生き物であるこずを知っおいる。ずおも賢い。こちらずしおは朝から無職の嚁厳を保ずうず詊みるが、鳩瀟䌚においおがくは「食料を持っおいそうな顔をした人類」ずいうカテゎリに分類されおいるのだろう。やけに寄っおくる。

 がくはコンビニで買った100円のコヌヒヌを飲みながら、がんやり川を芋る。空は青い。颚が吹いおいる。平日の午前䞭ずいうのはこんなにも静かだったのか、ず無職になっおから知った。

 䌚瀟員時代のがくは、この時間をほずんど知らないたた生きおいた。毎朝、眠い目を擊りながら満員電車ぞ乗り蟌み、気づけば倜になっおいたのである。だから圓時のがくにずっお「平日の午前10時」ずいうのは意識の䞭に存圚しない時間だった。深海魚が地䞊の倩気を知らないように、がくもたた、午前の河川敷を知らなかった。

 犬は犬の人生を生きおいるし、鳩は鳩の人生を生きおいる。おじさんたちは、おじさんたちで独自の時間を進行させおいる。䞖の䞭は案倖みんな勝手なのである。

 䜙談だが、がくは「党日本おさんぜ協䌚」ずいう掻動をやっおいる。改めお文章にするず、本圓に䜕をしおいるのか分からない。名前の通り、みんなで散歩しようずいう䌚である。歩数によっおポむントが貯たり、䌚員ランクが䞊がる。そのうち、みんなで実際に歩くむベントなんかもやりたいず思っおいる。かなり䞖界平和な掻動である。

 ずいうのも、こうでもしないず本圓にみんな歩かないのだ。䌚瀟でも、家でも、電車でも、カフェでも、人類はずっず座っおいる。そしお座ったたた䞍安になっおいる。がく自身、無職になった盎埌は郚屋の䞭でずっずスマホを芋おいた。するず思想がどんどん先鋭化しおいく。「人生どうするんだ」「将来どうなるんだ」「自分は終わっおいるのではないか」。人間、狭い郚屋の䞭でスマホばかり芋おいるず思想が煮詰たる。たぶん味噌汁ず同じ原理なのだず思う。

 しかし倖ぞ出お歩くず、そのぞんの䞍安が少し薄たる。川が流れおいお、犬が歩いおいお、鳩がいる。䞖の䞭は、意倖ず普通に続いおいる。だから最近は「悩んでるならずりあえず歩きたしょう」ず蚀うこずが増えた。自己分析より先に、散歩。人生蚭蚈の前に、河川敷。かなり適圓な解決策に芋える。しかし、人間はそのくらいからしか回埩できない。

 河川敷ではおじいさんおばあさんらがグランドゎルフをしおいた。みんな劙に真剣な顔をしおいる。たぶんワヌルドカップずかも、最初はああいう感じで始たったのだず思う。

 颚が吹く。草が揺れる。遠くで子どもの声がする。

 鳩は盞倉わらず足元にたむろっおいる。しかし今日は䜕も持っおいない。申し蚳ない。


【お昌】マクドナルドに挂着する人類

 河川敷を出たあず、がくは駅前のマクドナルドぞ向かった。

 別にマクドナルドでなければならない理由はないのだが、あそこには独特の「人生の途䞭感」がある。高校生、営業マン、䞻婊、老人、フリヌWi-Fiで䜜業しおいる人、明らかに孊校をサボっおいる若者。ありずあらゆる人類が䞀床あそこぞ挂着しおいる。

 昌過ぎのマクドナルドは、劙に眠だげな空気を挂わせおいる。店内にはポテトの匂いず、油ず、少し叀い冷房の空気が挂う。がくは窓際の垭ぞ座り、ポテトを぀たみながらがんやりず眺める。䜕を芖界に映る党おをだ。

 高校生が笑っおいる。絶察にサボリだろ、君たち。

 あの幎頃の人間は本圓にどうでもいいこずで笑えるので凄い。こちらなど最近は颚呂䞊がりのアむスが矎味いだけで䞀日を乗り切っおいるずいうのに、圌らはポテト䞀本で爆笑しおいる。生呜力が違う。

 近くの垭ではスヌツ姿の男性がノヌトパ゜コンを開いおいる。かなり真剣な顔でグラフを芋぀めおいる。もしかしたら䞖界を動かしおいるのかもしれない。

 人類の倚様性を感じる。

 みんな忙しそうだなず思う。スマホを芋おいる人。資料を開いおいる人。誰かぞLINEを返しおいる人。みんな垞に䜕かぞ接続されおいる。

 なんだか最近は「成長」ずいう蚀葉をやたら芋かける。垂堎䟡倀、自己実珟、副業、タむパ、FIRE。SNSを開けば「朝4時に起きお筋トレず読曞をしおいたす」みたいな人間が倧量に出珟する。もはや人類は垞にレベルアップしおいないず死ぬ呪いでもかけられおいるのかもしれない。

 もちろん努力するこず自䜓は悪くない。しかし、がくは昔からああいう情報を芋るたび少し息苊しくなっおいた。䌚瀟員時代のがくも、ずっず「もっず頑匵らなければ」ず思っおいたのである。圓時はただピュアだったのだ。もっず成果を出さなければ。もっず成長しなければ。もっずちゃんずした倧人にならなければ。そう思っおいた。

 しかし「ちゃんずした倧人」ずいうのがどういう生き物なのか、最埌たでよく分からなかった。少なくずも、毎朝満員電車ぞ抌し蟌たれながら死んだ目をしおいる人類を芋お、「あれが完成圢なんだな」ずは思えなかったのである。

 もちろん、瀟䌚には瀟䌚の倧倉さがある。がくだっお今こうしお平日の昌間からポテトを食べられおいるのは、誰かがちゃんず働いおいるおかげだ。だから別に「䌚瀟員はダメだ」みたいな話では党くない。ただ、人間には向き䞍向きがある。がくはたぶん「垞に競争し続ける人生」に向いおいなかった。それだけなのだず思う。

 昔のがくは止たるこずを異垞に怖がっおいた。䌑んだら終わる気がしおいたし、䞀床レヌルから倖れたら人生は壊れるず思っおいた。しかし実際に倖れおみるず、意倖ず䜕ずかなっおしたった。1.5畳の郚屋に䜏み、河川敷で鳩を芋お、こうしおポテトを頬匵っおいる。仕事をしおいなくずもシャカシャカポテトは矎味い。かなり終わっおいる感じもするが、䞍思議ず昔よりちゃんず眠れおいる。

 がくはポテトを䞀本぀たみながらスマホを芋る。SNSには盞倉わらず「人生を倉える方法」が倧量に流れおいる。

䞀方で、無職教のサヌバヌには「今日は散歩した」みたいな文章が流れおいる。

 無職教は、い぀だっおがんやりしおいる。

 ここで少しだけ解説を入れるず、無職教ずいうのはがくが運営だけどほずんど管理などしおいないコミュニティのこずだ。noteメンバヌシップでは限定蚘事が読めるほかに「おたけ」ずしおこのコミュニティぞ参加できる。それが無職教だ。

 たあ、別に入る必芁はない。犏利厚生みたいなもんだ。無職が提䟛する犏利厚生こそが「無職教」である。

 改めお文字にするずかなり䞍安になる響きだが、実際ここで行われおいるこずは平和そのものだ。

 みんなが奜き勝手に暮らしおいる。

 散歩したこずを曞く人。
 読んだ本の話をする人。
 毎日のスクワット報告だけを続けおいる人。
 突然ラヌメンの写真を貌る人。

 孊生、䌚瀟員、サラリヌマン、劊婊さん、無職、公務員など、倚皮倚様な人たちがごちゃ混ぜになっおいる。

 たたに深倜䞉時くらいたでラりンゞで喋っおいる人たちもいる。早く寝ろ、ず思う。しかし、ああいうどうでもいい時間が人間を壊れにくくする気もするから䟮れない。

 無職教では、垌望者に自分専甚の「郚屋」が䞎えられる。そこでは䜕を曞いおもいい。散歩したこずでも、しんどかったこずでも、読んだ本の話でもいい。別に面癜いこずを曞く必芁もないし、圹に立぀こずを蚀わなくおもいい。

 「今日はちゃんず倖ぞ出られた」 みたいな文章が、ぜ぀んず眮かれおいる。

 なんだか最近は、ああいう文章の方が萜ち着く。倖向けにガチガチに補匷されたよそ行きの文章ではなく、郚屋着みたいなゆるっずした文章だ。

 昚今のむンタヌネットは少し人の目が倚すぎるな。みんな評䟡される前提で喋っおいる。面癜くなければいけない。圹に立たなければいけない。ちゃんずしおいなければいけない。そしお燃えないように気を぀けなければならない。気を぀けおいおも火を぀けられるこずがあるので、もはや甚心のしようがない。

 だから無職教は「ご機嫌に暮らすためのコミュニティ」にしたかった。

 向䞊心ずか自己実珟ずか、そういうものを䞀旊ちょっず脇ぞ眮いお「今日は散歩したな」ずか「颚呂入っお気持ちよかったな」みたいなこずで生き延びる堎所。

 本圓に疲れおいる時はそのくらいのこずしかできない。そしお、別にそのくらいでいいのだ。

 マクドナルドでは高校生たちがただ笑っおいる。窓の倖ではスヌツ姿の人々が駅ぞ向かっお歩いおいる。

 がくはスマホを閉じる。

 レンタル無職の埅ち合わせ時間が近づいおいた。


【午埌】レンタル無職

 埅ち合わせ堎所のサむれリダには、少し早めに着いた。

 平日の昌過ぎのサむれリダずいうのは、かなり独特な空間である。ドリンクバヌだけで無限に粘っおいる老人、明らかに授業をサボっおいる高校生、ミラノ颚ドリアを食べながら資栌勉匷をしおいる人、昌からワむンを飲んでいるおじさん。人類の「ちゃんずしおなさ」が、かなり高い玔床で抜出されおいる。

 がくはこの空間が結構奜きだ。

 倀段が安いからなのか、みんな少し油断しおいるのである。

 スタヌバックスには「䜕かを成し遂げようずしおいる人」がいる。しかしサむれリダには「たあ今日はこれでいいか」ず思っおいる人がいる。ど偏芋なので反論は認めよう

 人間、本来はそのくらいで生きおいたはずなのだ。叀代ロヌマ人も、たぶんミラノ颚ドリアは食べおいないにせよ、もっずがんやり暮らしおいたず思う。

 がくはドリンクバヌの烏韍茶を飲みながら、がんやり店内を芋る。

 昔のがくも、ああいう顔でパ゜コンを芋おいた気がする。

 もっず頑匵らなければいけない。
 もっず成長しなければいけない。
 もっずちゃんずした人生を䜜らなければいけない。

 しかし最近は「人生を良くする」ずいう行為そのものに、みんな少し疲れおいる気がする。

 埅ち合わせ盞手の男性は、時間ぎったりにやっお来た。真面目そうな人だった。揶揄でも皮肉でもなく「真面目そうな人」ずいうのは本圓に存圚する。髪型ずか服装ずかではなく空気で分かる。孊生時代、きっちり宿題を提出しおいたタむプの人類である。え、それは普通だっお育ちが悪くお申し蚳ない。

 がくは「どうも」ず蚀っお頭を䞋げる。

 盞手も「どうも」ず蚀う。

 平日の昌間、サむれリダで無職ず埅ち合わせおいる時点でこの人の人生はかなり倉な方向ぞ進んでいる。しかし最近は、そういう「劙な人生」を送っおいる人の方が、むしろ自然に芋えるこずがある。

 話を聞くず、仕事がかなりしんどいらしかった。

 毎日残業しおいるこず。
 䞊叞ずうたくいっおいないこず。
 転職するべきか迷っおいるこず。

 そういう話を、ぜ぀ぜ぀喋っおいた。

 がくは「倧倉ですねえ」ず蚀いながら、小゚ビのサラダを食べる。

 人生盞談䞭に小゚ビを食べるな、ずいう気もする。しかし、サむれリダずいう空間には人間を劙にフラットにする力がある。高尚な議論をするにはミラノ颚ドリアが安すぎるのである。それが良い感じで空気を䞭和しおいる。

 しかし䞍思議なこずに、レンタル無職ぞ来る人っお、そこたで怠けたいわけではないのである。むしろ逆で、真面目すぎる人の方が倚い。

 ちゃんず働こうずしおいる。
 ちゃんず生きようずしおいる。
 ちゃんずした倧人になろうずしおいる。

 だから疲れおしたう。

 がくも昔は「ちゃんずしおいる人間」が偉いず思っおいた。瀟䌚性があり、空気が読めお、安定した仕事をしおいる人間。でも、自分がそのちゃんずした人間をやろうずするず、異垞に疲匊した。あれはもはや才胜である。自分にはその才胜はないんだず早々に実感した。或いは、ちゃんずしおいるように芋えたあの人たちも、どこか無理をしおいたのかもしれない。

 ずにかく、がくには向いおいなかったのである。そしお、そういう人はたくさんいるず思う。

 だから最近は「たずちゃんず寝たしょう」ずか、「散歩したしょう」ずか、そういう話をするこずが増えた。人生盞談なのにやっおるこずはほが老人䌚である。

 ちなみに、レンタル無職には、ここぞ曞けないような話もたくさんある。

 かなり重たい話。
 あたり笑えない話。
 盞談者が泣き出しおしたうような話。

 本来ならお通倜みたいな空気になるや぀である。

 しかし、がくはたいおいの堎合ガハハハず笑いながら聞いおいる。銬鹿にしおいるわけではない。人間、あたりにも突飛な話を聞くず途䞭から笑えおくる瞬間があるのだ。或いはがくが故障しおいるかのどちらかだず思う。埌者の可胜性は吊めない。

 「それ什和のシベリア抑留じゃないですか」ずか。
 「その䞊叞は劖怪ですね」ずか。
 そういうこずを蚀いながら話を聞いおいる。

 他人の人生ずは、良くも悪くもがくのものではない。少し離れお芋るず劙に倉なのである。気色悪くお、偏愛めいおいお、でもどこかに愛おしい奇劙さをたずっおいる。

 毎日満員電車ぞ乗り、怒られ、謝り、胃を痛め、それでも「ちゃんずしなければ」ず思い続けおいる人類。冷静に考えるずかなり無理をしおいる。

 だから時々、「いや、それ普通にしんどいでしょ」ず蚀っおくれる無職がいるだけで、人は少し安心するのかもしれない。がくは党然たいしたこずは蚀っおないけど、別に倧したこずを蚀われたいわけじゃないんだろうなずわかっおきた。

 男性は䜕床か「なんか安心したした」ず蚀っおいた。

 がくずしおは、平日の昌間からサむれリダで小゚ビを奢られお食べおいるだけなのだが、人間、䞖の䞭に「この人はちゃんずしおなくおも生きおるな」ずいう存圚がいるだけで少し安心するのかもしれない。


 サむれリダを出る頃には、倖は倕方っぜい色になり始めおいた。昌ず倜のあいだの、䞭途半端な時間である。マゞックアワヌずいうや぀か。

 商店街では八癟屋のおじさんが段ボヌルを片付けおいる。自転車に乗った小孊生たちが、䜕がおかしいのか分からないが倧笑いしおいる。がくは平日の倕方にスヌパヌで豆腐を吟味する。

 人生ずはあんたりよく分からないものだなあず思う。

 スヌパヌぞ入るず店内には平和な空気が流れおいた。高霢者たちがゆっくり歩き、惣菜コヌナヌには焌き魚が䞊び、店内BGMだけが劙に明るい。

 䞖の䞭には「ただ生掻しおいる人」がちゃんず存圚しおいる。

 むンタヌネットを芋おいるず、䞖界䞭の人間が「倢を叶えるために努力しおいる」みたいに芋える時がある。しかし実際の街には、もっず地味な時間が流れおいる。豆腐を買う人。ネギを遞ぶ人。半額シヌルを埅぀人。人類は基本的にそのぞんで生きおいる。

 がくはカゎを持たずに店内をうろ぀く。月5䞇円生掻をしおいるず、カゎを持った瞬間に敗北が確定する。䜙蚈なものを入れおしたうからだ。人類は空間があるず埋めたくなる生き物である。冷蔵庫も、予定も、SNSも、だいたいそうだ。うめたくなっちゃうのだ。

 だからがくは、必芁になるギリギリたでカゎを持たない。

 豆腐。
 玍豆。
 割匕シヌルの貌られた惣菜。

 手に取るのはそのくらい。

 レゞぞ向かう途䞭、さらに半額シヌルが貌られ始める。するず店内の空気が埮劙に倉わる。さっきたで静かだったおじいさんたちが急に機敏になるのである。

 人類は面癜い。

 がくも気づけば、その流れぞ自然に参加しおいた。

 瀟䌚性は倱ったが、半額シヌルぞの嗅芚だけはちゃんず残っおいる。


【倜】颚呂ずアむスず返华期限

 スヌパヌを出るず、倖はもうかなり暗くなっおいた。

 昌間あれだけ「青春」みたいな顔をしおいた空も、倜になるず急にトヌンダりンする。空ですら毎日ちゃんず疲れおいるのだから、人類が倕方になるず元気を倱うのも仕方ないのかもしれない。

 がくは買い物袋を1.5畳の郚屋にぶち蟌んで、そのたた倧济堎ぞ向かう。月5䞇円生掻のくせにサりナぞ行くのかず時々蚀われるが、人間には「これだけは削れない」ずいうものがある。がくの堎合、それが散歩ず颚呂だ。

 倧济堎には、色んなおじさんがいる。

 異垞に堎所取りに厳しいおじさん。
 サりナでやたら政治の話をするおじさん。
 氎颚呂ぞ入るたび、「っはぁ〜〜〜」ず、この䞖の終わりみたいな声を出すおじさん。

 みんなずおも自由である。

 がくはああいう空間が奜きだ。肩曞きが薄たるからだず思う。䌚瀟員も、瀟長も、無職も、颚呂ぞ入る時はだいたい党裞になる。人類は裞になるず少し平等になる。

 その昔、ロヌマ垝囜にも公衆济堎があったらしい。぀たり二千幎前から人類は、「なんか最近しんどいし、颚呂でも入るか」を繰り返しおいるのである。歎史ずは偉倧だ。

 サりナ宀ではみんな黙っお前を向いおいる。テレビだけが喋っおいる。ワむドショヌでは「成功者の朝習慣」みたいな特集をやっおいた。朝五時に起きお筋トレをしお、英語を勉匷しお、プロテむンを飲むらしい。

 えらく倧倉そうである。

 がくは今朝も鳩を芋おいた。

 もちろん、どちらが正しいずいう話ではない。ただ、人類はもう少し適圓に生きおも蚱されるんじゃないかず時々思う。

 氎颚呂ぞ入る。

 あ〜〜冷たい。

 たたに思うのだが、氎颚呂ずいうのはかなり暎力的な文化だ。熱々になった人類を急に冷氎ぞ突っ蟌むのである。普通に考えれば拷問寄りだ。しかしみんな嬉しそうな顔で入っおいる。人間ずいうのは、本圓に分からない。頭がおかしんじゃないだろうか。

 そのたた倖気济スペヌスぞ座る。倜颚が気持ちいい。隣のおじさんは完党に魂が抜けた顔をしおいた。たぶん䌚瀟垰りなのだず思う。あの顔は、珟代瀟䌚ぞギリギリ適応しおいる人間特有の顔だ。そうに違いない。同じようにおじさんもこちらを芋お「苊劎をしおいない若造の顔だ、こい぀無職だな」ずか思っおいるのだろうか。正解です。

 颚呂っおかなり偉倧だなず思う。人生の問題、䞉割くらいは䞀旊どうでもよくなる。もちろん根本的な解決ではない。しかし人間は䞀床枩められるず少し「たあいいか」ずいう気持ちになる。

 颚呂を出るず、がくはコンビニでアむスを買う。資本䞻矩は時々こういう「小さな幞犏」を投䞋しおくるから油断できない。

 がくはガリガリ君をかじりながら倜道を歩く。昌間の街ずは違い、倜の䜏宅街は静かだった。どこかの家からテレビの音が挏れおいる。マンションのベランダには掗濯物が揺れおいる。いい加枛したっおおけ。

 みんな、それぞれの生掻をやっおいる。

 昔のがくは「特別な人生」を送りたかった。もっず自由になりたかったし、もっずすごい䜕者かになりたかった。しかし最近は「普通に眠れる」ずか「散歩しお気持ちいい」ずか、「颚呂䞊がりのアむスが矎味い」ずか、そういうこずの方が倧事な気がしおいる。

 それなりに幎を取ったのかもしれない。

 あるいは、人間ずしお正垞になったのかもしれない。

 郚屋ぞ戻る。1.5畳の空間は今日もちゃんず狭い。床には図曞通で借りた本が積たれおいる。パ゜コンを開いおnoteの蚘事を曞いお、テキトヌに飯を食っおいるず、あっずいう間に倜は老けおいく。

 ふず、こんな生掻を䜕幎も続けおいるこずに気づく。本業を蟞めおから、フリヌランスっぜいこずをしたりしなかったりしおもう7幎目だ。

 普通、無職ずいうのはもっず䞀時的なものだず思われおいる。「今はただ無職」ずか「そのうち働く」ずか。がくも最初はそんな感じだった。しかし気づけば7幎経っおいた。

 人間、案倖なんずかなる。

 䞖間的に芋ればかなり倉な暮らしだずは思う。1.5畳の郚屋に䜏み、散歩しお、noteを曞いお、「無職教」だの「おさんぜ協䌚」だの、わけの分からないこずをやっおいる。

 しかし、そうやっお倉な方向ぞ歩き続けおいたら、倉なたた人生が続いおしたった。

 たぶん人生っお、本来そのくらい適圓なものなのだ。

 問題はない。あるず蚀えば、たああるかもしれないけど。

 たあ、それは明日のがくがなんずかするだろう。

 人類はそうやっお今日たで続いおきたのである。

 無職の1日はこうしお終わっお、たた明日も始たるのだ。

いいなず思ったら応揎しよう

無職 ここたで読んでいただきありがずうございたした メンバヌシップもよかったらぜひ芗いおいっお䞋さい