
雨夜の教室で
とある雨夜の教室。
読書に目覚めたトイレの花子さんは教室の扉の内側に座り国語の教科書を読んでいた。
月明かりがない夜でも読書が出来るように花子さんは異次元の世界に存在する、あやかし商店街で狐火ランタンを調達してきた。
床にランタンを置き、ランタンの青白い炎の灯りで教科書の小説を読んでいた花子さんは、廊下から響く足音に気がつくとランタンの灯りを消し息を潜めた。
警備員の巡回だが、警備員は滅多に教室をひとつずつ確かめたりはしない。
扉のガラスの部分から教室内を覗き込んでも、扉の真下にいる花子さんの存在には気がつかないはずだ。
花子さんの姿や狐火ランタンの灯りは人間には見えない事が多いが、感覚が鋭く霊感がある者にははっきり視えてしまう。
警備員の足音が遠ざかっていき、花子さんは再びランタンの灯りをつけて教科書の続きを読み始めた。
花子さんが教科書を読み始めたのは、中庭に立っている二宮金次郎像と話をした時だった。
最近、読書を始めて図書室にいる事が多くなったと伝えると「物語を読みたいなら、国語の教科書にも載っているよ。教室の机の中か職員室を探すといい」と教えられたからだ。
その時に二宮金次郎像も読書がしたいと言ったので、狐火ランタンをもうひとつ用意して彼にプレゼントした。
今夜は雨なので二宮金次郎像はこっそり図書室に移動して隅の方でランタンを使い読書を楽しんでいるはずだ。
二宮金次郎像のまわりには光源がなく、夜は真っ暗だから窓から見てもわからない。夜明けまでに中庭に戻れば警備員も気がつかないだろう。
花子さんが教室を探したところ、各クラスに必ず一人か二人は机の中にギチギチに教科書を詰め込んでいる児童がいる。
さすが物知りの二宮金次郎像だと花子さんは感心し、机の中から国語の教科書を拝借して毎晩読んでいる。
花子さんは教科書を借りたお礼に、机の中を綺麗に整頓してから教科書を戻している。
学校の七不思議が増えてしまうが、たまにトイレの花子さんとしての悪戯心が出てきてしまうのは仕方がない。
花子さんは雨音を聞きながら、教科書を読み進めていく。
今度は国語の教科書だけではなく、他の教科も読んでみようかなと思う。
雨夜の教室には花子さんが教科書をめくる音と雨音が響いている。
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