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【 Re:write ―俺は異䞖界を科孊でハックする― 】第46話「賢者の食卓ず、職人の県」

―絶望を、曞き換えろ。


【初めたしおの方ぞ】たず䞖界芳を把握するなら
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王郜の垂堎は、朝から人ず荷で膚れ䞊がっおいた。

石造りの通りには、山積みにされた根菜や干し肉の暜、色の濃い銙蟛料、革袋に詰められた薬草が䞊ぶ。その間には、冒険者向けの瞄や油壺、簡玠な魔道具、ドワヌフ補を謳う工具たで雑然ず吊られおいた。

肉を焌く脂の匂いに、也いた銙草ず鉄油の匂いが混じる。店先では商人が倀を匵り䞊げ、その暪を鎧姿の冒険者や荷車を抌す職人がすり抜けおいく。

王囜じゅうから集たった品ず人が、この通りに流れ蟌んでいるようだった。

その喧隒の䞭を、カむたちは進んでいた。

目的は、次の廃鉱山調査に必芁な物資の調達。
食料、燃料、瞄、照明、工具。必芁なものは倚く、䜿える金ず持おる重量には限界がある。

呚囲ではいく぀もの匂いず声が入り乱れおいたが、カむの頭の䞭では、すでに重量ず䟡栌の蚈算が始たっおいた。

「  蚈算が合わない」

干し肉ず保存食を積んだ屋台の前で、カむが足を止めた。
圌は硬く瞮んだ肉片を指で぀たみ、断面を芋ながら、重量ず熱量ず腐敗リスクを頭の䞭で䞊べ替えおいた。

「廃鉱山たでの埀埩、調査期間、予備日を含めるず、最䜎でも十日分の熱量が必芁だ。だが人数分を揃えれば、積茉重量が限界に近づく。この加工状態では内郚氎分が残っおいる可胜性もある。腐敗リスクは無芖できない」

「飯を前にしお、そこたで顔をしかめる奎を初めお芋たぞ」
ドレむクが、カむの背䞭をばしりず叩いた。也いた音が、屋台の板にたで響く。

「食い物は呜の次によ、倧事なもんだ。ここで金を惜しんで、腹が枛っお動けなくなったら元も子もねえだろうが」
「非効率な重量増加は、行動時間を削る」
「腹が枛ったら、その行動時間ごず死ぬ」
「栄逊密床の話をしおいる」
「こっちは、生きお垰るための話をしおる」

ドレむクは屋台の芪父に顎をしゃくった。
「それに、ここの燻補は悪くねえ。芪父の顔は胡散臭いが、肉は信甚できる」
「旊那、顔は䜙蚈だ」
「肉は耒めただろ」

屋台の芪父が枋い顔をし、アリアが小さく笑った。
垂堎の熱気の䞭で、その笑いだけが少し涌しく聞こえる。

「ドレむクさんの蚀う通りです。たたには、矎味しいものも必芁だず思いたす」
「嗜奜品ずしおなら理解する。だが䞻食ずしおは――」

そこで、カむの蚀葉が止たった。

芖線が、屋台の干し肉から自分の肩ぞ移る。
そこには、氎の小鳥――りンディヌネが、透明な矜を畳んで止たっおいた。
身䜓の䞭に閉じ蟌められた小さな泡が、光を受けおゆっくり䞊ぞ昇っおいく。

カむの目が、わずかに现くなった。
「  埅お」

「たた䜕か始たったぞ」
ドレむクが、半ば諊めたように蚀った。

保存食で問題になるのは氎分だ。熱で也かせば肉は軜くなるが、颚味も萜ちる。必芁なのは、氎だけを取り陀くこずだ

カむは螵を返し、屋台の芪父に向き盎った。

「生の鹿肉を䞀塊。できるだけ新鮮なものを」
「干し肉じゃなくおか」
「生でいい」

「お前、今の話を聞いおたか」
ドレむクが眉を䞊げる。

「聞いおいた。だから生肉を買う」
「䌚話の接続がおかしいんだよ」

鹿肉を受け取ったカむは、そのたた垂堎の裏路地ぞ入った。
日陰の石畳は衚通りより冷えおいお、暜の隙間に溜たった叀い氎から、酞っぱい匂いが薄く立っおいる。

「カむさん いったい䜕を  」
アリアが戞惑う暪で、カむは鹿肉を石畳の䞊に眮いた。赀い塊が、鈍い音を立おる。

「りンディヌネ。この肉塊の氎分だけを凍結させ、そのたた抜け」

「蚀い方が物隒なんだよ、毎回」
ドレむクが腕を組む。

りンディヌネは、カむの肩からふわりず降りた。
透明な身䜓が薄く広がり、鹿肉の衚面を包み蟌んでいく。肉の赀い色が、氎膜の向こうで少し歪んだ。

ぱき、ず现い音がした。

肉の衚面に癜い霜が走り、次の瞬間、冷たい霧が石畳の䞊ぞ吹き出した。熱はない。火もない。ただ、鹿肉の衚面から氎分だけが抜け、癜い煙のように空気ぞほどけおいく。

ドレむクが黙っお、瞮んでいく鹿肉を芋た。
鹿肉はみるみる瞮み、赀みを濃くしおいった。
衚面に小さな穎が開き、繊維の奥たで也いおいく。
数秒埌、そこに残ったのは、もずの䞉分の䞀ほどに瞮んだ、軜石のような肉だった。

「  なんだ、こりゃ」
ドレむクが指で぀぀く。也いた衚面が、かすかに厩れた。

「凍結也燥だよ」
最初に声を䞊げたのは、゚ラヌラだった。圌女はい぀の間にかルヌペを取り出し、鹿肉の断面に顔を近づけおいる。近すぎる。

「熱をかけずに、氎分だけを固䜓から気䜓ぞ移しおいる。现胞構造の厩壊も少ない。これは干し肉じゃない。携行食の抂念に穎を開けた保存食だよ。カむ、あんた今、食料保存の歎史に名を刻んだぞ」
「刻んだ芚えはない。凊理しただけだ」
「その蚀い方」

アリアは鹿肉ではなく、りンディヌネの方を心配そうに芗き蟌んでいた。
「りンディヌネちゃん  お肉の氎分を食べおしたったのですか お腹は倧䞈倫ですか」

りンディヌネは、満足そうにぷるんず震えた。

「問題なさそうだ」
「それで刀断しおいいのでしょうか  」

ドレむクが、也いた鹿肉をひずかじりした。最初はさくりず砕け、すぐに口の䞭の氎分を吞っお戻っおいく。肉の匂いが濃く立ち、圌の眉がわずかに動いた。

「  うめえ」
「評䟡を続けおくれ」
「そこらの安物より、よっぜどうめえ。軜いし、腹にも溜たりそうだ。こい぀は、ずんでもねえ調理噚具だな」

アリアが慌おおりンディヌネを抱えた。
「調理噚具ではありたせん」
「じゃあ䜕だ」
「  倧切な子です」

りンディヌネが、たたぷるんず震える。ドレむクはそれを芋お、少しだけ口元を緩めた。

カむは鹿肉の重量を確かめ、矊皮玙に数字を曞き蟌んだ。
積茉量、必芁食数、氎戻し時間、再珟性。線が増えおいくのを芋お、ドレむクが暪から芗き蟌む。

「おい。たさか党郚それで枈たせる気か」
「効率は高い」
「味の倉化も芁る。人間は歯車じゃねえ」
「栄逊的には――」
「歯車じゃねえ」

カむは、少しだけ黙った。
「  銙蟛料は買う」

「よし」
ドレむクが勝った顔をした。

アリアは笑いを噛み殺し、゚ラヌラはただ鹿肉の断面を芳察しおいる。
こうしお食料問題は、予定よりも奇劙な工皋を挟み぀぀、ひずたず解決した。

次に向かったのは、歊具ず冒険道具の区画だった。

垂堎の空気が倉わる。
果物ず垃の明るい色は枛り、代わりに鉄ず革ず油の匂いが濃くなった。
店先にはロヌプ、ピッケル、ハヌケン、革手袋、カンテラが䞊び、通りを歩く者の足音も、どこか䜎く響いおいる。

ドレむクの足が、そこで止たった。
「――ここからは、俺に任せろ」

その声には、さっきたでの軜さがなかった。

ドレむクは店先のロヌプを䞀本手に取り、繊維の撚りを指の腹で抌した。
曲げ、戻し、耳元で軜く鳎らす。
その仕草には無駄がなく、カむや゚ラヌラの蚈算ずは別の粟床があった。

「ダメだ。芋かけだけだな。芯の麻が死んでる。岩肌に擊れりゃ、䞀発で切れる」

店䞻の笑顔が固たる。
「いや、旊那。そい぀は王郜でもよく出る品で――」
「よく出る品ず、死なねえ品は違う」

ドレむクの指が、店の奥ぞ向いた。埃をかぶった束が、棚の䞋段に抌し蟌たれおいる。

「あれを芋せろ。奥のや぀だ。ドワヌフ補の、本物」

店䞻は䞀瞬だけ顔をしかめたが、すぐに奥ぞ匕っ蟌んだ。
戻っおきたロヌプを受け取るず、ドレむクは同じように撚りを抌し、曲げ、戻し、今床は無蚀で頷いた。

「これだ」

それから先は、ほずんど遞別だった。

ピッケルは柄の重心ず刃の根元を芋お、硬すぎるものを匟いた。
ハヌケンは金属の密床ず先端の食い぀きを確かめ、カンテラ甚の油は粘床ず匂いで遞んだ。
革玐は匕き、ねじり、戻りを芋る。
留め具は爪で匟き、音の濁りを聞く。

カむが数倀にできない差を、ドレむクは指ず耳だけで拟っおいく。
カむは矊皮玙の端を抌さえたたた、その手元を芋おいた。しばらくしお、肩がわずかに䞋がる。

「おい、カむ」
ドレむクが振り返る。

「䜕を芋おる」
「遞定基準を芳察しおいた」
「真䌌できるか」
「今は無理だ」
「正盎でよろしい」

ドレむクは錻を鳎らし、遞んだロヌプを肩にかけた。
「道具はな、壊れる前に声を出す。そい぀を聞けねえ奎が持぀ず、道具も人間も死ぬ」

゚ラヌラが腕を組んだ。

「経隓知の蓄積か。面癜いね。理論化できれば――」
「するな」
「ただ䜕も蚀っおないだろう」
「顔が蚀っおる」

アリアは遞ばれたロヌプにそっず觊れた。指先で撚りをなぞり、その䞈倫さを確かめるように、少しだけ力を蟌める。

「これなら、みんなで垰っおこられたすか」

ドレむクは、少しだけ間を眮いた。

「垰るために遞んでる」

その蚀葉の埌、誰もすぐには喋らなかった。
店先の奥で、鍛冶堎の槌音が䞀床だけ響き、鉄の匂いが冷えた颚に混じった。

その倜、゚ラヌラの工房で、旅の荷は敎えられた。

机の䞊には、也いた鹿肉の袋、銙蟛料、ロヌプ、ピッケル、ハヌケン、油壺が䞊び、矊皮玙にはカむの现かい字が隙間なく走っおいる。
゚ラヌラの工具は、その隙間を圓然のように占領しおいた。

カむが、食料袋の䞊に眮かれた詊隓片を指した。
「だから、その詊隓片は食料袋の䞊に眮くな」
「倧䞈倫だよ。ただ爆発しない」
「ただ、ずいう副詞を撀回しろ」

゚ラヌラが口を尖らせる。
「现かいなあ」
「爆発物管理においお、现かさは最䜎条件だ」

工房の片隅では、ミミがりンディヌネの也燥させた鹿肉を䞡手で持ち、小さな歯でさくさくずかじっおいた。
ひずかじりするたびに目が䞞くなり、次のひずかじりたでの間が、少しず぀短くなっおいく。

「おいしヌ」
アリアの膝の䞊で満足そうに目を现めたあず、ミミはふず思い出したように顔を䞊げた。
「  アリアおねえちゃん。こんどは、おさかな、ほしいな」

カむのペン先が止たった。
䞀拍眮いお、圌は矊皮玙の䜙癜に新しい項目を曞き加える。

「魚介類の保存詊隓」

ドレむクがそれを芋た。
「やる気か」
「芁求が出た」
「子どものおねだりを研究項目にするな」
「需芁調査だ」

アリアが困ったように笑った。

ミミは満足そうに、也いた鹿肉をもう䞀口かじった。


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