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新作「英之・昔の恋」08-09 (Hideyuki no koi) 2001年 新世界物語

    『昔の恋』のあらすじ
    二千一年、冬。大阪・新世界の居酒屋「雅子」に、夫婦がやってくる。 それは、店主・鈴木英之の大学時代の友人・田中と、三十年前に英之を捨てたかつての恋人・美子だった。
    教師を辞め、船場の大店の社長に収まり、絵に描いたような幸せを手に入れたはずの二人。しかし、平成不況の荒波と親族の裏切りにより、大店は三十億の負債を抱えて倒産寸前に追い込まれていた。
    激しい掴み合いの過去、引き裂かれた原因である「差別」、そして美子が秘めていた命の罰。 後日届いた一通の手紙が、三十年間逃げ続けてきた英之、そして偽りの幸せに縋っていた美子の心を、本当の意味で解放していく。

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    「そうでっか、でもお友達の方が心配しますよ、はよ戻ったらんと」

    「わかってるがな」
     雅子と英之が戻ってきた。田中と美子は固い表情のままだった。雨音が聞こえてきた。雨に濡れた路地がネオンで光っていた。向かいの飯屋の軒先で雨宿りをしている初老の男娼は恨めしそうに黒くなっていく空を見上げていた。中年の男が歩いてくる。男娼が声をかけると男は気味悪そうに遠ざかった。
     
     雨はまだ降り続けている。
     店の中は英之、田中、美子の三人だけになっていた。美子はうつむいたままだった。調理場から、店員の高子が出てきた。
    「雨がごっつう降るもんやさかい、お客さんみんな帰ってしまいはったわ」
     奥から雅子の声がする。
    「高ちゃん、あんた帰ってええで」
    「そやけど、まだかたづけがすんでませんけど」
     雅子が調理場から出てきた。
    「ええんや、今日はわたしがするさかい…」
     高子は雅子の真剣な表情に
    「はーい」
     と、急いで身支度を済ませ、出て行った。流れていた唄が終わった。雅子も椅子にかけた。雨音が再び聞こえてきた。田中が言った。
    「大学を辞めて、どこで暮らしてたんや」
    「しばらく日本中ぶらぶらしてたけどな。ここへ来て六年経つかな」

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    英之は高校時代に学園紛争に関わり、グループを組んで学内でのデモや授業ボイコットを行なった。「大学解体」と叫びながら、大学に進んだ。進学をあきらめたこともあったが、父母はなんとしても大学に行くように言った。学歴のない両親にとって、それは自分達の夢でもあった。アルバイトをしながら学生生活を続けたが、病気がちの父親を抱え家族を支えてきたのは二人の兄だった。
     灰皿の煙草の煙が、静かに立ち昇っていく。田中の顔を見ていると英之は三十年という歳月を実感できる。お互いに話し尽くせないものを抱え込んでいるに違いない。だから、田中と美子は英之を捜し当て、ここに来ざるを得なかった。田中が言った。
    「美子が、どうしても君に会いたいと…」
    「そんな…。謝らんとあかんのはわしや。二人の気持ちもわからんと。ほんまにあほやから」
     三人の様子を見ていた雅子が我慢できずに言った。
    「この人はいつもこんな言い方をするんです。なんでそうなんか奥さんを見ていてやっとわかった様な気がしますわ」
    「えっ?」
     美子は顔を上げて小さな声をあげた。

     
     
    1951年生まれです。現在75歳です。昔、書いていた小説を整理したいと思いブログを始めました。あきらめていたことが、どんどんできていけるような気がしています。geminiを利用しています。助かっています。AIと遊ぶのが楽しいです。

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