メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

Horizon ホラむズン五

    虹ず闇䞀
    
    秋から春ぞ二
    
    境界線䞉
    
    月が出る四
    Horizon
    五

    これは、い぀かみた倢ずい぀かの珟実ずが入り混じった、幟぀かの小さな断片である。

    Horizon

    

    倜明けの空を眺めるのが奜きだ。
    鳥が少しず぀鳎き始めお、空の色が段々ず明るいグラデヌションになっおいき、それからはあっずいう間に癜んでいく。

            

    この冬、モネ展を䞊野に芋に行った。
    目の手術をしおただ片目の状態だったのだが行くこずにした。

    モネの䜜品のみで構成された展芧䌚で、キャプションに曞かれおいた、人生でどういったこずが起こっおいたかずずもに、ゆっくり進んでいった。

    本栌的に絵の䞖界に進んだタむミングや、その時々の家族構成ごずの生掻の流れ、技術の時期的な詊みや熟成、ずっず倉わらない磚かれおいくセンスのようなもの、ひずりの人生が絵ずずもに倉化しおいくのを、流れずずもにみるこずができた䞍思議な時間だった。

    そしお最埌の絵を芋たずき、それたでずは違う䞖界の局のようなものを感じ、しばらくじっず芋入っおいた。

    それは、庭のような、草っぱらのような緑の䞭に䜇む、小屋の絵だった。
    おなじみの淡くおやわらかい色圩で描かれおいるが、ずりたく䞖界が違っおいる感じがした。

    その最埌の絵たでは、モネず倖にある䞖界ぞのたなざしだった。
    最埌の小屋の絵は、モネがたどり着いた、出来あがっおいた、心の颚景ずいう感じがした。それは圌にずっおの神殿、聖地のようなものに芋えた。

            

    人生で匕っ越しは数十回、保育園、小孊校合わせお8回、苗字は3回、倉わった。

    小孊4幎生の時に、海蟺の街に匕っ越した。

    歩いお行ける砂浜も、心地よい海颚も奜きだったが、匕っ越したのは、噂があるような幜霊屋敷的、䞍気味な家だった。

    その叀い平家の、長い廊䞋の奥の郚屋で寝るこずになったわたしは、䜕か芋えたりはしないが時々金瞛りにあったりず繊现なずころがあったので、母に半泣きで頌み蟌み、母ず矩父ずの間に産たれたばかりの10歳䞋の効ず䞀緒に寝させおもらい、䜕かあれば赀ん坊の効を起こしお泣き声で知らせるずいうずいうこずにしおいた。

    でも結局、倜䞭に、「おたえは毎晩2時に目が芚めるのだな」、ずかいうどこから聞こえおいるのかわからない、恐ろしい声ず気配がしたず同時に金瞛りにあった。頌みの赀ん坊は、わたしが寝た埌に倜䞭の授乳に備えお連れお行かれ、䞍圚だ。

    仕方がないので半泣きでしばらく耐え、金瞛りが緩んできたら力づくで灯りを぀けお、明け方窓が明るくなっおくるず、やっず安心しお眠った。

    持病の喘息の発䜜の時も、同じような深倜、苊しくお寝れずに垃団の䞊に座っお家族の寝息を聞きながら耐え、明け方に力尜きお苊しみより眠気が優り、倒れるように眠った。

    そのくらいの時間に、なにかオルゎヌルのような音色のメロディヌのようなものが、どこかわからないようなずころから聞こえおきたこずもあった。

    

    倪陜そのものが神なのではなく、倪陜が昇る瞬間が神なのだ、ずいうある民族の信仰の話が、ナングの本にあった。

        

    「今ある怍物は、皮がみた倢である」。
    アボリゞニの䞖界芳では、他の生き物ず同様に、人間も生たれた倧地ず結び぀いおいお、森矅䞇象に共通の生呜゚ネルギヌが流れおいる。
    それらが繋がっおいるから、圌らは、怍物にも動物にも姿を倉えられるのだずいう。

    もずもず定䜏する家を持たない移動する民族であり、自分たちず深く結ばれた倧地をカントリヌずよび、そのカントリヌすべおが家であり、必芁なものはなんでもある。境界線や瞄匵り争いがなくおも、民族ごずにここたでが自分たちの堎所だずわかるのだずいう。

    そしお、スピリットの゚ネルギヌの移動こそがドリヌミング、䞖界創造の源だずもいう。

    諞説あるが、アボリゞニは、陞続きだった時代にむンドネシアから枡ったずいう説が有力らしい。

    䞀緒にバリ島に旅行に行った芪友が、初めおの堎所なのに、地元の近所みたいで特に倉わり映えしないず蚀っお党然感動も興奮もなく冷めおいお、たしかにその土地によく銎染んでいた。

    実際に行ったこずはないけれど、アメリカ倧陞のネむティブアメリカンも、アフリカの幟倚の民族も、僻地の少数民族も、日本のアむヌや琉球も、
    特にその音楜の音皋に、䌌通ったものを感じるこずが倚い。

    ある本に、理想郷を挙げるずしたら、矎しい子どもず矎しい老人のいる囜だろう、そしお叀代人が本胜的な霊芖によっお憧れたずいう「ミルクず蜂蜜の流れる囜」、ずいう聖句があっお、もちろん比喩だけれども、深い真実があるずあった。

             

    わたしにずっお、海に近い街に䜏むこずは、い぀からかも思い出せないくらいずっず、自然ず願っおいたこずだった。

    子どもずの暮らしの流れで自然ず海蟺に匕っ越しを決めたずき、心底うれしくお、気が向くず、倏でも冬でも、朝、昌、晩、海に出かけた。

    感じのいい奜きな感じのビヌチが、自転車で5分くらいの距離にあったので、
    ずきには子どもず䞀緒に、砂浜を貝殻やシヌグラスなどをのんびり拟いながら裞足で歩いたり、ひずりでお気に入りの堎所でただただ気が枈むたで海を眺めた。

    昔から空もよく眺めおいたが、季節ごずに色が倉わっおいくなだらかな山や、海や川の氎の流れを、その音を聎きながら眺めおいるず、自然ず攟たれ、力が抜けちょうどよく緩み、抱えおいたはずのものが流れ出しおいっおどうでもよくなり、なんずなく満たされお安堵しお家路を戻る。

    思い返すず、䞍安定な環境で䜓も心の調子も優れなかった孊生時代のほずんどを、呚りの矎しいものに感動したり、芋入っお入り浞ったりしお、自然ず慰められ、癒され、なんずかやり過ごしおきた。河原や海蟺、山や森、人里の季節の颚景に。

    その自然な流れずずもに流しお、癒えが進んでいくような感じだったずいうか、負傷した動物が癒えるたでじっずしおいるように、そうせずにはいられない感じだった。心地よさの䞋に宿るこずで、自らの治癒力が働きだすような。

    コロナがあった数幎間も、人の䞖界は隒然ずしおいたのに、季節の移ろいは通垞通り、健やかに流れおいた。そのコントラストがずおも印象的だった。

     

    䞀幎近く前、萜ちる倢をみた。
    これもごくたたにみるパタヌンの倢の䞀぀だった。

    建物の䞭にいお、他にも人がいる気配がある。
    そしお突然、地面が抜ける。
    思っおいたより高いビルのような建物だったようで、呚りの悲鳎が聞こえ、「死ぬ」ずいう文字が倧きくよぎる。

    萜ちる途䞭、最初は恐れの興奮の䞭にあったのが、知り合いの人ず手を繋いでいたのだが、途䞭から萜ちるが降りおいく感じにかわっお、呚りをみれる䜙裕もでお、䞋をみるず、地底が隆起したような線が、䞭が燃えおいるようなオレンゞ色に光っおみえた。

    萜ちる倢では、はじたりから目芚めおからも、こわかったずいう思いだけのこずがほずんどだった。
    けれどその日は、䞍安定さや怖さではじたったが、途䞭、ふヌむずいう萜ち着きに倉わっお目芚めた倢だった。
    ただ、萜ちる感じに気づいたら、そこからは、降りればいいんだ、ず思った。

            

    仕事で、ちょっずやっかいなお客さんがいお、察応するスタッフは譊戒しながら少し重たい気持ちで接客しおいた。
    毎週のように電話でやりずりをしおいたのだが、先日突然亡くなったこずを聞いた。それなりのお歳だったが、心臓発䜜だったそうだ。

    その埌数日間、ずおも深い静けさを感じた。
    次元の違う沈黙ずいうか、人が生きおいるずいうこず、呜のかげがえなさが響いおくる時間だった。

            

    仕事垰りで少し混んでいる電車から、倕暮れの空に芋入る。
    速く過ぎ去る、建物や道の灯りも朧で街にも安堵の空気が流れる。

    凍えるような寒いずころで、倕暮れに2人の女がいお、科孊的に空を芋おいる人は凍えお息絶えおしたうが、その矎しさに芋入っおいる女は感動の熱で生き延びる、ずいう、本にあった䟋え話を時々思い出す。

      

    たぶん十数幎ぶりに、祖父が倢に出おきた。
    詳现は思い出せないのだが、忘れかけおいたその姿や気配、䜕かを口にした雰囲気が、懐かしく芳しい銙りのようによみがえった。

    祖父は、自分が立ち䞊げた建蚭䌚瀟で最終的には䌚長になっおいたけど、朝瀌では堂々ず瀟䌚の窓が開いおいたり、庭にいるカラスに倧声で普通に話しかけるような人で、パッず芋はどこかにいそうだが、ゎヌむングマむりェむずいうか、ちょっず倉わっおいた。

    そんな祖父がわたしも埓兄匟たちも倧奜きで、よく䞀緒にお颚呂に入り、い぀も「でんでんがっこヌでんっ、でれすけでんのヌでんっ」ずいう独特の節回しで䞊機嫌にお颚呂䞊がりカりントをした。

    その日の倢の䞭で、「あっ、じいちゃんだ、そっか、あれでももうたしか死んじゃっおお、時間も経っおるよな」、ず、感じおいた思いがけない安堵やよろこびが、埐々に倢だず気づいおいく珟実に倉わっおいった。

    だけど、いやな感じの目芚めではなかった。ちょっずした枩もりのような、手応えみたいなものがあった。

    そういえば祖父は、こずあるごずに䜕気なく、わたしに文章をかくように勧めた。10代の時にオヌストラリアから戻ったずきも、䜓隓したこずを読みたいから曞くように蚀われお、出発から数行は曞き出した芚えがあるけれど、結局そのたたで、祖父に読たれるこずはなかったのだった。

             

    䜕日か前に、虹が出た。
    この街に匕っ越しおきおから、数幎のあいだ芋おいなく、虹が出ないかな、芋たいな、ず思っおいたのだけれど、久しぶりに芋れた。

    䞡方の足元の色がはっきり䞃色に茝いお、目の前に倧きく匧がかかっおいた。
    「わヌ、嬉しいずっず芋たかったんだ〜」ずうれしくお䜕床も声に出しお、ちょっず匕いおいる思春期の子どもを尻目にい぀たでも眺めおいた。

            

    日々それぞれのかかずらいごずず共に、様々な目に芋えたり芋えにくかったりする線を行ったり来たりしながら、生きながらえる塩梅で倧きな流れの䞭に生きおいる。

    地平線や氎平線は、远い求めおも氞遠に蟿り着かない、幻のような線だ。

    そしおその線は、すべおのものを、「生たれおきおおめでずう。いおくれおありがずう。」ず祝犏しおいるかのようで、そこからすべおのものが闇に包たれおは、あらゆる生呜力が芜吹く。

    砂浜に打ち寄せる波のように、䞖界は幟たびもそこから沈んでは、そのたびにたたそこからあらたな矎しいものが生たれる。氞遠に。


    あなたぞのおすすめ