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食堂で「これは私の席!」大合戦|介護施設のリアルと認知症ケアの深い学び

介護施設の食堂――そこは、一日の始まりと終わりを迎える**「暮らしの中心」です。
食事は多くの利用者さんにとって
最も楽しみな時間**であり、
職員にとっても、健康と笑顔を支える大切な役割を担う時間です。

しかし、その穏やかな時間が、
一瞬で緊張と混乱に包まれる瞬間があるのをご存じでしょうか。

そのきっかけは、とても小さな一言から始まります。

「ここは私の席だ!」

この一言が、食堂を小さな戦場に変えてしまうのです――。


【現場ドキュメント】ある日の朝食前、食堂で起きたこと

午前7時45分。
炊き立てのごはんと味噌汁の香りが漂う食堂。
スタッフは順番に声をかけながら、利用者さんを食堂に案内していきます。

そのとき――

「ここは私の席だ!」
「いや、そこは私がいつも座っているんだよ!」

突然、二人の入居者さんの声がぶつかり合いました。

一瞬で場の空気が張りつめ、
他の利用者さんは箸を持つ手を止め、不安そうな表情に。

スタッフが慌てて駆け寄り、やさしく声をかけます。

「○○さん、□□さん、落ち着きましょう。こちらに座りましょうね」

しかし感情は高ぶったまま。
「絶対に譲らない!」という思いがぶつかり合い、
最終的には4人のスタッフがかりでようやく調整完了。

朝から食堂はピリピリとした空気に包まれてしまいました。


なぜ「席」にこだわるのか?

外から見れば、たかが席の問題に思えるかもしれません。
しかし、この行動には認知症特有の心理と記憶のメカニズムが関わっています。


1. 安心できる「自分の居場所」を守りたい

認知症が進行すると、時間や場所の感覚が曖昧になります。
「ここはどこ?」「私は何をしていた?」という不安が常に生まれる状態です。

その中で、

「いつもの席に座ること」が、安心感を生む習慣

となります。
人が行きつけのカフェや家の定位置に座るとホッとする感覚に似ています。


2. 昔の家庭習慣が残っている

昔の日本の家庭では「お父さんの席」「お母さんの席」が決まっていました。
その記憶が強く残っていると、施設でも無意識に**「ここが自分の席」という意識**が働きます。


3. 席を取られる=自分を否定された感覚

認知症の方にとって、自分の席は単なる場所ではなく自分の存在の象徴です。
そのため「席を奪われた」という出来事は、

「自分自身を否定された」

と感じるほどの衝撃になります。
これが怒りや悲しみを呼び起こし、感情の爆発につながるのです。


現場で実践している3つの予防策

施設スタッフは、このような衝突を未然に防ぐため、日々さまざまな工夫を行っています。


① 名前札・写真札で「視覚的にわかりやすく」

テーブルに大きな名前札や本人の写真を置き、
一目で「自分の席」だとわかるようにします。


② 席を固定化

朝・昼・夕すべて同じ席に固定することで、混乱を防ぎます。
スタッフ間でも「この席は○○さん」という共通認識を持てるため、
介助がスムーズになり、本人も安心して過ごせます。


③ 先回りして声かけ

トラブルが起きる前に、スタッフが早めに声をかけます。

「○○さん、今日もこちらの席をご用意しましたよ」

先に案内することで安心感を与え、衝突を予防します。


トラブル発生時の対応法

どんなに工夫しても、衝突がゼロになることはありません。
そのときに大切なのは――

「誰が正しいか」を決めないこと。


❌ NG対応

「○○さんが間違っています!」
「□□さんの席だから譲りましょう!」

これはどちらかを否定することになり、さらに感情をこじらせます。


⭕ 良い対応

「お二人ともこの席が好きなんですね。□□さんは今日はこっちの席にしましょうか」

双方の気持ちを認めつつ、自然に誘導する声かけが大切です。


家族ができる3つの確認ポイント

家族もこの「席トラブル」を知っておくと、施設との連携がスムーズになります。

  1. 席が固定されているか?

  2. 名前札や写真札が適切に使われているか?

  3. 職員の声かけが穏やかで安心できるか?

面会時にこれらを確認すると、施設の対応レベルがわかります。


現場スタッフの本音

正直に言えば、私たち介護職員も心の中ではこう思うことがあります。

「ああ、また始まったか……」
「どうして毎日同じことで争うんだろう」

それでも、私たちはこう自分に言い聞かせます。

席へのこだわりは、その人が安心して生きてきた証。
だからこそ、笑顔で受け止めたい。

この気持ちが、介護を続ける原動力になっています。


まとめ|席トラブルは「安心の証」

席のこだわりは、本人にとって「自分の居場所」を守る行動です。
それは困った行動ではなく、生きる力の表れでもあります。

スタッフや家族がその気持ちを理解し、
否定せずに寄り添うことで、本人も安心して過ごせるようになります。

席を守ること=その人の人生を尊重すること。

この視点を持つことが、認知症ケアの第一歩です。


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とね|介護施設選びと費用 この記事が介護に関わる方のヒントや支えになれば幸いです。 今後も現場の経験をもとに、わかりやすく実用的な内容を発信していきます。 よろしければ「スキ」や「サポート」で応援いただけると嬉しいです。