自動名前スタンプ、再び

「えっ、最悪。なんでこんなに汚れてんの」
ニンゲンが目にしたのは、キッチンの惨状。
壁に張り付いたドロドロ生地の跡や、床に転がったポップコーンの種やキッチンの小物たち。
「せっかく、眠ってちょっとスッキリしたのになぁ……」
大きなため息をついて、キッチンをぼんやりと眺めます。小窓のカーテンが夜風にゆらゆらと揺れていました。
「あっ.....
閉め忘れてた.....あいつだ。」
慌てて小窓に駆け寄ったニンゲンは、昔、そこから突然侵入してきた野良猫との格闘シーンを思い出し、顔をしかめたり歪めたり。
「それどころか、大事な預かり物にジャムの足跡まで残していったんだ!あの後どんだけ謝ったか....」顔がみるみる林檎のように紅潮していきます。
「うっかりしてたー。元気だな相変わらず」
ふと台を見ると、そこにはメルティーツたちが運んだ、あの古いレシピ帳。
「あれ?この本懐かしい」
少しの間、時が止まったかのようにじっと見つめます。
「字汚いなぁ。」
自分で書いたメモを指でなぞりながら、頬が少し上がりました。
「......まぁ、なんとか...なったよね」
「聞いた? あのニンゲン、“なんとか”って。新しい名前だ!」
化石のように固まっていたゴーストたちは、安心でドロドロと元のようにとろけ始めました。
「もうダメだと思ったけど、よかった!」
「なんと課っていう新しい役割、どんな係なのかなぁ」
「とにかく、これでキッチンは元通りになる!作戦成功だ!」
ペキっ
「あっ何か踏んだ。
....これって」
それは、爆発して床に転がっていた夢の化石のカケラでした。
それを拾い上げると、冷蔵庫を開けてもないのに、冷気の気配が漂いました。ニンゲンの足元から、じわりと床が湿っていきます。
「嘘だ....戻ってきた。あの湿気が」
チッピーの声は、音になっていませんでした。
ニンゲンの背後には、巨大なスタンプの影がモクモクと立ち昇っていました。
次回へ続く
