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フランスとインド、食の引き算と足し算|ジャンボン・ブールとナン・カレー


著作権研究家 原研吾です。

今日は少しだけフランス語を習った経験からいつもと違ったnote記事を書いてみたいと思います。

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旅の記憶は、いつも鼻と舌から戻ってくる。
硬くて香ばしいバゲット(baguette)の歯ごたえ。強烈で怪しいスパイスの匂い。

おしゃれなフランス(France)と、熱くて騒がしいインド。
正反対に見えるのに、僕の心をつかんで離さないところは、不思議とよく似ている。

今日は、僕が愛する「フランスの引き算」と「インドの足し算」の話を書いてみる。

1. パンとバターとハム。それだけでパリは美味しい


コレは糸島のパンあんこ入りです。美味い。


ジャンボン・ブール(jambon-beurre)という食べ物がある。
直訳すれば、ただの「ハム・バター」。

バゲットにたっぷりのバター(beurre)を塗り、薄いハム(jambon)を挟むだけ。
レタスもトマトもいない。
三つの素材だけの、潔いサンドウィッチだ。

パリ(Paris)の街角のパン屋(boulangerie)で買って、広場のベンチでかぶりつく。
外はカリッ、中はもっちり。
バターのコクに、ハムの塩気が追いかけてくる。

「これで、充分じゃないか」

良い素材があれば、飾りはいらない。
ごまかしの効かない三つで勝負する。
これがフランスの引き算の美学だ。

夕方には、深い赤のサンテミリオン(Saint-Émilion)を一杯。
渋みと重みが、口の中の脂を静かに洗い流してくれる。

綺麗なパリの裏側には、素朴で頑固な「本物」を愛する文化が息づいている。

……と、格好つけていたら、僕の中の別の自分が叫び出す。

「そろそろ、熱くて辛いやつをくれ!」

2. 若き日の憧れと、近所のネパール人

インドカレーではありません。でも美味しい。

インドは、まだ何者でもなかった頃の僕が、強く憧れた国だ。
あやしくて、ごちゃごちゃしていて、人間の原点がそこにある気がした。

その憧れは、今、僕の胃袋をがっちり掴んでいる。

どうしてもカレーが食べたい夜は、吸い寄せられるように地元のカレー屋へ。

重い扉を開けると、黄色いスパイスの香りが迎えてくれる。
窯から出たナンは顔より大きく、熱く、甘い油が光っている。

濃厚なカレーをたっぷりつけて頬張る瞬間は、まさに至福だ。


ここで面白い話がひとつ。
「本格インド料理」の店でナンを焼いている人の多くは、実はネパール人だったりする。

昔は「ナンだ、インド人じゃないのか」と思ったこともあった。でも今は違う。
遠い国から来て、狭い厨房で真面目にスパイスと向き合い、日本人好みのふっくら甘いナンを焼いてくれる。
愛おしい職人たちだ。

スパイスを秘密の調合で組み合わせ、油での化学反応を体得した職人が仕上げる。

フランスが引き算なら、こちらは間違いなく足し算の美味しさだ。

3. 言葉も外交も、実は「したたか」なふたり


冷たいサンドウィッチと、熱いスパイスカレー。
この二つの国には、意外な共通点がある。

フランス語(français)とインドの古い言葉は、大昔にひとつの言葉から枝分かれした遠い親戚らしい。
「ボンジュール(Bonjour)」と「ナマステ(Namaste)」も、はるか昔までたどれば、同じ根っこにつながっているのかもしれない。


もうひとつ。
どちらの国も、自分軸がしたたかだ。

国際政治の場でも、大国の言いなりにはならない。
誇りと利益を守るために、賢く、粘り強く立ち回る。

バゲットの「ハムとバターだけで、何か文句ある?(Et alors ?)」という頑固さ。
スパイスを重ねて神秘的な世界をつくるカレーの強さ。

どちらも、誰にも流されない「強いこだわり」がある。だから格好いい。


4. 人生には、きれいな味も、濃い味も


静かなカフェで、赤ワインと噛みしめるシンプルなパン。
賑やかな店で、熱いナンと味わう濃いカレー。

どちらが好き?と聞かれたら、選べない。

澄んだものに憧れる日もあれば、濃くて熱いエネルギーが欲しい日もある。

人間には、きっと両方の時間が必要なのだ。

今夜も僕は、フランス語のテキストを開きながら、頭のどこかで考えている。
「今日は、あの店で辛いマトンカレーにしようか」

食とロマンの旅は、まだまだ終わらない。
Bon appétit !
        Et à bientôt!


最後まで読んで頂きありがとうございます。
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補足)
フランス語は市民講座で長崎外国語大学の名誉教授 阿南 婦美代 先生に学び、同校のフランス人先生から楽しく学ばせて頂いたことを思い出します。因みに阿南先生はフランス共和国から勲章も授与された有名な方だと随分後に知ったのです。
そう言えば、HERMESのバックをクタクタになるまで使い込んで使ってられた気がします。

https://researchmap.jp/read0177073/awards/1505318

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