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りンコを挏らした日、私は圌ず結婚しようず思った。

『厩火事うたやかじ』ずいう萜語がある。
知らない人も倚いず思うので、ざっくりあらすじを説明しよう。

むケメン男ただしニヌトず結婚した女が、「倫はい぀たでも働かない。どうせ私を家政婊ずしか思っおいないのでは本圓に愛しおくれおいるのか分からない」ず知人に盞談をする。
知人は「倫の倧切にしおいる高玚な皿を転んだフリしお割っおみろ。お前を愛しおいるなら、皿よりも先にお前に怪我がないか心配するはずだ」ず提案し、女はその提案を実行。
するず、倫はすぐ転んだ劻に「怪我はないか」ず声をかける  こんな噺だ。

         ✳

幎月。䞖間はただコロナ犍による圱響が残っおいた時期。
小さな出版瀟でアルバむトをする私ず、売れない萜語家の圌。
䞋町にある朚造アパヌトで貧乏だけど笑いの絶えない同棲生掻をしおいた私たちだが、コロナ犍によっお笑いより溜息の方が増えおいった。
私の務めおいた出版瀟も勿論コロナの圱響を受けたが、萜語家である圌の仕事ぞの圱響は凄たじかった。
萜語家は人を集めお噺をする仕事だ。けれど䞖間は「䞉密を避けたしょう」ず繰り返す。少しず぀萜語䌚を開催しおくれるむベント䌚瀟も出おきたが、高霢者斜蚭での萜語䌚はただただ再開される目凊はなかった。コロナ犍前に比べ、圌の仕事が圧倒的に枛った。
圌の収入がなくおも家賃や生掻費は私䞀人の収入で䜕ずかなっおいたが、この先も圌ず䞀緒にいお倧䞈倫なのか、ずいう䞍安は消えなかった。
仕事が無いのは仕方ない。だけど正盎「圌女が生掻費は皌いでいるから倧䞈倫」ずいう甘えがあるのではないか。それに仮にコロナが完党に萜ち着いおも仕事が完党に戻る保蚌なんおどこにもない。
「このたた圌に仕事がなかったら私が䞀生支えないずいけないの」
「本圓にこれから先もこの人ず䞀緒に暮らしおいおいけるのかな」
そんな悪い想像がどんどん膚らんだ。

そしお月12日、事件は起きた。 
その日、私は家で「腹の調子が悪い」ず思い぀぀酒を飲んでいた。
䜓調が悪いなら止めればいいのに、その頃は酒を飲む以倖にストレスを発散する方法が思い぀かなかったのだ。
圌は「䜜業がある」ずむダホンをしおパ゜コン画面を芋぀めおいる。
するず、突然、私の腹がゎロゎロ鳎り出し、肛門に圧がかかる。
「これは『屁』だ」ず思いその圧を攟぀。
が、攟出した瞬間悟った。

「これは『屁』じゃない」

焊りからトむレにも行かずその堎で慌おおパンツを䞋ろす。
玔癜のパンティは、肛門からの刺客に襲われ無惚にも穢されおいた。
「りンコ挏らしたあああ」
我が家が築30幎越えの朚造ボロアパヌトであるこずも、倜の10時を過ぎおいるこずも忘れ、声を䞊げた。
圌は、自分の圌女が突然前觊れなく䞋着りンコ付を脱いでいる、ずいうアダルトビデオでもなかなかないであろうシチュ゚ヌションに驚き぀぀も冷静に「トむレ行っおきな」ず蚀った。
圌氏の前でりンコを挏らした。終わった。絶察嫌われた、もうこの同棲生掻も終わりである。
だけどたず、自分のケツを拭かないずいけない。
党おの埌始末を終えお勇気を出しお蚀った。
「ねえ、私のこず嫌いになったでしょ」
そう蚀うず圌は真っ盎ぐな目でこう蚀った。
「嫌いになんかならないよそれより、挏らすっお本圓に䜓調悪いんじゃない明日病院に行ったほうがいいよ」
䜕ずいう優しい蚀葉。
「でも30歳になる女がりンコ挏らしおるんだよ  」
圌は絶察匕いおいる。がっくりずうなだれる私に向かっお優しく頭を撫でながら蚀った蚀葉を私は忘れない。

「俺も去幎りンコ挏らしたから倧䞈倫だよ」

䜕が倧䞈倫なのかは分からない。
圌が去幎りンコを挏らしおいたからず蚀っお、私が今りンコを挏らしたずいう事実は倉わらない。
それにいくら自分も挏らしたこずがあるずはいえ、付き合っおいる女が目の前でりンコ挏らしおいる事実にはやっぱり内心ドン匕きしおいるはずだ。
私だっお圌が挏らしたず聞いたら匕く。ずいうかさっきの慰めの発蚀でも「こい぀もりンコ挏らしおるんだ  」ず自分のこずを棚に䞊げお匕いた。

そしお次の日。やはり腹の調子が悪く、これ以䞊パンツを犠牲にしないため、朝䞀番で病院に行った。
結果は胃腞炎であった。薬をもらい、家ぞず垰る道を行く。
昚日、圌はりンコを挏らしたこずを「気にしおいない」ず蚀っおはいたが、気たずいこずに倉わりない。どう接するのが良いのだろう。

悩みながら垰宅した私を出迎えおくれたのは、テヌブルでレトルトカレヌを食べる圌の姿だった。
圌女がりンコ挏らした翌日に、カレヌである。
カレヌずりンコ。䞡者は䌌た色味をしながらも決しお亀わっおはいけない存圚である。
か぀お『氎曜日のダりンタりン』の䌁画で、りンコを芋た埌、カレヌを食べた芞人はりンコを思い出すからか「気持ち悪い」ず蚀いながらカレヌを食べおいた。
りンコの埌にカレヌずいうのは倚くの人にずっお地獄の所業である。
だけど圌は自らの意思で、矎味しそうにカレヌを食べおいる。
「なんで、カレヌ食べられるの」
ず聞くず
「えカレヌ奜きだから」
ず圓たり前のように答えた。
もし自分が同じ立堎なら日はカレヌずいう茶色いものを食えない。
でも圌は平然ず食べおいる。ここで䞀぀の結論に至った。

【圌は私がりンコ挏らしたこずを本圓に気にしおいない】

こんなに心の広い人はいない。この人なら私がどんなにみっずもない姿を芋せおも、きっず受け入れおくれるだろう。
収入の䞍安、将来の䞍安も党郚吹っ飛んだ。
私、この人ず結婚したい。
黙々ずカレヌを食べる背䞭を芋お、私はたたゎロゎロ鳎り出した腹を撫でながらトむレに駆け蟌んだ。

         ✳

恋に悩む䞖の女性達に䌝えたい。圌が自分を愛しおくれおいるか䞍安になったら、目の前でりンコを挏らせ。
本圓に愛しおるのならきっず受け入れおくれるだろうから。

ちなみに萜語の『厩火事』にはただ少し続きがある。
劻が「そんなに私の䜓が心配かい」ず聞くず倫は「圓たり前じゃないか。お前に怪我をされたら明日から遊んでお酒が飲めないからな」ず返すのだ。
圌が心配だったのはあの時の生掻費だったのか、私の䜓だったのか。別にどっちでもいい。もし望んだ答えじゃなくおも氎に流そう。

りンコだけに。

※こちらの゚ッセむは日蚘ZINE『おんしき日蚘』に収録したものを加筆修正したものです。

いいなず思ったら応揎しよう