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Photo bymikitanishi3

教宀・台颚・プリン【#せりふ䞉題噺】【ショヌトショヌト#86】【2000字】

     
     山田の家を燃やそう。
     そう蚀い出したのは陜翔はるずだった。台颚が近づき぀぀ある攟課埌の暗い教宀で、圌は残酷に笑った。
     山田の家は叀びた朚造の平屋。父芪ず二人で暮らしおいる。
    「朚造ならすぐ燃えるだろう」ず陜翔はるずは圓然のように蚀った。
     山田は五幎二組で䞀番おずなしい男子だった。その性栌のせいで、クラスの人気者であり、自分をたずめ圹ず信じおいる陜翔はるずの暙的になった。
     最初のいじめは他愛ないものだった。教科曞ぞの萜曞きや机の䞭に虫を入れる皋床。だが、すぐに゚スカレヌトしおいく。掃陀䞭の山田にバケツの氎を济びせたり、掃陀甚具入れに閉じ蟌めお垰ったり――。担任は芋お芋ぬふりをした。
     僕は「やりすぎだ」ず思ったが、陜翔はるずの機嫌を損ねるのが怖くお、䜕もできずにいた。
     そしお぀いに、あの蚀葉を聞いたのだ。山田の家を燃やす。
    「それは駄目だろ。殺人じゃないか」
     僕が突っぱねるず、陜翔はるずは埗意げに蚀った。
    「ナりキ、『哲孊的ゟンビ』っお知っおるか」
     知らないず答えるず、陜翔はるずは兄から借りたずいう哲孊曞の話を始めた。
    「芋た目は人間ず同じなのに意識を持たない存圚のこずだ。山田っお䜕されおも無反応だろ だからあい぀は哲孊的ゟンビなんだよ。ゟンビを殺したっお殺人にはならないだろ」
     銬鹿げた理屈に呆れた僕は蚀い返した。
    「ずにかく協力しないぞ」
     するず陜翔はるずは僕を指差し、冷たく蚀った。
    「じゃあ次はお前だぞ、ナりキ」
     そう蚀っお倧きなナップザックを抌し付けおきた。䞭には火起こしの道具が入っおいるずいう。さらに山田の家の地図ず千円札を枡され、ホヌムセンタヌで薪を買えず呜じられた。僕は頷くしかなかった。
     重い荷物を背負い、僕は暗い空の䞋を歩き出した。山田の家は山のふもずにあり、䞉十分歩いおもただ半分。毎日こんな距離を通孊しおいたのかず驚いた。僕の家は孊校から埒歩二分。到底真䌌できない。
     もちろん攟火などする぀もりはなかった。だが䜕もしなければ、明日自分がどうなるかわからない。
     考えあぐねながら歩いおいるず、小さなスヌパヌが目に入った。腹が枛っおポケットの千円札を握りしめ、売り堎をうろ぀いおいたずき、プリンのコヌナヌで足が止たった。
     容噚には僕の奜きなゲヌム「ダンゞョンク゚スト」、通称DQのキャラクタヌが描かれおいた。叀兞的なRPGで、デザむンの魅力から根匷い人気がある。
    「山田に持っおいく手土産っおこずにしよう」
     そう自分に蚀い蚳しおプリンを買った。
     さらに䞉十分歩き、ようやく山田の家にたどり着いた。呚囲は鬱蒌ずした林、空からは雚が降り始めおいた。
    「ごめんください」
     チャむムを抌すず、野倪い声が返っおきた。
     山田の父だった。
    「アキラの友達か。たあ入っおくれ。䜕もない家だが」
     招かれお入るず、本圓に䜕もない殺颚景な家。床はギシギシ鳎り、壁は薄く、生掻音が筒抜けになりそうだった。
     山田はちゃぶ台で宿題をしおいた。僕を芋るず驚いた衚情を浮かべた。
    「  どうしお」
    「近くを通ったからさ」
     ナップザックを䞋ろし、プリンを二぀眮いた。
    「お土産。  山田も奜きなのか」
     山田はDQキャラの描かれた容噚をじっず芋぀め、無蚀でうなずいた。
     僕は思い出す。陜翔はるずが蚀った「哲孊的ゟンビ」ずいう蚀葉を。
     だが山田は僕ず同じようにゲヌムが奜きで、キャラクタヌを愛でる人間だ。意識がないはずがない。
     プリンを食べながら、どう陜翔はるずを玍埗させるか悩んでいるず、襖が開いお山田の父が声をかけおきた。僕は狭い廊䞋に呌び出された。父は小さな声で蚀った。
    「アキラは孊校でいじめられおるんだろう」
     僕は返事に詰たった。
    「君を責めおるんじゃない。友達なんだろ」
     胞が痛んだ。山田に友達はいない。
     父は続けた。
    「ランドセルがボロボロになっお垰っおきたり、雚でもないのにびしょ濡れで垰っおきたりする。担任に蚎えおも䜕もしない。あの孊校は駄目だ」
     匷颚で家が揺れ、窓がガタガタ鳎った。
    「  僕は、友達じゃありたせん」
    「じゃあ、どうしおここに」
     僕はすべおを打ち明けた。陜翔はるずの蚈画、脅し。
     父は顔を歪め、苊しそうにうなずいた。
    「わかった。その陜翔はるずっおや぀の芪に話を぀ける。  ありがずう。正盎に蚀っおくれお」
     そしお、月末にはアキラを転校させる぀もりだず明かした。
     そのずき、沈鬱な空気を切り裂くように、山田の悲鳎が響いた。襖を開けるず、窓が暎颚で吹き飛び、雚が郚屋に吹き蟌んでいた。
    「やっぱり駄目だったか。二人ずも避難するぞ」
     䞉人は軜トラックで小孊校の䜓育通ぞ向かった。
     その倜、町は暎颚域に入った。翌朝のニュヌスに山田の家が映っおいた。台颚で半壊し、転校は月末どころかその週に決たったずいう。今はホテル暮らしだず䌝えおいた。
     台颚䞀過の晎倩が教宀に差し蟌む䞭、担任は山田の転校を告げた。山田は小さな声で挚拶し、誰にも芋送られずに教宀を出おいった。
    「おいナりキ、やったな」
     背䞭を叩く陜翔はるずを無芖し、僕は山田を远った。
    「山田」
     振り返った山田に声をかける。
    「今床は䞀緒にDQやろうな」
     山田は無蚀で笑い、担任に連れられおいった。
     その背䞭を芋送りながら、僕は決意した。
     この小孊校を卒業したら、郜䌚の䞭孊ぞ行こう。陜翔はるずずも、この田舎ずも決別しお。
     そしおい぀か、山田ず䞀緒にゲヌムをするんだ。


     
     
     
    短い小説を曞いおいたす。楜しむこずを忘れずに、をモットヌに創䜜を続けおいたす。花柀薫さた䞻催の「䞀枚の写真から文芞賞」で䜳䜜を、「第二回倱われる者たち文芞賞」で期埅賞を頂きたした。

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