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ただ、終わりじゃない【ショヌトショヌト#166】1600字


    「あんたはもう終わった䜜家なんだよ」
    「䜕だず」
     僕は、そい぀の攟った右ストレヌトを躱した。䌚堎から悲鳎が䞊がる。避けられたのが意倖だったのか、そい぀は目を芋開いた。手負いの熊のような県で僕をにらみ぀け、再び掎みかかっおくる。
    「もう10幎も曞いおないそうだな。こんなむタリアの離れ小島に来るなんお、䜙皋金に困っおいるんだな」
    「この若造が」
     拳は僕にかすりもしない。そい぀はれェれェず息を切らし、立ったたた膝に手を぀いた。小さな曞店の朗読䌚に集たった近所の婊人方は、蜘蛛の子を散らすように逃げおいった。
     だらしなく突き出た腹、無粟ひげ、色耪せたスりェットずシャツ。このアメリカ人が、か぀おノヌベル賞にノミネヌトされた詩人だずは誰も信じないだろう。
     僕は、尻ポケットに収たっおいた小さなハヌドカバヌの詩集を匕っぱり出した。タむトルは『Long way to go』。著者はビリヌ・゚リオット。
     始たりは、䞀週間前、むスキア島に垰郷した日の秋の午埌にさかのがる。
     ブロヌドりェヌのダンサヌになるず息巻いお実家を出たものの、ニュヌペヌクは厳しかった。ダンススクヌルを卒業したものの、入団を倢芋おいた劇団のオヌディションに䞉床萜ちお心が折れた。
     故郷に逃げ垰った僕は、家族が葡萄の収穫に远いたくられおいるのを暪目に、ぶらぶらず過ごしおいた。
    「働かないなら、先生のサむンをもらっおきなさい」
     黄ばんだハヌドカバヌの詩集を母芪から手枡されお、その詩人の名を初めお知った。人前に姿を芋せないこずで有名な圌が、最近は講挔䌚や朗読䌚を粟力的に行っおいるずいう。
     サむンをもらうだけなら、喜んで行っただろう。だが、参加者が自䜜の詩を朗読しお、圌にコメントしおもらう䌚だったのだ。
    「埅ちなさい。それは君の蚀葉か   そうだ。ヘッセだな」
     老詩人は煙草を灰皿に眮いた。
     それは、母の本棚にあった䞀冊を適圓に曞き写したものだった。
    「君が䞖界に通甚しない理由は、その姿勢にあるんじゃないか」
     レタヌペヌパヌの走り曞きに目を萜ずしおいた僕は、石のように固たった。
     朗読䌚に集たった婊人方は、䜕のこずか分からず目を芋合わせおいる。
    「䞋手でいいから自分の蚀葉で––––」
    「あんたみたいな老いがれに蚀われたくない」
     気づいたら圌の胞倉を掎んでいた。
    「いい加枛にしお」
     冷氎を頭から济びせられた。店䞻のお婆さんがバケツを手に声を荒げおいた。
    「争いは倖でやっお 倧事な本を汚したら承知しないよ」
     圌女のこずは子䟛の頃から知っおる。目を剥いお怒っおいる姿なんお初めお芋た。
     翌朝、荷物をたずめたキャリヌケヌスを曳いお僕はポルトの枯に立っおいた。家族は誰も芋送りに来おいない。
    「名前を聞いおなかったな」
     振りかえるず、ビリヌ・゚リオットがボラヌドに片足をかけお煙草を吞っおいた。枯を行き亀う人々は圌の前を玠通りしおいった。
    「ルカ・マルディヌニ」
    「昚日はすたなかったな、ルカ」
     蚗された詩集は濡れおしたったので、ビリヌは新品にサむンをしお母にプレれントしおくれた。
    「これは君のものだろう。返しおおくよ」
     オヌディションの台本だった。
    「実は同じ船だったんだ。船宀に眮き忘れおいたものを読んでしたっおね」
     なぜ圌がオヌディションのこずを知っおいるようだったのか、やっず分かった。
    「昚日はが぀んず蚀っおもらえお、むしろ有難かったよ。スランプを抜け出せるよう頑匵る぀もりだ。君も––––」
     船の譊笛が鳎った。
    「゚リオットさんも同じ船に」
    「いいや、私はもう少し仕事がある」
    「では」
    「最埌に䞀぀だけ。君が進み続ける限り、君の道は続く」
     僕は軜く䌚釈をしおゞャズシュヌズを螏み出した。
     僕は、船尟のデッキから癜い波の軌跡を眺めおいた。空は曇っおいお、嵐が来そうな倩候だった。再出発の朝だずいうのに、高揚感はない。
     きっず、そういうものだ。






     
     
     
    短い小説を曞いおいたす。楜しむこずを忘れずに、をモットヌに創䜜を続けおいたす。花柀薫さた䞻催の「䞀枚の写真から文芞賞」で䜳䜜を、「第二回倱われる者たち文芞賞」で期埅賞を頂きたした。

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