やっと逢えた・・・そんな恋をした
その恋は、何の予告もなしに訪れた。
そうあの日・・・足音さえせず、突然、私の前に。
彼は作曲をしていた。そして私は作詞。
お互いに、メジャーデビューなんて、遠い彼方かな・・・なんて頃。
彼の友人が作った曲に私が歌詞を書いて、予選を通過しあるコンクールに
出場していたとき。その会場に・・・彼が現れた。
彼は、黒のタートルに黒のコートを着ていた。
もみあげが長めの、ちょっと個性的な髪型。
こだわりを持っているヒトなのだな、と想った。
そして何の許可もなく・・・彼が、私の心に入って来た。
” 逢えた ” と想った瞬間だった。
彼の作るメロディは、繊細だった。
ひとつひとつの音が奏でる旋律は、異国情緒な、それでいて儚げな、
それまで私が出会った事のない、全くの新しい世界だった。
彼のメロディを聴いた途端、彼自身よりも曲の方が、私の心を支配した。
聴けば、私と同じ30歳ちょい過ぎ。ひとつお兄さんだった。
それから私たちは、色んな話をした。沢山。
彼の曲に私が詞を書いたり、私の詞に彼が曲をつけたり。
まるで逢えなかった時間のピースが、ひとつずつ埋まっていくようだった。
彼の音楽に対する想いや知識を、私は真っすぐに受け止めた。
私は彼のメロディに ” ぞっこん " だったけれど、彼が私の書く詞を
誉めてくれたことがないのは、シャクだったかな。
私は早くメジャーになりたくて、様々?なコンテストに応募したり、
レコーディングをしたりと、悪あがいていた。
でも彼は、マイペース。私がどんなに鼓舞しても、マイベース。
すれ違いに惑わされて、彼の影ばかり観てしまった頃もあった、かな。
それでも『 新曲を作っているんだ 』と彼の声を聴けば、
『 どんな曲?出来たら聴かせて!』と、彼の音楽に対する熱さを
応援することは忘れなかった。
そんなマイペースな彼。美しいメロディを生ませる彼。
自慢な彼。
プロの作曲家ではないけれど・・・
やっと逢えた、そんな恋をした・・・彼。
そう今、私の隣にいる ” 夫 ”
お読み頂き、ありがとうございました。
