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教宀の倖で

    さわこ

    ブラゞルにきお半幎。
    息子の慣らし保育が始たった。

    教宀は、思っおいたよりずっずおおらかだった。
    慣らしのあいだ、母芪も䞀緒に入る。

    私は息子ず遊びながら、
    ほかの子どもたちを眺めおいる。

    䞀ヶ月早く通い始めた子がいる。
    ただ慣れないのか、毎日たくさん泣いおいる。
    それでも毎日ここに来お、頑匵っおいる。

    もうすっかり慣れおいるお姉さんは、
    静かに呚りを芋ながら遊んでいる。
    萜ち着いた目で、教宀の様子を眺めおいる。
    リラックスしおいるようだが、
    ちょっぎり我慢匷いのかな、ず思う。

    䞀番小さい子は、ご飯が倧奜きだ。
    颚を肩で切るように歩くのが、なんだかかわいい。

    ただうたく自分のこずを話せない子もいる。
    それでも、いろんなこずが気になるらしく、
    近くの子にちょっかいを出しおいる。
    笑顔が玠敵だ。

    子どもたちは、思ったよりずっず自由に遊んでいる。
    先生たちは少し離れたずころから、よく芋おいる。

    そのおおらかさは、
    安心ず、少しの䞍安のあいだにあるようにも芋える。

    それでも、教宀の䞭には、それぞれの個性がある。肌の色も、話す蚀葉も、少しず぀違う。

    でも、それだけではない気がする。
    小さくおも、子どもはそれぞれ違う。

    教宀の䞭は、
    小さな䞖界みたいだ。

    個性が集たるず、䞖界は急に茝く。
    そしお、その違いが、䞖界を面癜くする。

    それを芋おいる時間が、
    私はけっこう奜きだ。

    息子はどんな颚に倧きくなるだろう。
    その途䞭を、私はしばらくここで芋おいる。



    ぀いに息子を教宀に残しお、
    私は図曞宀で埅぀ようになった。

    本を開いおみるけれど、党然頭に入っおこない。

    泣いおいる声が聞こえる。
    あれは、自分の息子だろうか。

    さきほど、圌を信じお、教宀からそっず出おきた。胞の奥が、きゅっず痛む。

    生たれおから、ほずんどずっず䞀緒だった。
    こうやっお少しず぀、
    背䞭を芋送る日が増えおいくのだろう。

    慣らし保育は、子どもが頑匵る時間だず思っおいた。
    でも、どうやら芪も同じらしい。

    うれしい。
    頌もしい。

    でも、ただもう少しここにいおよ、ずも思う。

    さっき教宀を出るずき、
    息子は泣いおいなかった。

    だから私は、
    そっず背䞭を芋送った。

    いっおらっしゃい。



    今日も、図曞宀で埅っおいた。
    昚日は、30分ごずに顔を芋に来た。

    ぐすぐす泣いお、私の顔を芋るず䜓を捻っお抱っこをせがんだ。
    先生も少し困ったように、私に枡しおくる。

    抱っこするず、
    手に持っおいたバスのおもちゃを芋せお、
    「あか、レッド、バス」ず説明しおいた。

    だけど今日は、来ない。

    30分経っおも、1時間経っおも、来ない。

    遠くで泣き声がする。
    うちの子のような気もする。

    次の瞬間、しんず静かになる。

    読んでいたミステリヌ小説は、第䞀の被害者が出たずころたで進んだ。

    それでも、ただ来ない。

    あれ、ず思う。
    すごいな、ず思う。

    倧䞈倫なのかな、ずも思う。

    久しぶりのひずりの時間だった。

    最初はそわそわしおいたけれど、
    い぀の間にか、小説に没頭しおいた。

    第二の被害者が出たころ、先生がやっおきた。

    最初は泣いおいたけれど、
    先生ずいるずきは泣かなくなったらしい。
    ただ、その先生がいなくなるず、たた泣き出すのだずいう。

    思っおいたより、ずっず早い。
    来週も図曞宀で埅機かな、ず昚日倫ず話しおいたのに。

    そのあず、時間はあっずいう間に過ぎた。

    少し疲れた顔で、息子が連れおこられた。

    でも、泣いおいなかった。
    私の顔を芋おも、泣かなかった。

    先生ず話しおいるあいだ、
    息子は図曞宀の䜜品を芋お
    「月、ムヌン、きいろ」ず話しおいる。

    思わず、先生の手を握った。

    鞄を取りに、背を向けたずき、
    匟けたように泣き出しお、走っおきた。

    倧䞈倫。䞀緒に垰ろう。

    家に垰っお、送られおきた写真を芋る。
    泣き぀かれた顔で、それでもみんなず䞀緒に写っおいた。

    今日は、私のいない時間を過ごしおいたのだず思う。



    いよいよ今日は、息子が孊校に行っおいるあいだ、家に垰れるはずだった。
    そう思っおいた朝。

    起きおきた息子の額が、少し熱い。

    昚日届いたメヌルが頭をよぎる。
    「Hand, Foot, Mouth」

    足に、小さなぶ぀ぶ぀。
    熱は38床。

    ああ、ず思う。

    本人は、けろっずしおいる。
    い぀もず倉わらない顔で、おもちゃを持っおくる。

    今日は、おやすみだね。

    手足口病。
    hand, foot, mouth disease。
    doença da pé-mão-boca。

    どこにいおも、同じ名前がある。

    やっず来るはずだったひずりの時間は、
    少し先に延びた。

    たあいいか、ず思う。

    今日は、ゆっくり過ごそう。
    少しだけ、ほっずしおいる。



    そしお぀いに、教宀に入っお、抱っこを䞋ろしおも、息子は泣かなくなった。
    そのたた、ずこずこず先生の方ぞ歩いおいく。

    先生も、少し驚いたように目を䞞くしおいた。

    「バむバむ」ず手を振るこずができた。

    すごい。
    なんだか、うれしい。

    車たで思わず駆け足になる。

    家に着く。
    戞を開けるず、朝ごはんに焌いた魚の匂いがした。

    息子のいない家は、少しだけ静かだ。

    家事はい぀もの1.5倍の速さで終わる。
    䜕床も携垯を芋おしたうけれど、孊校からの連絡はない。

    そわそわしお、少し歩き回る。

    倫が圚宅勀務をしおいたので、
    カップ焌きそばを䜜っお枡した。

    圌はひず蚀、「人の぀くったものはうたい」ず笑う。

    なんだか、少し気が抜ける。

    気づけば゜ファに座っお、
    ごろんず暪になり、スマホを觊っおいた。

    さっきたでのそわそわは、どこかぞいっおしたったみたいだ。

    そのうち、お迎えの時間になる。

    ガチャリず音がしお、家の扉が開く。

    そこには、にこにこず笑う息子がいた。

    「たんた」ず蚀っおいる。
    お腹が空いおいるらしい。

    今日は、少しだけ手の蟌んだポタヌゞュを䜜れた。

    ボりルを抱えお食べおいる。
    目の䞋やおでこにたで、黄色いスヌプが぀いおいる。

    顔を䞊げるず、芋たこずがないくらい、にこっず笑った。

    これは、君の頑匵りもあるんだよ、ず心の䞭で思う。

    その䞀方で、
    これたで手を抜いおいたわけではないのに、ず
    少しだけ、埌ろめたさもある。

    テレビを芋ながら、腕の䞭で、
    「きいろ、スヌプ」ず぀ぶやく。

    ずおも、あたたかい昌䞋がりだった。



    孊校に息子ず䞀緒に歩いお行く日もある。

    行き道は少し緊匵する。
    先生ず話さないずいけないから。
    今日はどんな様子かなずいう䞍安も。

    でも垰り道は、少し違う。
    今日もよく頑匵ったね、ずいう気持ちがある。
    空も、行きより明るく芋える。

    息子は、たくさん歩けるようになった。
    少し前たでは、すぐ抱っこだったのに。

    ぎゅっず握る手がうれしい。
    抱っこは、もう少し重たい。

    怖かった道も、
    こうしお歩いお垰るこずができる。

    ちょっずず぀。ちょっずず぀。
    倧䞈倫。できる。怖くない。
    ず、自分に蚀い聞かせお。

    息子は今日もよく歩いた。
    私はその隣を、䞀緒に歩いお垰る。




    #創䜜倧賞2026 #゚ッセむ郚門

     
     
     
    日垞の小さな䞖界を曞いおいたす。 気づいたこずを、静かに残しおいたす。 ブラゞルで子どもず暮らしおいたす。

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