
噓時代シリーズ・ある作家と編集者―いとおかし(くない)―
編集「〝春はあけぼの〟いいですねえこの出だし。ぽかぽかと温かい雰囲気が出ていますよ」
作家「そうですか」
編集「でも続きの〝やうやう白く〟ってここ、ちょっと弱くないですかね?」
作家「……はあ」
編集「もうちょっと勢いにのったリズムで〝やあやあ〟とかでもいいんじゃないですか?」
作家「は?」
編集「せっかく先生もデビューして勢いがあるんですから。表現のほうもちょっと変えてみたりとかしてもいいんじゃないですかね?」
作家「いや無理です」
編集「そんなことは言わずに。それにイ〇ス〇や〇で宣伝するにしたって、その方が注目されやすいかもしれないじゃないですか?」
作家「それは……そうかもしれませんけど……」
編集「それじゃあ〝ようよう白く〟や〝へいへい白く〟とか?」
作家「いい加減にしてください! それじゃあ私ではなくなってしまいます!!
…………もう結構です。そんなにしつこく表現を変えろとおっしゃるなら、こちらにも考えがございます。今日のところは、どうぞお引き取りください」
編集「いやすいません……でも〝しつこく〟って、そんなつもりはないですから。私はもっと良くなるようにただ提案を――」
作家「――もう帰ってください!!」
編集「……わかりました。そうしますね…………あ、でも今の地味目より陽キャな感じのほう――」
作家「帰れ!!!」
作家 : 清少納言
編集 : 詠み人知らず
