好きなものだけ。 #04母になっても好きでいたいもの
母になってから、自分のことを考える時間が少なくなった。
朝、子どもが起きた瞬間から、慌ただしい一日が始まる。
食事の準備をして、送り出し、仕事をして、帰宅すればまた家のことが待っている。
気づけば夜になっている。
そんな日も少なくない。
子どもが生まれたばかりの頃、私は少し焦っていた。
生活が大きく変わり、まとまった時間が取れなくなったからだ。
けれど今振り返ると、本当に不安だったのは時間がなくなることだけではなかった。
自分が何を好きだったのか、わからなくなってしまいそうだったのだと思う。
展覧会へ行くこと。
本を読むこと。
美しいものに触れること。
そうした時間が好きだった。
どれも特別なことではない。
けれど、その小さな「好き」が積み重なって、私という人間をつくっていた。

子育ては、自分より大切な存在と出会うことだ。
だから自然と優先順位は変わる。
以前と同じようには過ごせない。
思い通りにならないことも増える。
以前は、好きなものが当たり前に日常の中にあった。
だから、それがどれほど大切なものか考えたことがなかった。
けれど自由な時間が少なくなって初めて、
私は展覧会へ行く時間や、本を読む時間を失いたくないと思っている自分に気づいた。
それらは生活に必要なものではない。
育児の役に立つわけでもないし、家事が早く終わるわけでもない。
けれど私にとっては、自分が何を好きなのかを思い出させてくれる大切な時間だった。
以前、美術館で小さな子どもを連れた母親を見かけたことがある。
母親は何度も足を止められ、ゆっくり作品を見ることはできていなかった。
それでも、その人は好きな場所へ足を運ぶことをやめなかった。
なぜか、その光景がずっと心に残っている。
私もまた、そうでありたいと思った。
そして子どもにも、自分だけの「好き」を見つけてほしいと思う。
何かを上手にできることよりも、
何かに心を動かされること。
夢中になれるものがあること。
大切にしたいと思えるものがあること。
だから私は、子どもに何かを教えたいというより、
好きなものを大切にする姿を見せたいと思う。
もちろん現実はそんなに綺麗ではない。
毎日忙しいし、自分の時間なんてほとんどない。
展覧会へ行けない月もある。
本を開かずに終わる日もある。
それでもいい。
大切なのは、忘れないことだから。
好きなものは、自分を自分でいさせてくれる。
年齢を重ねても。
環境が変わっても。
母になっても。
子どもに残したいのは、好きなものを大切にする生き方。
いいなと思ったら応援しよう!
これからも頑張ります!