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60代、AIと一緒に資格の勉強をしてみたら、意外と悪くなかった話

    退職してから、また勉強を始めた

    定年まで数年を残して早期退職を選んだのは、仕事が嫌になったからではありません。保険の実務に長く携わってきて、それなりにやり切った感があった。それよりも、もう少しゆっくり生きてみたかった。そういう選択でした。

    退職後しばらくして、FP2級の勉強を始めました。在職中に身につけた知識を体系化しておきたいという気持ちがあったのと、せっかく時間ができたのだから何か形に残るものを、という気持ちも少しあったと思います。この歳での挑戦でしたが、幸いにも躓くことなく、無事に合格できました。実務経験があるというのは、やはり大きかったです。

    2級を取ってからも、税制や社会保障の制度改正があるたびに内容を追いかけていました。特に目的があるわけではなく、習慣として続けていたという感じです。そうしているうちに60代になり、時間的な余裕がさらに増えてきた。それで、思い切って上位資格へのステップアップを目指して勉強を再開しました。

    今回の勉強で、これまでとはっきり違うのがひとつあります。AIをかなり積極的に使っている、ということです。

    AIを使い始めたのは、60歳を迎えたころから

    正直に言うと、退職前もFP2級の勉強中も、AIはほとんど使っていませんでした。当時はそこまで身近なものという感覚がなく、積極的に触れようとも思っていなかった。

    変わったのは60歳を迎えたころです。周りでAIを使っている人の話を聞く機会が増え、試しに使ってみたのがきっかけでした。最初はちょっとした調べ物の補助として。「この制度の概要を教えて」「この言葉をわかりやすく説明して」という程度の使い方です。それでも、検索とは違う手応えを感じました。こちらの言葉に応じて返してくれる、という感覚が新鮮でした。

    その後、考えをまとめるときの話し相手としても使うようになりました。一人で考えていると行き詰まることがありますが、AIに向かって話しかけるように書き出すと、整理されることがある。そういう使い方が少しずつ広がっていきました。

    そして上位資格の勉強を始めたとき、AIを勉強に使えないかと思ったのです。それが、今に続く使い方の出発点です。

    AIは先生じゃなく、話し相手

    使い始めて気づいたのは、AIは「先生」ではないということです。これは最初に押さえておいた方がいい点で、AIの説明が常に正確とは限らない。特に法改正の細かい部分や、数字の根拠などは、確認が必要なことがあります。

    実際に、年金の受給開始年齢に関する説明を求めたとき、AIが返してきた内容に微妙なずれがありました。制度の大枠は合っていたのですが、細部の数字が最新のものと違っていた。こういうことは起きます。AIは非常に広い範囲の知識を持っていますが、情報の更新には限界がありますし、そもそも誤りがないとは言えない。

    だから私は、AIの答えをそのまま受け取るということをしていません。「こういう理解でいいですか?」と自分の解釈を先に言葉にして、それを確認するという使い方をすることが多いです。あるいは、AIの説明を聞いたあと、その内容をテキストや公式の資料で照らし合わせる。そのひと手間を省かないようにしています。

    先生に教わると、その場でわかった気になってしまうことがあります。でも話し相手に話しかけるのは、もともと自分の中に何かあるからです。疑問があるから聞く、考えがあるからぶつけてみる。その主体性が、AIとの対話では自然と保たれる気がします。

    検索との違いも、ここにあります。検索はこちらが正しいキーワードを知っていないと、欲しい答えにたどり着きにくい。AIは「こういうことが分からない」とそのまま普通の言葉で伝えられます。それから、人に何度も同じことを聞くのは気が引けますが、AI相手なら遠慮がいりません。分からないことをそのままにせず、その場で聞けるようになったのは、勉強を続けるうえでかなり大きかったです。

    AIにできることと、できないこと

    少し実務的な話をしておきます。AIを使い始める前に知っておくと助かることがあります。

    紙のテキストや問題集の内容をそのままAIに渡すことは、基本的にできません。「この章を全部読んでまとめて」という使い方は現実的ではないのです。最初にここを勘違いしていると、「思っていたのと違う」となりやすい。

    では実際にどうしているかというと、主に二つの方法を使っています。

    一つ目は、「引っかかった一文や用語だけを手入力する」方法です。テキストを読んでいて詰まったとき、そのページ全体をAIに渡そうとするのではなく、分からなかった用語や一文だけを書き写す。「ここだけ」に絞れば大した手間ではありません。しかもこの「絞る」という作業自体が、自分のつまずきポイントを明確にしてくれます。何が分からないのかを言語化しようとする、その過程がすでに学びになっています。

    二つ目は、「スマホで該当ページを撮影して、画像ごと貼り付ける」方法です。Claudeなど、画像を読み取れるAIを使えば、ページを写真に撮って貼り付けるだけで「この部分が分かりません」と聞けます。図や表が含まれているページでも対応できますし、入力の手間が省けます。これは使い始めてから知った方法で、かなり助かっています。

    本の内容を丸ごとAIに渡すのではなく、「自分が詰まったところだけを持ち込む」。この感覚で使うと、AIとの対話がずっとうまく回ります。

    スマホとPC、それぞれの使い方

    今では、スマホとPCの両方でAIを積極的に活用しています。それぞれ使い方が少し違っていて、場面によって使い分けています。

    スマホは、隙間時間の活用に向いています。ちょっとした待ち時間に疑問に思っていたことを入力してみる。外出先で気になることが浮かんだときにすぐ聞ける。テキストを持ち歩かなくても、スマホさえあればその場で調べて確認できる。勉強の場所や時間を選ばない、という点でかなり自由度が広がりました。

    PCは、腰を落ち着けてじっくり取り組むときに使います。問題を解いた後の深掘り、その日に学んだことの整理と確認、複雑な制度の仕組みを体系的に理解したいとき。画面が広い分、AIとのやり取りを見返しながら考えを整理しやすい。長い対話になるほど、PCの方が快適です。

    どちらが優れているというわけではなく、その日の状況と目的によって自然と使い分けるようになりました。両方使えるようになってから、勉強の機会が増えた実感があります。

    続け方についても、AIのおかげで変わったことがあります。以前は「今日は気力がないからやめておこう」となると、そのまま数日空いてしまうことがありました。今は気力が出ない日でも、「ひとつだけAIに聞いてみる」という小さな入り口があります。スマホに向かって音声で話しかけるだけなら、テキストを開くよりずっとハードルが低い。勉強を続けるうえで一番の敵は「完全に止まること」です。止まらないための入り口を複数持っておける、という意味でも、スマホとPCの両方でAIを使えることは効いています。

    音声入力という、意外な使い方

    スマホを使うようになってから気づいた活用法が、音声入力です。これは使い始めるまで思いつかなかった方法で、今では欠かせない使い方のひとつになっています。

    たとえば、散歩中に勉強のことを考えていて、「あれ、あの制度の仕組みってどうなっていたっけ」と気になることがあります。以前なら家に帰るまでに忘れてしまうか、メモしようとして面倒になってしまうか、どちらかでした。今はスマホに向かって話しかけるだけで、AIに質問を投げられます。

    音声入力のいいところは、考えながら話せることです。文字を打つときは、ある程度整理してから入力しようとします。でも声に出すと、「えーと、こういう場面で、こういう疑問が出てきて……」という、まだ整理しきれていない状態のまま伝えられる。それでもAIはちゃんと意図を汲んで答えてくれます。

    もうひとつ、音声入力が役立つのは、学んだことをその日のうちに言葉にするときです。「今日はこのテーマを勉強して、こういうことが分かった。ただここがまだ曖昧で……」と声で話すと、自分の理解がどこまで進んでいるか、どこで止まっているかが自然と見えてきます。書くより話す方が楽な人には、特に向いている使い方だと思います。

    手が塞がっているときや、画面を見続けるのが疲れたときにも便利です。目を休めながら耳で確認する、という使い方もできます。思いついたことをその場で声に出してメモできる、という気軽さが、勉強の小さな入り口をいくつも増やしてくれました。

    60代の強みは、経験が知識につながること

    資格勉強で60代が不利かというと、少なくとも私の実感では、そんなことはありません。記憶力については若い頃と比べれば確かに落ちているかもしれないけれど、実務経験があるというのは思っていた以上に大きな武器です。

    たとえば、生命保険と損害保険の違い、保障と貯蓄の組み合わせ方、税務上の取り扱いといったテーマは、実際の仕事の中でさんざん扱ってきた内容です。テキストに書いてあることが、具体的な契約者の顔や商品の仕様と結びつく。そのため、単なる暗記ではなく「そういえばあのケースがそれだ」という形で理解できることが多い。

    AIとの対話でも、この経験は活きています。「実務ではこういう場面でよくこういう問題が起きていたんですが、それはこの論点と関係がありますか?」という聞き方ができるのです。そうすると、理論と実務がつながる形で説明が返ってくることがあって、学びがより立体的になります。「年金生活を前にした人の視点で整理すると」と条件を加えるだけで、説明の切り口が変わる。自分の立場を最初に伝えることで、説明の質がぐっと自分向きになります。

    ただ、注意が必要な点もあります。実務経験が豊富だからこそ、「自分の知っているやり方が正しい」という先入観が邪魔をすることがある。試験の問題は、実務の慣習ではなく、あくまで制度や規定に基づいて解くものです。経験を活かすことと、経験に縛られないことを両立させる必要があります。AIに「実務ではこうやっていたんですが、制度上の正確な理解はどうなりますか?」と聞くと、両面を整理してくれることがある。自分の思い込みを問い直す道具としても使えます。

    問題から入って、テキストで確認する

    勉強の進め方で、自分なりに定着しているやり方があります。問題を先に解いて、それからテキストに戻る、という順序です。

    最初にテキストを読み込んでから問題を解く、というのが一般的なやり方かもしれません。ただ私には、それだと頭に残りにくかった。テキストを読んでいるときはわかった気になるのですが、問題になると出てこない。ところが問題から入ると、「これはわからない」「これは迷う」という感触が先にある。その状態でテキストを読むと、引っかかりのあったところが自然と目に入ります。

    AIはこのプロセスの中に入れています。問題を解いた後、自分なりの解釈を言葉にしてみる。「この問題はこういう理由でAが正解だと思うんですが、どうですか?」とAIに投げてみると、自分の理解が合っているかどうかの確認になります。ここで気をつけていることは、最初から「答えを教えてください」とは言わないことです。自分で考えてから確認する、という順序を崩さないようにしています。

    その日に学んだことをAIに向けて自分の言葉でまとめてみる、ということもやっています。たとえば、「今日は贈与税の非課税枠について勉強しました。暦年課税の基礎控除は年110万円まで非課税、相続時精算課税は2500万円まで非課税だけど相続のときに遺産に合算される、という理解であっていますか」と入力する。すると「概ねその通りです。ただ2024年の改正で相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が加わりましたので、その点は最新のテキストで確認してください」という形で返ってくる。

    AIにまとめてもらうのではなく、自分がまとめたものをAIに確認してもらう。この順番が大事だと気づいてからは、学んだことの定着が少し変わった気がしています。

    AIを使うときに気をつけていること

    もう少し具体的に、AIを使う上で自分なりに気をつけていることをまとめておきます。

    まず、情報の確認は欠かさないことです。税率や保険料率、年金の支給額といった数値は、制度改正によって変わります。AIが提示した数字は必ず公式の資料や試験問題集の解説と照らし合わせています。これをさぼると、古い情報のまま覚えてしまうリスクがあります。

    次に、質問の仕方を工夫することです。「相続税について教えてください」という聞き方では、膨大な情報が返ってきて消化しきれません。「相続税の基礎控除の計算方法で、法定相続人の数え方に迷っています。特に養子がいる場合の扱いを確認したい」という形で、聞きたいことを絞ります。AIは幅広く答えようとするので、こちらが絞らないと話が広がりすぎます。慣れてきたら、ネットの記事やYouTubeでプロンプト(AIへの命令文)の工夫を調べてみるのも楽しいです。使いながら少しずつ自分なりのコツが見えてきます。

    それから、AIの回答に違和感を感じたときは、そのまま流さないことです。「それはテキストに書いてある内容と少し違う気がするのですが、どちらが正確ですか?」と続けて聞く。対話を一往復で終わらせず、納得できるまで続けることが大切です。

    個人情報をむやみに入力しないことも気をつけています。相続の相談や保険の見直しをAIに聞くとき、「60代・元会社員・金融資産3000万円程度の場合」のように一般化して入力すれば、十分な答えが返ってきます。

    現役世代にも、ヒントになることがあるかもしれない

    ここまで書いてきた内容は、60代の資格勉強という文脈のものですが、20代や30代の現役世代にも通じる部分はあると思っています。

    仕事をしながら資格の勉強をするのは、時間的にも体力的にも大変です。まとまった勉強時間が取れないことも多い。そういうときに、細切れの時間を活かすためのツールとしてAIを使う、という発想は参考になるかもしれません。通勤中にスマホでひとつ聞く、音声入力で疑問をメモして昼休みに確認する。AIを使うと短い時間でも疑問をその場で解消できるので、まとまった時間が取りにくい世代にとってむしろ相性がいいはずです。

    「自分でまとめてからAIに確認する」という学び方も、年齢を問わず有効です。AIに説明を全部生成させて読むだけより、自分の理解をいったん言葉にしてからAIに確かめてもらう方が定着しやすい。これは脳の仕組みの話でもあるので、20代でも30代でも変わりません。

    もうひとつ、「日頃の知識アップデートと試験合格は別物」という視点も、現役世代に届いてほしい話です。仕事をしながら業界の知識を積んでいる人は多いと思います。でも、それが資格試験の合格につながるかというと、別の準備が必要です。逆に言えば、実務経験がある人は知識の下地があるぶん、AIをうまく使って学び方を工夫すれば、思ったより効率的に進める可能性があります。

    早いうちにAIとの対話に慣れておくことは、損ではないと思います。使いながら「このツールはこういうときに頼りになる、こういうときは頼れない」という感覚が身についていく。その感覚は、資格勉強だけでなく、仕事や日常のさまざまな場面で役立つはずです。

    小さく始めることが、続けることになる

    今日伝えたかったことは、大げさなことではありません。AIを使えば勉強が劇的に変わる、とか、最短ルートで合格できる、といった話をしたいわけではありません。

    ただ、困ったときに気軽に聞ける相手がそばにいると、勉強は続けやすくなります。わからないことが積み重なって、いつの間にかテキストを開かなくなる。そういう経験は多くの人にあると思いますが、AIはその「積み重なり」を少し解消してくれます。

    始め方は簡単です。スマホでもPCでも、いつも使っているAIツールに、今日詰まった問題や気になる言葉をそのまま投げてみる。文字を打つのが面倒なら、音声で話しかけてみる。それだけです。大仰に構える必要はありません。

    私は今も、毎日少しずつ勉強を続けています。合格がいつになるかはわかりません。でも以前と違うのは、わからないことに対して「まあいいか」と流さずに済むようになってきたことです。疑問があればその日のうちに何らかの形で向き合える、という環境ができた。スマホで音声入力する日もあれば、PCで腰を落ち着けて深掘りする日もある。どちらでも、自分のペースで続けられています。それが、止まらずにいられる理由のひとつだと思っています。

    AIは万能ではないし、代わりに勉強してくれるわけでもない。でも、そばに置いてみると、思っていた以上にいい話し相手になってくれます。スマホでもPCでも、声でも文字でも、自分のやりやすい形で使えばいい。その気軽さが、長く続けるための土台になっています。

    ここまで読んでくださってありがとうございます。
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    NISAを始めたい・始めたけれど、「貯金はいくら残す?」「毎月いくら積み立てる?」「保険はどうする?」と迷うお金の初心者へ。生活防衛資金・NISA・保険の優先順位を、数字と手順でわかりやすく整理します。公的医療保険・生命保険・損害保険の業界歴30年のFPです。

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