
誰かとの会話から生まれた気づき
「あなたは1分1秒待てないね」
相談に行くたびに、上司は苦笑いしながらそう言いました。
何かに悩んで話を聞いてもらいに行っても、私はいつも先に自分なりの答えを持っていき、「こういうことですよね」と結論を急いでしまいました。そのたびに、同じ言葉が返ってきました。
最初のうちは、正直ムッとしていました。
効率よく動いているだけなのに、なぜそんなことを言われなきゃいけないの?と。
時間を無駄にせず先回りして片づけることこそが正しいのだと信じ込んでいたからです。
でも何度も同じことを言われるうちに、さすがに引っかかるようになりました。
よく考えてみると、私は本当にせっかちで、相手がまだ話し終わっていないのに「つまりこういうことでしょう」と先回りしてしまう癖がありました。
相談に行っているつもりが、実は自分の結論を確認しに行っているだけだったのかもしれません。
若い頃は注意されたとしか思えなかったあの言葉も、歳を重ねるうちに、少しずつ違って聞こえてくるようになりました。
1分、1秒。
その「待つ時間」を、私はずっと惜しんできたのだと、今になって気づかされました。
子どもの相談も、友人の話も、本当は「答え」より「聞いてほしい」だけのことが多いものです。
それなのに私は、今でも急いで結論を出そうとしてしまいます。
頭ではわかっていても、なかなか治せないものです。
それでも、口を挟みそうになった瞬間に、あの言葉がふと頭をよぎるようになりました。
若い頃には気づけなかったことに、今なら気づける。それだけでも、歳を重ねてきた意味があったのだと思います。