雨の日のロイヤルホストで

初めてロイヤルホストに入った。
ハンバーグが食べたいな、と思いながら家の近くのガストに向かったのだが、雨だったこともあり激混みだったのでしぶしぶ道を引き返して入ってみた。
明らかに上級国民(言い方が悪い気がするけれど)向けのファミレスという偏見があるので、27年間生きてきて1回も入ったことが無かったのである。

店内に入って「何名様ですか?」と聞かれて、指で1を示すと、ほんの少し店員さんが怪訝な顔をした気がした。格好がTシャツにジーンズとラフもいいとこなので、これは完全にこちらが悪い。席に案内されつつ周りを見回すと、世帯収入が高そうな家族連れしかいない。なるほど、そりゃ金のなさそうな若者が1人で来たら浮くわけだな、と1人で納得する。
ちなみに入る前にも入口前の階段で上流階級(皮肉ではない)っぽい家族が写真を撮っていた。息子か娘のピアノのコンクール終わりかなんかだろうか。みんな笑顔だった。写真撮るんだ、ファミレスなのに。

案内された席は長ソファーの端っこ席だった。
本当は窓際の4人がけのイスの席が良かったけれど仕方がない。お誕生日席を思わせる変な座席に座る。隣席には小さい子どもを2人連れたお母さんがいる。
「デザート何にする?」という隣席の会話をなんとなく盗み聞きしていたら、急に
「〇〇起きて!ちゃんとしないと失礼でしょ!」と兄が妹を叱る声が聞こえてきて唖然とした。
確かに妹の方は足を投げ出して長ソファーにダラッと寝転がっていたのだが、どう見てもまだ4〜5歳である。
しかもそれを注意した兄もたいして年齢は変わりそうになく、多く見積もっても6歳ぐらいにしか見えないものだから面食らってしまった。私の愛用ファミレスであるサイゼリヤでは生まれてこの方見たことがない光景である。
しかも、妹の方もちゃんと居住まいを正すものだからすごいというほかない。

さすがロイヤルホストだな…と思いながら店員から渡されたメニューをパラパラめくっていく。なるほど他のファミレスより値段が1段階高い。7000円のステーキに目が留まるが、既にロイヤルホストの空気に飼い慣らされているので、そうか…という薄いリアクションを心の中でするだけで済んでしまう。
美味しそうなワインの誘惑に目を背けつつハンバーグのページに辿り着く。
ざっと見回して、1番スタンダードそうなハンバーグに決め、さあどう店員を呼ぼうかと考えているとお冷やを持った店員がこちらへやってくる。
店員までロイヤルホストクオリティなのか、とまるでロイヤルホスト教の信者のような気持ちになりながらハンバーグとライス(大)を頼む。
実は最初ライスセットを頼んだのだが、ドリンクバーの必要性と向かう勇気が無さそうだったのでやめた。

ダラダラとさっき買った本を読みながら待っていると、カトラリーだけが運ばれてくる。
「お食事の準備をさせていただきます」
おお、良いとこのレストランとかでしか聞かないセリフだ。
その後10分ほどしてハンバーグが運ばれてくる。
「大変お待たせいたしました!」というが、そんなに待ったつもりはない。
来たハンバーグは値段相応に美味しそうに見える。なんかこのハンバーグ膨らんでんな…と思いつつ、まずは添えてあるポテトを食べる。どこで食べても変わらない味に安心しながら、ナイフとフォークを使ってハンバーグを切ると、思わず声が出そうになる。
ぎっちり詰まっているのだ。肉が。断面が今まで見たことない細かい肉の繊維を見せている。
昔自炊で作った牛肉100%のバカハンバーグ(私がそう呼んでいるだけです、あしからず)よりも詰まっているとは驚きでしかない。ハンバーグの断面の写真を撮ろうと思ったのはこれが初めてである。やるな、ロイヤルホスト。

美味しいなー、と小学生1年生のような感想を心に食べ進めていると、店員さんが慌ただしそうに席の確認をしている。
なんだ?と思って入り口を見ると、高校生の集団がいる。高校生か…高校生がロイヤルホストか…と先ほどのメニューの金額が走馬灯のように思い出される。
席を確保され、12人ほどの高校生が目の前の長テーブルへと着席。野球部だろうか、昔ながらの坊主の子もいる。
ワイワイガヤガヤと話しているところから「ハンバーグと…」と漏れ聞こえてくる。

私が頼んだハンバーグを頼むのか…高校生だとまあまあの値段だけどな…と考える。
もしあの頃、家や学校の近くにロイヤルホストがあったら高校の友達同士で行くという選択肢が私の人生にもあったんだろうか…
高校生の時を思い出してみるが、絶対に無いだろう。通学定期代を遊びに溶かし、雨の日も風の日も泣く泣くチャリで学校に向かっていた私がロイヤルホストになんて行くわけない。
たぶん友達が「ロイホ行こうぜ!」なんて軽々しく言い出した日には埋めきれない価値観の隔たりを痛感し、その人とは遊ぶのをやめただろう。

店員さんに迷いなく食べたいものを注文していく高校生に、自分の世界線とは完全に袂が分たれていることを突きつけられる。少し冷めた残りのハンバーグを食べ、本の続きを少しだけ読んで店を出た。会計は2431円だった。
また来るね、ロイヤルホスト。


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