
これは誰の落とし物?
なんでこんなところに赤パプリカ?
ファミマ前の通りで、赤いパプリカが落ちていた。
足元に、ぽとんと転がる赤。
アスファルトの上でやけに目立っている。
赤パプリカは、普通のピーマンなら二〜三個分の値段がする。
それが道端にひとつ、無造作に転がっているのだ。
斜向かいには交番がある。
私は一瞬悩んだ。
これを拾って「落とし物です」って届けるべきなのか?
いや、赤パプリカは落とし物扱いになるのか?
……そもそも、パプリカを片手に交番へ行く勇気なんて、私にはなかった。
それに――落とした人の夜の食卓はどうなるのだろう。
緑のレタスとピーマン。
黄色のパプリカも買っていたかもしれない。
もし赤を失ったのなら、サラダの彩りは緑と黄色だけ。
あの鮮やかな赤というアクセントがなくて、ちょっと寂しくはないだろうか。
私は足を止めただけで、そのまま通りすぎた。
何も起きない?
いえ、全部そこで起きていました。
―――――
あとがき
本当に落ちていたのです。
ファミマ前の通りに、ぽつんと赤パプリカが。
最近は野菜も高いので、余計に目につきました。
百円玉を落とすより痛いかもしれません。
交番に届ける勇気もなく、作者は結局そのまま通りすぎました。
どうか皆さまも落とし物にはお気をつけて。