今思えば…
好きにならなくていい人だった
どうして、あの人を好きになったんだろう。
今でも時々、そんなことを思う。
あの頃の自分に会えたら、きっと言うと思う。
「その人はやめておきなさい」って。
出会いは、なんてことなかった。
バイト先で仲良くなった人の、そのまた知り合い。
それだけの関係だったはずなのに、
気づけば、よく話すようになっていた。
優しい人だった。
というより、
優しい言葉をかけるのが上手い人だった。
本気なのかどうか分からない言葉を、
平気で口にする人だった。
「かわいいよ」
「一緒にいると落ち着く」
そんなことを言われたら、
少しは期待してしまう。
当時の自分は、
それだけで十分だった。
少しでも特別でいたくて、
ほんの少しだけ、勇気を出してみた。
でも、何も変わらなかった。
気づけば、向こうから連絡が来ることはなくて、
こちらから送れば返ってくる、
そんな距離のままだった。
後から思えば、簡単なことだった。
あの人はきっと、最初から分かっていた。
私の気持ちも、
どうすれば期待させられるかも。
そして、選ばなかった。
理由も、今なら分かる気がする。
きっと、私は違った。
あの人が本当に見ていたのは、
別の人だったんだと思う。
それでも、当時はそれに気づけなかった。
好きだったから。
今なら、もう分かる。
あれは優しさじゃなかった。
ただ、都合のいい距離で
言葉を並べていただけだった。
もし、あの頃に戻れるなら。
あの人のことじゃなくて、
もっと大切にした方がいい人がいるって、
教えてあげたい。
そして何より、
そんな人に心を使わなくていいって、
ちゃんと伝えてあげたい。
あの頃の自分がいたから、
今の自分は、少しだけ人を見る目を持てた。
だからもう、同じ間違いはしない。
