星形の脳みそ
ディズニーシーのアトラクション待機列。真夏の大型フェスの出待ち。空港の入国審査待で長蛇の列。
わたしたち夫婦は、これまで数々の待ち時間を共にしてきた。
せっかちな性格とは程遠い二人で、待ち時間への受け入れ態勢はゆるい。ただ、携帯をいじいじしても、熱いトークを交わしても、手持ち無沙汰になる瞬間はあった。
そんな時、わたしたちは決まってあることをした。それは、「○○しりとり」だ。
三文字しりとり、イングリッシュしりとり、芸能人しりとり。これらを片手間でやるのではなく、真剣にやることがミソだ。もう、ケンカになってもいいとすら思っている。
それくらい、プライドを持ってやることで、待ち時間をあっという間にすり抜けていく。
芸能人しりとりをやる時、わたしが優勢になるのはいつものことだ。
夫はその常識を覆そうといつもより意気込むが、「ケ」のターンになると、なぜか夫の脳内は「ケンドウコバヤシ」一色になってしまう。
一旦、様々な芸能人を巡ってはみるが、必ずケンドウコバヤシに戻ってくる。
終いには「ミンドウコバヤシ」「コンドウコバヤシ」と、どの文字にもケンドウコバヤシしか結びつかなくなり、ゲームオーバーだ。
夫の中で、芸能界は彼を中心に回っているらしい。
芸能人だけじゃなく、基本夫はしりとりが弱い。
それは語彙力が弱いという簡単な話ではない。一般常識はわたしよりもあるし、言葉に興味がないわけでもなさそうだ。
その証拠に、夫はクイズ番組が好きだ。
特に「ネプリーグ」への愛は凄まじい。四字熟語を答えていくコーナーでは身を乗り出してテレビを眺めているし、CM中は必死に回答を考えている。ただ知っている四字熟語を聞くと「四捨五入」と即答され、またケンドウコバヤシモードの夫が現れるのだ。
脳内に言葉の倉庫があるとして、夫だけいびつな形をしているのではないか、と思う。
おそらく星みたいな形をしているのではないだろうか。芸能人の部分は細いところにあるので「ケンドウコバヤシ」しか入らないようになっている。
そうに決まっているのだ。
