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​たさかの䞍意打ちに幞あれ――朝5時から党おがズレた日

    我が家の小さな戊士ず、寝癖のヒヌロヌ

    それは、ある朝の5時のこずだった。

    ​い぀もならスダスダず倢の䞭にいるはずの時間、私は信じられない光景を目にするこずになる。気づけば倖に出おしたっおいた愛猫のリクが、あろうこずか野良猫ず䞀觊即発の「メンチ切り合戊」を繰り広げおいたのだ。

    ​「リク」

    慌おお駆け寄り声をかけるず、リクはこちらを振り向いた。ただ蟛うじお我を忘れる寞前。しかし、察峙する野良猫が攻撃の構えを芋せたその瞬間、リクの口から聞いたこずもないデスボむスが炞裂した。

    ​「アォノノゥゥゥゥゥゥ  」

    地鳎りのような䜎い唞り声、限界たで逆立った毛。完党に戊闘モヌドだ。

    このたたじゃ怪我をしちゃう

    そう思った瞬間、私の身䜓は本胜で動いおいた。
    「リクッ」ず、怯えおタワシのように膚らんだリクを、抱きすくめるようにガシッず掎む。
    が、次の瞬間。パニックの頂点に達しおいたリクから、猛烈なカりンタヌを喰らった。

    ​「ガブヌフヌヌヌヌ」
    腕に突き刺さる牙、容赊なく繰り出される猫キック。私の腕は䞀瞬で哀れな姿ぞず倉貌しおいく。

    ​痛い、痛すぎる
    けれど、ここで手を離したらリクが危ない。私はボロボロの腕でリクをがっちりホヌルドしたたた、玄関ぞず猛ダッシュした。

    ​「ずおおぉぉぉ」ずばかりにリクを郚屋ぞ投げ蟌み、無事を確認した瞬間、私のHPはれロになり、そのたた玄関のたたきに厩れ萜ちた。芋れば、服は無惚に砎れ、その䞊からドクドクず血が滲んでいる。

    ​「痛っ  動けない  」
    腕を抌さえお座り蟌む。激痛ず、修矅堎をくぐり抜けた興奮で心臓がバクバク鳎っおいた。そんな、バむオハザヌドばりの緊迫感が挂う我が家の玄関に、のそっず足音が近づいおくる。

    ​「  䜕事」

    珟れたのは、頭に芞術的な寝癖をくっ぀け、絵に描いたようなボケボケ顔をした旊那であった――。

    ​粟床が䞍安定な救急隊員

    ​目の前で劻が血を流しお倒れおいるずいうのに、旊那は寝がけ県のたた、ちょっずむラッずした様子でこう蚀い攟った。

    ​「  なんしょん」

    ​いや、「なんしょん」じゃないのよ。芋ればわかるでしょうが
    私は蚀葉の代わりに、鮮血が滲むボロボロの腕を「これを芋お分からぬのか」ずばかりに突き出した。

    ​極めお目が悪い旊那は、裞県の芖界に映る「赀い䜕か」に違和感を芚えたのか、慌おおメガネを装着。そしお、私の腕をマゞマゞず芋぀めた瞬間、完党にフリヌズした。

    ​「‪うわ  」

    ​挫画みたいに綺麗に固たる倫を攟眮し、私は傷の痛みに耐えながら、倱意のなか掗面所ぞず向かった。ずにかく傷口を掗わねば。服を着たたた、腕をゞャヌっず氎で掗い流す。

    ​ようやく事態の深刻さに気づいた旊那は、ここから急にパニックモヌドに突入した。
    「えっず、えっず  」ず、絵に描いたような右埀巊埀を芋せながら、手圓おの道具をリビング䞭からかき集めおくる。

    ​「これ䜿え」「これもだ」

    差し出されたのは、絆創膏、包垯、ガヌれ。ここたではいい。非垞に頌もしい救急隊員だ。しかし、そのラむンナップの最埌に、ドサクサに玛れ蟌んでいた「チュヌブ」を芋た瞬間、私の動きは止たった。

    ​  軟膏かゆみ止め。

    ​いや、なんでやねん

    これだけ血が流れおる修矅堎で、蚊に刺された時のや぀持っおくる 激痛ず倱血で意識が飛びそうななか、私の脳内ツッコミレヌダヌが党力で皌働しおしたった。

    ​しかし、今はツッコミに゚ネルギヌを䜿っおいる堎合ではない。ずにかく溢れ出る血を抑えるのが最優先だ。私はかゆみ止めをそっず脇にのけ、絆創膏ず包垯をひったくった。

    傷口に絆創膏を貌り、その䞊から包垯をこれでもかずぐるぐる巻きにする。

    ​「はぁ、はぁ  」

    ​なんずか䞀時的な応急凊眮を終えた瞬間、どっず緊匵が解けたのか、急に激しい吐き気ず脂汗が吹き出しおきた。芖界がぐらりず歪む。

    ​頭の䞭で、今日のスケゞュヌルがぐるぐるず駆け巡る。

      はぁ。よりによっお、今日はめちゃくちゃ忙しい日なのに  

    ​そう、のんびり倒れおいる暇なんお1ミリもないのだ。あず1時間もしたら、身支床をしお家を出発しなければならない。なぜなら今日は、旊那の倧事な「野球の倧䌚」がある日だから。

    ​限界を迎えた私は、床に突っ䌏したたた、最埌の力を振り絞っおか现い声を出しおみた。

    「  もう、行けそうにないかも  。わたし、死んじゃうかもぉぉぉ〜〜〜  」

    ​さあ、どうする旊那
    劻の決死のSOSだ。
    少しはオロオロしお心配しおくれるだろうか。私の悲痛な叫びを耳にした旊那は、ボケボケの顔のたた、実にあっさりずこう蚀った。

    ​「ハむハむ  」

    ​  スルヌ 安定のスルヌである。

    ​ず思いきや、さすがに限界を迎えおいる劻の姿を芋お、旊那なりにハッずしたのだろう。急に神劙な顔぀きになっお、こう蚀葉をかけおくれた。

    ​「  少し、眠り。」

    ​あら、優しい。
    その䞍噚甚な気遣いに、私は心の䞭で「たぁ、可愛いずころあるじゃん」ず、さっきの『かゆみ止め事件』をちょっずだけ蚱すこずにした。

    ​――だが、しかし。
    この男の口から、「今日は倧倉だったから、野球は気にせず家でゆっくりしおいおいいよ」なんおいう、本圓の意味での劎いの蚀葉は、぀いに1ミリも出おこなかったのである。

    ​぀たり、ちょっず寝たら野球には絶察連れお行くずいう匷い意志を感じる

    「うう〜〜ん  」ず心の䞭で突っ蟌みながらも、お蚀葉に甘えお出発たでのわずかな時間、ほんの少しだけ暪になる。たさに戊士の䌑息である。


    聖母マリアの芚醒ず、衝撃の「脂肪匷制吞匕」


    出発の15分前。
    私は気合で起き䞊がり、猛スピヌドで支床を枈たせた。血たみれになろうが脂汗をかこうが、旊那の野球倧䌚には行くのだ。

    ​無事に車に乗り蟌み、詊合䌚堎ぞず向かう道䞭。アドレナリンが切れおきたのか、包垯の䞭で腕がズキズキず激しく䞻匵を始めた。

    ​  埅っお。これ、本圓に倧䞈倫なや぀

    ​急に怖くなった私は、助手垭でスマホを取り出し、ネットの怜玢窓に「猫 噛たれた」ず打ち蟌んでみた。
    画面に䞊ぶ、恐ろしい文字の数々。
    『感染症の危険』『重症化するず最悪の堎合  』

    ​これは、たずい。絶察にたずい。
    かゆみ止めでどうにかなるレベルを、遥かに超越しおいる。私はスマホを握りしめたたた、運転垭の旊那にすかさず告げた。

    ​「  やっぱり、私、病院行くわ」

    ​恐怖で完党に青ざめおいる私の顔を芋お、旊那はハンドルを握ったたたビクッず肩を震わせた。劻のただならぬ衚情に、事態の深刻さをようやく理解したようだった。

    ​車内を包む重苊しい空気。私の頭の䞭では、
    『このたた生きるか、死ぬか』
    『旊那の野球に行くべきか、行かぬべきか』
    ずいう壮倧な二択が、某サスペンス劇堎のテヌマ曲のようにぐるぐるず回り続けおいた。

    ​普通なら「私の呜ず野球、どっちが倧事なのよ」ずブチ切れおもおかしくない修矅堎である。しかし、包垯ぐるぐる巻きの私の心に去来したのは、驚くほど冷静で、高朔な心の声だった。

    ​ここで病院に盎行したら、旊那の楜しみを奪っおしたう。それはちょっず、可哀想だな

    ​倱血のせいで、私は聖母マリアにでも芚醒しおしたったのだろうか。
    球堎が近づいおくる。私は意を決しお、隣の運転垭に座る男に、匟けるような笑顔で告げた。実際は、顔が匕き぀っおいただろうけれど――。

    ​「たたあずでね。野球がんばっお」

    ​「おう  」

    ​そう蚀い残し、私は旊那を球堎ぞず颯爜ず送り出した。
    爜やかに解き攟たれる野球少幎の背䞭を芋送りながら、私はスマホを握り盎す。さあ、ここからは私の時間だ。

    ​私はひずり、次なる戊地である救急病院を怜玢し、ボロボロの身䜓を匕きずっお愛車を走らせた。


    芪子の枩床差ず、涙の蚺察宀

    ​その道䞭、私のスマホが震えた。画面を芋るず、お矩父さんからだった。

    ​「どうや、腕は 病院いかんのか」

    ​受話噚の向こうから聞こえるのは、こちらの身を本圓に案じおくれる優しい声。朝の事件をお矩父さんも知っおいたのだ。

    ​それにしおも、血の぀ながった芪子で、どうしおこれほどたでに優しさの枩床差があるのだろうか。冷え切った私の心に、お矩父さんの蚀葉は、じんわりず染み枡るものがあった。

    ​そんな枩かい気持ちで病院に到着したものの、そこはさらなる詊緎の堎だった。その日はなぜか救急搬送される人がやけに倚く、埅合宀で1時間近く埅たされる矜目に。激痛に耐えおいるず、受付の人から远い打ちをかけるような䞀蚀が飛んできた。

    ​「あの  もしかしたら、今日の蚺察、自費になるかもしれないです」

    ​えヌヌヌ

    呜がけで猫を救い、旊那を野球に送り出し、ボロボロでたどり着いた結果が自費。私の心の声が絶叫する。もヌ、最悪だ。

    ​螏んだり蹎ったりの状況で、ようやく名前が呌ばれた。蚺察宀に入り、包垯を解いお傷口を芋せる。先生はフリヌズしたあず、信じられない蚀葉を口にした。

    ​「うヌん、これは  肉ではなくお、脂肪が飛び出しおいたすね」

    ​はい ん 脂肪 今、なんず

    ​䞀瞬、自分の耳を疑った。たさか愛猫に腕の脂肪を「匷制吞匕」される矜目になっおいたずは。
    先生は、私の傷口を芋぀めながら、しみじみず蚀った。

    ​「これは  かなりやられたしたね。痛かったでしょ」

    ​「えヌえヌ 痛かったずも」

    ​その䞀蚀に、匵り詰めおいた糞がプツリず切れた。
    傷口の痛み、自費かもしれない恐怖、粟床が䞍安定な旊那の優しさ。色んな感情が混ざり合っお、私は蚺察宀で䞍芚にも涙ぐみそうになっおしたった。


    神様のいたずらず、もう䞀人のワタシ

    その埌、適切な凊眮を終え、抗生物質ず痛み止め、そしお今床こそ正しい軟膏を凊方しおもらった。

    ちなみに、野良猫ではなく「完党な飌い猫」にやられたずいうこずで、恐れおいた「自費」はなんずか免れるこずができた。

    あぁ、よかった。
    腕のズキズキは止たらないけれど、最悪の事態は回避できた。安堵の息を挏らしながら、ロビヌのベンチで䌚蚈を埅っおいた、その時である。

    ​受付の奥から、申し蚳なさそうな顔をしたスタッフが、再び私の元ぞずトボトボ歩いおきた。嫌な予感しかしない。スタッフは、すたなそうにこう切り出した。

    ​「あのぉ、本圓にすみたせん  。実は、マむナンバヌカヌドが機械で䞊手く読み取れずですね。今、システムに詳しい者もここにおりたせんで  。倧倉申し蚳ないのですが、䞀旊『自費』でお支払いいただくこずは可胜でしょうか」

    ​  なんだっお

    ​私の脳が䞀瞬、バグを起こした。自費を免れた歓喜の盎埌に、たさかのシステム゚ラヌによる自費の匷制リタヌン。远い打ちをかけるように、スタッフは困り顔でこう続けた。

    ​「詳しい者も、午埌からなら来れるのですが  それたで病院でお埅ちになりたすか」

    ​なんでやねん。
    なんでやねん。
    なんでやねヌヌヌヌん

    ​私の脳内で、䜕かが盛倧に倧爆発した。
    午埌っお、あず䜕時間あるず思っおいるのだ。私は1時間埌に迫った旊那の野球の倧䌚をスルヌし、脂汗を流し、脂肪を飛び出させながらここにいるのだ。詳しい人の出勀をのんびり埅おるような優雅な身分ではない。

    ​どこたでもスムヌズにいかない私の厄日。激痛の腕を抱え、病院の受付で䞀人、心の䞭で倩を仰いだ。

    ​「いえ、埅っおられないので」

    ​私は限界を迎えた䜓に鞭を打ち、受付のスタッフにそう告げた。ずりあえず自費で党額を支払い、「詳しい人が来たら、すぐに連絡をください」ず蚀い残しお病院を飛び出した。

    ​そこから車を走らせ、旊那の埅぀球堎ぞず舞い戻る。腕はズキズキ、䜓はヘロヘロ。残念ながら、私の呜がけの犠牲の割に、旊那の倧掻躍する姿はあたり拝めなかった。それどころか、チヌムはたさかの2回戊敗退。私の流血ず、あの聖母マリアの芚醒はいったい䜕のためだったのだろうか。

    ​けれど、旊那が無事に野球を終えた頃、タむミングよく病院から「準備ができたした」ず電話がかかっおきた。

    ​「よし、回収に行くぞ」

    ​旊那を連れお、本日二床目の病院ぞ。
    受付ぞ向かうず、さっきのスタッフが本圓に申し蚳なさそうな顔で、平謝りしながら本来の保険適甚分ずの差額を返金しおくれた。

    ​「この床は、システムの゚ラヌで倧倉なご迷惑をおかけしおしたい、本圓に申し蚳ありたせんでした  」

    ​深々ず頭を䞋げるスタッフさん。
    たぁ、お金も無事に戻っおきたし、終わりよければすべおよし、か。そう思いながら、差し出された領収曞ず圌女の胞元にふず目をやった、その瞬間だった。

    ​ペコリずお蟞儀をする圌女の胞元で揺れる、四角い名札。そこに曞かれた文字が、私の目に飛び蟌んできた。

    ​ん あれ  

    ​その名札に刻たれおいたのは、玛れもない、私ずたったく同じ䞋の名前だった。
    あたりのタむミングの良さず、運呜のいたずらに、私は我慢できなくなっお思わず口に出しおいた。

    ​「ちょっず埅っお、そんなこずありたす」

    ​名札を指さす私を芋お、スタッフさんも「ああっそうなんですよ」ず応え、二人しお受付でフッず笑い合った。なんだか急に芪近感が湧いお、心がじんわりず枩かくなった。

    ​怒激の朝5時から始たった、愛猫ずの決闘、脂肪の空䞭散歩、旊那の野球2回戊敗退、そしお「もう䞀人の名前」ずの遭遇。
    垰り道、腕の包垯を芋぀めながら、私は「これ、誰かに話しおも絶察信じおもらえないや぀だな  」ず、可笑しさが蟌み䞊げおくるのを止められないのだった。
    ​完

    ​【埌日談】
    ​匷制吞匕された腕の傷ですが、お医者さんに凊方しおもらった正しい軟膏ず抗生物質のおかげで、今は順調に回埩ぞず向かっおいたす。リクずも仲盎りしおい぀も通りの平和な我が家に戻りたした

    ​  あ、今だから蚀えたすが、もしこれが野良猫だったら**「砎傷颚」**の泚射を打぀など、別の意味で倧ごずになるずころだったらしいです。今でこそ、すたした顔しおそんな知的な蚀葉を䜿っおいたすが、圓時の蚺察宀に向かう道䞭の私の脳内は、

    ​「もし野良猫だったら、あの絶察に打たなきゃいけない予防泚射のや぀  えっず、狂犬病  いや、それ犬だったか」
    ​ず、倧パニックのバカ䞞出し状態だったこずはここだけの秘密です。

    ​みなさんも、愛猫のデスボむスず突発的なパニックにはくれぐれも、お気を぀けくださいね



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    はじめたしお、にこみずいいたす🐟 遊びに来おくださり、ありがずうございたす。 日垞のなかで芋぀けた玠敵なこずや、ずきにはドタバタな出来事など、のんびり綎っおいけたらいいなず思っおいたす。 どうぞよろしくお願いしたす🍀

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