メインコンテンツへスキップ
見出し画像

志村ふくみ 色と言葉のつむぎおり

    しおり

    滋賀県立美術館で開催中の「生誕100年 人間国宝 志村ふくみ 色と言葉のつむぎおり」展に行ってきました。

    草木染めといえば、梨木香歩さんの『からくりからくさ』で草木染め作家である主人公が、同じ植物でも全く同じ色にはならないという話をしていたのが印象的で、そこからその奥深さや化学染料とは異なる柔らかさや温かさに惹かれてきました。
    染織家の志村ふくみさんのことは存じ上げなかったのですが、他の美術館で見たポスターに一目惚れ。草木染め、織物、着物と魅力的なキーワード満載の展覧会をとても楽しみにしていました。

    滋賀県近江八幡市出身のふくみは、で30代の頃に民藝活動に携わっていた実母の影響で染織家を志し、植物染料で染めた糸による紬織りに出会います。特定の師にはつかず、自らの信念を頼りに道を進むうちに、生命力あふれる色の表現、文学や哲学といった多彩な芸術分野への探究心に培われた独自の作風が評価され、1990年(平成2)、紬織の人間国宝に認定されました。

    展覧会チラシより

    そんな志村ふくみさんの故郷滋賀での約10年ぶりの個展。滋賀の景色に想いを馳せた作品も多々ありました。

    会場に入って作品を見て思ったのは「美しい」の一言。
    紬織りのざらざらとした質感、グラデーション、縦糸と横糸の交差、糸が足りなくなったら新しい糸を結んで紡いだ繋ぎ目も、全てが見事で、「あぁどうしたらこんなに素晴らしいものを生み出せるんだろう」と感嘆してばかりでした。

    画像
    『秋霜』

    藍色の美しさ、かすれ、白い横糸。白いだまのようなものは、質素倹約を信条とする近江の地で、短い糸を捨てずに糸と糸をつないで長い糸にした「つなぎ糸」の結び目だそう。夜空に浮かぶ星のようでとても美しいです。

    画像
    『桜染熨斗目絣』

    桜で染めた作品。桜から染め出すときは花びらではなく樹皮や枝から色を抽出するそう。桜の木のゴツゴツした樹皮や枝からこんな色が出てくる不思議。
    このグラデーションの美しさ。ため息しか出ません。

    画像
    『匂蘭』

    写真に撮ると白っぽくなってしまいましたが実物はもう少しピンクがかっていて、とにかく可愛いの一言に尽きます。

    画像
    源氏物語シリーズより『蛍』

    とても爽やかな作品。袖の藍が夜、黄色の点線が蛍なのでしょうか。源氏物語の雅な世界にすーっと誘われるような美しさです。

    画像
    『水門』

    琵琶湖の深い青、水面の揺れ、細い水路にも見える格子柄。琵琶湖の景色の美しさ、それを愛おしく思う気持ちが溢れていました。

    画像
    『紫の壱』

    紫は高貴な色。冠位十二階の制で紫は最も高貴な色、と小学校で習ってから刷り込まれた言葉ですが、この作品を見ると「さもありなん」と思わされます。

    画像
    色糸のグラデーションのインスタレーション。

    最後に『冬の湖』を作る過程に密着したドキュメンタリー映像がありました。デザインを決め、糸を染め、織り機に縦糸をセットして、横糸を通して織っていく。果てしないようにも思える工程を経て、素晴らしい作品が生まれていく。合間に琵琶湖が朝日や夕日で輝くキラキラした美しい景色が差し込まれて、あぁこの美しい風景があの作品のあの感じなんだ……とうっとり。
    美しいものをたくさん見て、心が癒された素敵な時間でした。

    ミュージアムショップに『風露』という作品のポストカードがあったんですが、これが白地に柔らかい色の布を繋げたパッチワークの着物でとても可愛かったです。
    今回の展示では見れなかったのですが、11/21からの大倉集古館での個展では見れるようです。(チラシの右下の作品です。)

    ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

     
     
     
    30代。美術館巡り、読書が好きです。

    あなたへのおすすめ