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MKの店|未来への贈り物

    「これはまた、大きな男じゃのう。」
    おじいさんは驚きを隠そうともせずそう言った。

    男は声は低いがなんとも情けない印象だ。
    「自分は。」と言ったきり、しばらく待ったが話し始めない。

    ここは、過去や未来のチャンスのタイミングを変える事ができる店だ。

    おじいさんは待ちくたびれて腰を上げると
    「用事があったら声をかけてくれ。」
    と言い残して奥へ入る。

    大きな男は微動だにしない。

    ずいぶん経っておじいさんが店先に出ると、大きな男はまだそこに立っていた。
    おじいさんは諦めたように「何か用かね?」と聞いた。

    大きな男は小さな声で「自分はどうしたらいいのかわからない。」
    「ここでチャンスをもらいたい。」と言ったのであろうの。

    「過去がいいかね、未来にするかね?」おじいさんが聞くと

    大きな男は小さな声で「自分はこのままなのだろうか。」と言う。

    「見に行ってみるかね?そのかわり、時期は選べないんじゃ。」
    大きな男は頷くと代金を置いた。

    「よいか、どんな未来であってもそれを作り出したのは自分なんじゃ。」

    「そのことを忘れるなよ。」

    大きな男はドアを開けて表へ出る。
    振り返ってみるとさっきまであったドアが見えなくなっていた。

    大きな男は近くのファミレスで食事をしていた。
    入り口にあった新聞を見ている。
    日付は5年後だ。

    大きな男は、職場に行ってみることにした。
    周りの景色がなんとなく少し違って見えた。
    「決して自分と会わないように。」おじいさんからの注意を守って少し離れたスーパーの角で様子を見る。

    しばらくすると自分が出てきた。手には書類を持ち、前をみて颯爽と歩いている。

    大きな男は自分の後を追った。
    取引先に着いた自分は、受付に挨拶をして中に入っていった。

    そこで、小さなアラームが鳴った。
    どうやらここまでらしい。


    大きな男はベッドの上で何度も何度も5年後の自分を思い出す。
    今の自分とは違いすぎる。
    どうして、あんなふうになったんだろう。

    受付の人に笑っていた。

    自分の笑顔は鏡でも見たことがない。


    1週間後、大きな男は店のなかにいた。
    「自分は。」大きな男は黙り込む。

    おじいさんは待った。

    「自分は笑っていた。」大きな男は言った。
    「そうかい、よかったではないか。」
    「どうして。」

    「それまでのお前さんが未来のお前さんへの贈り物をした、ということじゃな。」

    大きな男は、しばらく黙っていたが「やり直してみたい。」と言った。
    大きな男は代金を置くとドアを開ける。


    会社で上司が自分をからかう。

    「君には角刈りが似合うだろ、その体格は角刈りだろう〜ハハハ!」


    自分は躊躇った。


    怖い。


    息ができない。


    自分は、あの笑顔を手に入れるんだ。自分に誓う。


    自分は踏ん張って、先輩に聞く。

    「自分の髪型、どう思いますか。」

    先輩は「俺はイケてると思うけど。」


    息を吐きながら、落ちるように椅子にドスンと腰掛ける。

    自分の手を見たら震えていた。


    5年後の自分への贈り物。




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    nami

     
     
    不思議な店「MKの店」を舞台に 人生の小さな選択のお話を描いていきます。 ゆっくり進めていきます。 楽しんでもらえたら嬉しいです。

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