
「手伝ってもらうには及ばん」
結婚して間もない頃。
夫が何か作業をしていたので、私は声をかけた。
「手伝いましょうか?」
すると夫は、真顔でこう言った。
「手伝ってもらうには及ばん。」
……お侍さんですか?(笑)
当時は思わず笑ってしまったけれど、結婚して何年も経った今、その言葉は決して強がりではなかったのだと分かる。
夫は、とにかく仕事が早い。
新婚の頃、「暇な時でいいので、ここに棚を作ってください」とお願いした。
翌日には完成していた。
その棚は今でも現役で、毎日使っている。
何年も前には、30cm水槽の蓋が古くなったので、「こんな蓋を作ってくれませんか?」とお願いした。
それも翌日には出来上がった。
そして先日。
また水槽の蓋が必要になり、夕方にLINEを送った。
「昔作ってくれた水槽の蓋を、暇な時に作ってください。」
さすがに今日は無理だろうと思っていた。
ところが帰宅すると、テーブルの上に新しい水槽の蓋が無言で置いてあった。
「えっ!?」
一番驚いたのは、その速さではない。
何年も前に作った蓋のサイズを覚えていたことだった。
測りに帰ってきたわけでもなく、何も聞かずにぴったりの蓋を作ってしまう。
職場で作ってきたのだと思うけれど、本当にびっくりした。
夫は家電もよく直す。
CDプレーヤーも、スマホも、ミキサーも。
換気扇の掃除も手際がいい。
まるで「なんでも屋」だ。
ある日、紙ごみの日の前にお願いした。
「段ボールを束ねておいてもらえますか?」
帰ってみると、大量の段ボールがきれいに束ねられていた。
それだけではない。
牛乳パックまで切り開いて、きれいに重ねられている。
……忍者か?(笑)
頼んだこと以上のところまで、いつの間にか終わっている。
気づけばミッションが完了している。
そんな人だ。
だから今でも、ときどき新婚の頃の言葉を思い出す。
「手伝ってもらうには及ばん。」
あの時は、お侍さんみたいな言い方だと思って笑った。
でも今なら分かる。
夫は、言葉で格好つける人ではない。
黙って手を動かし、気づけば終わらせている。
わが家には、おしゃべりで発想豊かな4歳の息子と、寡黙だけれど行動で示すお侍さんがいる。
毎日が、なかなか飽きない。