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【゚ッセむ】えヌみちゃんず呌ばないで

山田詠矎のこずを心の䞭で『えヌみちゃん』ず呌んでいる。

もちろん、わたしず圌女は知り合いではない。ただ䜜家ずしお䞀方的に知っおいるだけである。高校の頃に囜語の教科曞ず、あず暡擬詊隓の本文で読んだ。「奜きだな」ず思った蚘憶はあるが、タむトルたでは芚えおいない。高校の図曞通で探しおも芋぀からなかった気がする。

そうこうしおいるうちに私は成人した。なんずなく圌女の䜜品は10代に読むべきものであるむメヌゞがあったので、いただにきちんず本で読めおはいない。

では、なぜわたしは山田詠矎の芪しい友達でもファンでもないくせに圌女を『えヌみちゃん』ず呌ぶのか。それは、高校2幎生かそこらで知った女の子がそう呌んでいたからである。わたしより䞀぀幎䞋で、個人で小説サむトを運営しおいお、䜕よりべらがうに人を惹き぀ける文章を曞く子だった。仮に『薔薇のあの子』ずしよう。圌女はペンネヌムを頻繁に倉えおいた。その䞭でわたしが最も呌んだ圌女の名前は、薔薇の品皮名の䞀぀でもあった。

『えヌみちゃん』が別に山田詠矎の公匏のあだ名ではないず知ったのは、『薔薇のあの子』ず知り合っおずいぶん経っおからのこずである。わたしがか぀お読んでいた少女挫画雑誌には、挫画家のこずを線集郚が誌面で「◯◯っちにあたたかいお手玙をお埅ちしおたす」のようにあだ名呌びする颚習があったので、そういった流れのものかず思っおいた。Wikipediaにもファンの感想ブログにも『えヌみちゃん』の文字は芋぀からなかった。どうやら『えヌみちゃん』ずは、『薔薇のあの子』が勝手に぀けた呌び名だったようだった。

『薔薇のあの子』が曞いた小説の文章を初めお読んだずき、その䞊手さにわたしは激しく嫉劬した。たずえば普通の人が1行で読者の頭の䞭に゜ファを描くずころを、圌女は半返し瞫いのように前の文章の䞭身をすくいずり぀぀も新しい描写をひずさじ加え、少しず぀゜ファのがかしを和らげお茪郭を浮かび䞊がらせるように衚珟しおいたのだ。勝おない、ず玠盎に思った。暗闇に蝋燭の灯りを持぀人が䞀人二人ず増え、少しず぀そこに䜕があるかが芋えおいくような感じだろうか。もどかしくも感じるその衚珟が、特に登堎人物が切々ず耐えるような蚎えるようなシヌンでわたしを惹き぀けた。単語単䜓で芋れば特別ドラマチックではないのに、読み手の心を静かに、でも確実に震わせるのだ。

䞀方で䜜颚ずは違っおTwitter珟X䞊で話す圌女自身は非垞に明るい人柄で、「わはは」ずいう笑い声が䌌合うような子だった。わたし以倖にも圌女の文章に惹かれる者は倚くいお、その䞭にいた幎䞊のお姉さんずもい぀の間にかタメ口で話す関係になっおいるような人懐っこさも持ち合わせおいた。

高校を卒業したあず、幞運なこずに圌女ず盞互フォロヌの仲になった。圌女はわたしにも芪しげに話しかけおくれた。でも、具䜓的に䜕を話したかはあたり芚えおいない。たぶん、日垞のささいなこずだず思う。

䞀぀だけ芚えおいるのが、わたしがこう投皿したずきの話だ。

「䜕かで読んだんだけど、䞀般的に病院の患者はpatientず呌ぶけど粟神科の患者はclientっお呌ぶんだっお。前者は医垫から䞀方的に治療を斜されるだけだけど、埌者は医垫ず䞀緒に協力しお䞻䜓的に治療に取り組む必芁があるかららしい」圌女からリプラむが来た。「ちょっずメモしおいいすか」

そうだった。確か圓時の圌女は医療職ぞの進路を垌望しおいた。「囜境なき医垫団に憧れおる」ずもどこかに曞いおいた気がする。

奜きな䜜家ずしお山田詠矎ず倪宰治を挙げ、埌者の䜜品では特に『女生埒』がお気に入りだった圌女。高校時代は電車通孊で、文芞郚に所属しおいた圌女。ハワむぞ留孊に行き、サブりェむをよく利甚しおいた圌女。1月生たれである圌女。ピアノが䞊手で、コンクヌルにもよく出おいた圌女。


それから月日は経ち、「秘曞をやっおいるが先茩方ず銬が合わない」ず圌女が぀ぶやいおいるのを芋た。それが久しぶりに聞いた圌女の最新情報だった。最新ずいっおももう䜕幎も前の話だが。

そしお、圌女のTwitterアカりントはい぀のたにか消えおいた。以䞊、わたしが圌女に぀いお知っおいるすべお。ザッツオヌル。

それでも容赊なく䞖界はわたしに圌女の残像を芋せ぀ける。曞店や雑誌・むンタヌネット䞊で『山田詠矎』ずいう文字を芋かけるず、瞬時に脳が『えヌみちゃん』『薔薇のあの子』ず蚘憶を匕っ匵っおくる。普段は冷蔵庫の扉を開けたわたしを「䜕を取りにきたんだっけ」ず立ち尜くさせおくるくせに。

秘曞をしおいる圌女は毎日どのように働いおいるのだろうか。仕事をするデスクには䜕を眮いおいる意倖ずちいかわのマスコットずか電話を取り次いで付箋に甚件をメモしたりしおるそのずきどんなペン䜿っおるどんな字を曞いおるペン字講座のお手本みたいな字可愛らしい䞞字少し個性的な字

  今でも、あの半返し瞫いのような小説を曞いおいる

党郚党郚知らない。想像すらできない。どこかですれ違ったずしおも気づけない。

だっお、だっおわたしは、圌女ず䌚ったこずすらないのだから。

顔も声も分からない。むンタヌネット䞊で眺める文字越しの圌女だけが、わたしの知っおいる『薔薇のあの子』のすべお。

だから、どうか皆さん。山田詠矎のこずを『えヌみちゃん』ず呌ばないで。わたしが『薔薇のあの子』を探すためには、虚停の申告をしないず誓わせた䞊で日本人党員匷制参加の倧芏暡フルヌツバスケットを開催するしかないのだ。「ハワむに留孊しおサブりェむに通っおた人」でも「ピアノが䞊手でコンクヌルに出たこずがある人」でもなく、「山田詠矎のこずを『えヌみちゃん』ず呌んだこずがある人」ず倧声で叫んで、立った人から芋圓を぀ける。それ以倖に圌女ず、圌女の文章ず再䌚する方法は思い぀かない。

わたしの䞭の『薔薇のあの子』は、きっずすでにわたしが認識した圓時のあの子の䞀郚ずわたしが勝手に育おた劄想のキメラになっおいるこずは分かっおいる。珟圚の圌女があの頃の圌女の面圱を持ち合わせおいない可胜性だっおあるこずも。それでもわたしは、『えヌみちゃん』ずいう呌び名のガラスの靎の欠片を抱え続けざるを埗ないのだ。


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