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電磁気力も「幻」となる一般相対性理論

    Masahiro Hotta

    重力は、よく「万有引力」とも呼ばれます。あらゆる物体の間に働く重力は、物体を引き寄せる引力であるためです。少なくともニュートン力学の範囲では、物体の質量は全て負にならず、そのため粒子間で重力が斥力になる現象は見つかっていません。

    しかし素粒子物理学の高次元超対称性理論などでは、重力を記述する高次元時空の一般相対性理論から、電磁気力や弱い力、原子核内の強い力が出てきます。

    下の記事では、特に5次元アインシュタイン重力から4次元電磁気力を出す説明を行っています。

    高次元時空において重力以外の力が働かない、正質量の自由粒子だけしかない場合でも、電磁気力は空間のコンパクト化によって現れ、そして引力だけでなく、斥力も出てくるのです。これは一見「万有引力」と矛盾しているようにも見えますが、実は矛盾はありません。それは粒子の電荷は正の質量エネルギーの寄与から出てくるのではなく、コンパクト化の内部空間の巻付き方向の運動量の寄与から出てくるからです。エネルギーと異なり、運動量は正負両方の符号の値を取れるため、それが4次元時空において粒子に正負両方の電荷を与えるのです。そしてこの理論では、電磁気力も、重力同様にホログラフィ原理の文脈における「幻」とも言えます。今回はこれを具体的に見てみましょう。

    まず5次元時空で、空間座標yの方向を半径Rのトーラス型にコンパクト化します。

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    (1)式:トーラスコンパクト化


    そして下記の形の5次元時空計量テンソルを考えます。

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    (2)式:y方向をトーラスの形にコンパクト化したときの5次元計量テンソル

    ギリシャ文字の添え字は、4次元時空の0,1,2,3という値をとります。またコンパクト化された方向の座標に、各量は依存しないとします。

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    (3)式:コンパクト化方向に依存しない5次元重力場

    一般相対性理論のアインシュタイン=ヒルベルト作用は以下で与えられています。

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    (4):5次元アインシュタイン=ヒルベルト作用

    この作用に(2)式の5次元計量テンソルを代入すると、4次元時空での暗シュタイン=ヒルベルト作用とともに、その最初の補正項として電磁場のマクスウェル作用も出てきます。

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    (5)式:コンパクト化から出てくるマクスウェル作用

    ここで元の5次元時空において、質量mの自由粒子(重力以外の電磁気力などは受けない)の作用を考えてみます。

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    (6)式:曲がった5次元時空での自由粒子の作用

    ラグランジュの未定定数法を使うと、この作用はラプス関数N(τ)を使って

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    (6)式:ラグランジュ未定定数関数N(τ)を使った自由粒子の作用

    とも書けます。そして(2)式の計量テンソルを使うと、具体的にこの作用は

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    (7)式

    になります。yに共役な運動量は

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    (9)式

    で与えられているので、(7)式の粒子の作用は、ラグランジュ未定定数としてのyのこの共役運動量を用いて、

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    (10)式

    と変形できます。重力場と電磁場は全てyに依存していないので、yに共役な粒子の運動量は保存します。それを定数qとします。

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    (11)式

    すると(10)式は

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    (12)式

    となります。この右辺第一項は全微分の積分となっており、境界項になりますので、無視することが可能です。結局、5次元時空での自由粒子の作用は以下の形になります。

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    (13)式

    ここで粒子の質量の2乗は、4次元時空で

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    (14)式

    に置き換わります。ここで注目すべきことは、出てきた(13)式の作用が、4次元時空で重力場と電磁場と相互作用をする荷電粒子の作用に、ぴったり一致している事実です。そして、その粒子の電荷は、5次元時空でのy方向の運動量です。ですから電荷には正負両方の値が可能なのです。

    ここで(1)式のトーラスへのコンパクト化の周期境界条件から、y方向の運動量は整数nを用いて量子化されています。

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    (15)式:運動量の量子化

    これは即ち電荷の量子化を意味しています。

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    (16)式:電荷の量子化

    低エネルギー領域で観測可能な全ての粒子の電荷は、素電荷量eの整数倍で書かれていますが、この「電荷の量子化」がこの理論では自然に出てくることも特徴です。今は簡単のために5次元時空をトーラス型にコンパクトしたので、素電荷の1/3や2/3などの値をとるクォーク電荷は出てこれませんが、10次元時空を4次元時空にある方法でコンパクト化をしてやると、非可換ゲージ場理論におけるクォークの電荷の量子化も出すことができます。

    5次元時空に2つの電気的に中性な粒子を入れておけば、4次元時空でのクーロン相互作用も出せます。y方向の運動量に一致するそれぞれの電荷を考えて、電荷密度を

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    (17)式

    で与えれば、4次元時空で距離r離れた2つの粒子に対する、以下のクーロンの相互作用も、一般相対性理論から自動的に出てきます。

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    (18)式:5次元一般相対性理論から導かれたクーロン相互作用

    ここで2つの電荷の符号は正負どちらもとれます。したがって重力と同じ引力だけでなく、重力とは異なる斥力も、高次元一般相対性理論から導くことが可能なのです。

    このことからわかることは、電磁気力も、重力と同様に等価原理が成り立つ対象であり得ることです。電磁気力が高次元の重力であるのならば、局所慣性系の座標をとれば、電磁場も重力も任意固定のその点で消去できるのです。このように電磁気力を高次元時空に埋め込めば、ホログラフィ原理の意味で、電磁気力も「幻」なのです。


     
     
     
    量子情報物理学の研究者です。著書に『入門現代の量子力学 -量子情報・量子測定を中心として-』(講談社サイエンティフィク)『量子情報と時空の物理』(サイエンス社)。質問はMONDで。(https://mond.how/ja/hottaqu)Twitter: @hottaqu

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