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3次元時空のアインシュタイン方程式と粒子周りの欠損角

    Masahiro Hotta

    アインシュタイン方程式は、一般相対論の基礎方程式です。物質の分布から可能な時空の形を決める役目を担いますが、時空が4次元以上だと、物質がない真空においても時空は曲がることができます。その典型例が、重力波です。ところが、時空が3次元のアインシュタイン方程式には、重力波解が存在しません。それは時空曲率を定める曲率テンソル自体が、物質のエネルギー運動量テンソルだけで一意的に書けてしまうためです。したがって物質や宇宙項がなければ、局所的には必ず平坦なミンコフスキー時空になります。

    この重力波の不在は、3次元時空の幾何学とアインシュタイン方程式から示されます。まず曲率テンソルから定義されるリッチテンソルは下記で与えられます。

    Rαμ=gβνRαβμν.R_{\alpha\mu}=g^{\beta\nu}R_{\alpha\beta\mu\nu}.

    またスカラー曲率は、このリッチテンソルから

    R=gαμRαμR=g^{\alpha\mu}R_{\alpha\mu}

    で定義されます。ここで重要なのは、3次元時空の特殊性として知られる下記の恒等式です。

    Rαβμν=gαμRβν+gβνRαμ−gανRβμ−gβμRαν−12R(gαμgβν−gανgβμ).R_{\alpha\beta\mu\nu}=g_{\alpha\mu}R_{\beta\nu}+g_{\beta\nu}R_{\alpha\mu}-g_{\alpha\nu}R_{\beta\mu}-g_{\beta\mu}R_{\alpha\nu}-\frac{1}{2}R(g_{\alpha\mu}g_{\beta\nu}-g_{\alpha\nu}g_{\beta\mu}).

    時空の局所的な曲がりを完全に決定する曲率テンソルの全ての成分は、リッチテンソルとスカラー曲率だけで書けてしまうのです。この恒等式と下記のアインシュタイン方程式を考えてみます。

    Rμν−12Rgμν=8πGTμν.R_{\mu\nu}-\frac{1}{2}Rg_{\mu\nu}=8\pi G T_{\mu\nu}.

    ここで右辺には物質のエネルギー運動量テンソルが現れていますが、このトレース部分を

    T=gμνTμνT=g^{\mu\nu}T_{\mu\nu}

    と書きます。すると3次元時空の曲率テンソルは

    Rαβμν=8πG(gαμ(Tβν−gβνT)+gβν(Tαμ−gαμT)−gαν(Tβμ−gβμT)−gβμ(Tαν−gανT))R_{\alpha\beta\mu\nu}=8\pi G \left( g_{\alpha\mu}(T_{\beta\nu}-g_{\beta\nu}T)+g_{\beta\nu}(T_{\alpha\mu}-g_{\alpha\mu}T) - g_{\alpha\nu}(T_{\beta\mu}-g_{\beta\mu}T) -g_{\beta\mu}(T_{\alpha\nu}-g_{\alpha\nu}T) \right)

    と、一意的に解けてしまいます。このことから、物質がどこにも存在しなければ、その曲率テンソルは完全に消えてしまうことがわかります。

    T_{\mu\nu}=0 \rightarrow R_{\alpha\beta\mu\nu}=0.

    つまり物質がない時空を波として伝わる重力波は、3次元の場合に存在しないのです。

    また3次元時空の特殊性なのですが、平坦な座標系で静止した質量mの点粒子を、その座標原点に置いたときの解が簡単に得られます。その粒子のエネルギー運動量テンソルの成分のうち消えないのは

    T00=mδ(x⃗)T^{00}=m\delta (\vec{x})

    だけです。この場合のスカラー曲率は、粒子があるその場所にデルタ関数の形で存在するだけであることもわかります。

    R=16\pi G m \delta (\vec{x}).

    粒子のいる地点以外の領域では物質のエネルギー運動量テンソルが零であるため、スカラー曲率もリッチテンソルも、そして曲率テンソルも全て零となります。つまり局所的には平坦なミンコフスキー時空になるのです。そしてこのような時空の計量テンソルは、光速度をcとした極座標系で

    ds2=−c2dt2+dr2+(1−4Gm)2dϕ2ds^2 = -c^2 dt^2+dr^2 +\left( 1-4G m \right)^2 d \phi^2

    で与えられます。この計量テンソルは確かに点粒子が存在するアインシュタイン方程式の解になっていることも確認できます。ここで角度座標を

    ϕ′=(1−4Gm)ϕ\phi' =\left( 1-4G m \right) \phi

    と再定義してやると、その新しい座標系での計量テンソルは普通の平坦時空での下記の形になります。

    ds2=−c2dt2+dr2+dϕ′2.ds^2 = -c^2 dt^2+dr^2 + d \phi'^2.

    ただし、この角度座標のとる範囲は0から2πではなく、それより狭い下記の領域になります。

    0\leq \phi'  \leq 2\pi- \delta. 

    ここでδは欠損角と呼ばれ、アインシュタイン方程式から、粒子の質量mと下記の関係があることが示されます。

    δ=8πGm.\delta=8\pi Gm.

    つまり正の質量があると、その点粒子周りを1週したとき角度が2πより小さくなるのです。図1では、その欠損角が90度となる場合を展開図として描いています。

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    図1:欠損角が90度の場合

    この図1の同一視から作られる空間全体は、図2のような円錐形です。

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    図2:点粒子を頂点とする円錐形となる3次元時空

    このように3次元アインシュタイン方程式の解は、幾何学的に簡単な時空形状になるのです。


     
     
     
    量子情報物理学の研究者です。著書に『入門現代の量子力学 -量子情報・量子測定を中心として-』(講談社サイエンティフィク)『量子情報と時空の物理』(サイエンス社)。質問はMONDで。(https://mond.how/ja/hottaqu)Twitter: @hottaqu

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