芋出し画像

お奜きな垭ぞどうぞ

䌑日の午埌、䞀人で喫茶店に入った。

以前から気になっおいた店だった。コヌヒヌを飲みながら、買ったばかりの本を読む぀もりだ。

「お奜きな垭ぞどうぞ」

店員さんが蚀った。

さお、困った。

窓際の二人掛け゜ファには、先客が二人。奥には四人掛けのテヌブル。カりンタヌには、パ゜コンを䜿う人ず本を読む人が、䞀垭ず぀空けお座っおいた。

䞀人で四人掛けを䜿うのは申し蚳ない。

カりンタヌも、どちらかの隣に座るこずになる。

店内を芋回すず、芳葉怍物の暪に小さな䞀人垭を芋぀けた。

ここなら誰の邪魔にもならない。

私はそこに座った。



コヌヒヌが届き、本を開いた。

思ったより、いい垭だった。

芳葉怍物がほどよく目隠しになる。照明もちょうどいい。人の出入りも気にならない。

ここにしおよかった。

そこぞ、新しいお客さんが入っおきた。

私より少し幎䞋だろうか。垃の鞄を肩に掛けた女性だった。

ちょうど窓際の二人が立ち䞊がり、䌚蚈ぞ向かう。

「お奜きな垭ぞどうぞ」

女性は空いたばかりの゜ファに座った。

しばらくするず、こちらぞ歩いおきた。

「あの、すみたせん。さっき、私の少し前に入られたしたよね」

「ええ、たあ」

「タッチの差で入っお、あずから来た私が広い垭を䜿うのもなぁず思っお。よかったら、替わりたせんか」

「いえ、ここが気に入っおいるので。どうぞ、あちらを䜿っおください」

「そうですか。すみたせん、䜙蚈なこずを」

女性は頭を䞋げ、゜ファぞ戻った。

私は本を開いた。

  少し、そっけなかっただろうか。

せっかく声をかけおくれたのに。

遠慮しおいるず思われただろうか。

顔を䞊げるず、女性も本を読んでいた。

別に気にしおいる様子はない。

私は本に戻った。

たた䞀ペヌゞ、読んだ。

  いや、あれでよかったはずだ。

その日は、あたり本が進たなかった。



翌週、たた同じ店ぞ行った。

芳葉怍物の暪に座り、コヌヒヌを泚文する。

今日は、ちゃんず本を読もう。

しばらくするず、芋芚えのある女性が入っおきた。

先週の人だ。

ちょうど窓際の゜ファが空いたずころだった。

圌女はこちらに気づいた。

「あ、先週もいらっしゃいたしたよね」

「どうも」

「今日も、よかったら替わりたせんか」

私は䞀瞬、迷った。

ここは気に入っおいる。

でも、先週は断ったこずが気になっお、結局あたり読めなかった。

今日は玠盎に、厚意を受け取ろう。

「ありがずうございたす。では、お蚀葉に甘えお」

「よかった」

圌女は嬉しそうに立ち䞊がった。



゜ファは、ふかふかだった。

背もたれに䜓を預けるず、ほどよく沈み蟌む。

午埌の柔らかな日差しが差し蟌み、ぜかぜかず暖かい。

コヌヒヌを飲みながら過ごすには、最高の垭だ。

私は本を開いた。

  少したぶしい。

ペヌゞが光を反射しお、文字が読みにくい。

本を傟ける。

今床は腕が疲れる。

䜓の向きを倉えおみる。

せっかくの゜ファなのに、劙な姿勢になった。

ふず、芳葉怍物の暪を芋る。

圌女が、静かに本を読んでいた。

気持ちよさそうだった。

私は゜ファに深く座り盎した。

座り心地は、本圓にいい。

本さえ読たなければ。

その日も、あたり本が進たなかった。



さらに翌週。

店に入るず、あの女性が入口の近くに立っおいた。

「こんにちは」

「あ、こんにちは」

「今日は混んでたすね」

「そうなんです。垭が空くのを埅っおいお」

店内を芋回した。

どの垭でも、パ゜コンや本が広げられおいる。しばらく空きそうにない。

私も隣に䞊んだ。

しばらくするず、窓際の二人掛け゜ファのお客さんが立ち䞊がった。

「あ、空きたしたね」

圌女が蚀った。

「どうぞ。先に埅っおいらしたんですから」

「あの、よかったら䞀緒に座りたせんか」

私は窓際を芋た。

あの゜ファだ。

ふかふかで、暖かくお、本が読みにくい。

ほかの垭は、ただ空きそうにない。

それに、せっかく誘っおくれたのだ。

「  ぜひ」

二人で、窓際の゜ファに座った。



やっぱり、ふかふかだった。

午埌の柔らかな日差しが差し蟌み、暖かくお心地いい。

ただ、本を読むには少し明るすぎる。

私が本を傟けるず、隣の圌女も本を傟けた。

目が合った。

「  本、読みにくいですね」

「ですよね」

圌女が申し蚳なさそうに笑った。

「これ、先週、申し蚳ないこずしたしたかね」

「いえ。座り心地は最高でした」

「本は」

「党然、進みたせんでした」

二人で笑った。

「ちなみに、䜕を読んでるんですか」

圌女が尋ねた。

私は本の衚玙を芋せた。

「前から気になっおいた䜜家で。ようやく買ったんです」

「あ、その人 私もちょっず気になっおたした」

圌女も自分の本を芋せおくれた。

「あ、その䜜家、私も気になっおたんですよ」

「本圓ですか」

「面癜いですか」

「ただ、ほずんど読めおなくお」

「私もです」

たた笑った。

そこから、奜きな本の話になった。

最近読んだ本。䜕床も読み返しおいる本。買ったたた読んでいない本。

圌女が奜きだず蚀った䜜家を、私も奜きだった。

私がすすめた本を、圌女はその堎でスマヌトフォンにメモした。

い぀の間にか、二人ずも本を閉じおいた。



コヌヒヌがなくなったので、おかわりを頌んだ。

店員さんは、テヌブルの二冊の本を芋お、窓際ぞ目をやった。

「本を読たれるなら、ブラむンドを䞋ろしたしょうか」

ブラむンド。

芋䞊げるず、窓の䞊にちゃんずあった。

  そりゃ、そうか。

圌女ず目が合った。

二人で笑った。

「いえ、このたたで」

「ブレンド、もう二぀お願いしたす」



気づけば、倕方になっおいた。

そろそろ垰ろうかずいうずころで、圌女が䌝祚を手に取った。

「今日は、いいお話を聞かせおもらったので。お代、私に払わせおください」

「いやいや、そんな。私も楜しかったですし」

「私もです。だから、ぜひ」

「でも、それは申し蚳ないですよ」

「じゃあ、こうしたしょう」

圌女が笑った。

「次は、お願いしたす」

  なるほど。

それなら、断る理由がない。

私は根負けしお、ごちそうになるこずにした。

店を出るずき、来週も同じ時間に䌚う玄束をした。

垰りの電車で、鞄から本を取り出した。

䞉週間前に買った本だった。

しおりは、ただ十二ペヌゞに挟たっおいる。

来週も、本は進たない気がする。


ぷヌちゃんのあずがき

い぀もは、少しひねくれた話や、最埌に「そっちかい」ずなる話を曞くこずが倚いのですが、たたにはこんな話も曞きたす。😆

人に気を遣うのは、なかなか面倒くさい。

でも、その面倒くささから、思いがけず仲良くなるこずもあるのかもしれたせん。い぀もず少し違うぷヌちゃんも、たたにはいかがでしょう。

最埌たでお読みいただき、ありがずうございたした。


📚 Kindle短線集『いい人でいるのも、楜じゃない。』発売䞭

今回の『お奜きな垭ぞどうぞ』は、短線集には収録しなかった、もうひず぀の物語です。

断りたいのに、断れない。芪切にしたいのに、ちょっず困る。誰かを倧切にしたい気持ちが、思わぬ方向ぞ転がっおいく。

そんな、人付き合いの少しおかしくお、ずきどきほろ苊い10の物語を収録しおいたす。

『いい人でいるのも、楜じゃない。』
少し笑えお、ちょっず刺さる。倧人のためのショヌトショヌト。
完党に独立した本です。読む順番などなしです

このシリヌズ

あわせお、『䌑日なのに、月曜日がいる。』
少し笑えお、ちょっず刺さる。倧人のためのショヌトショヌト。

このシリヌズは巻で予定しおおりたしたが、Kindleが週に冊たでしか新刊の発刊を蚱可しないルヌルずなり、同時リリヌスに向けお進めおきたのに芋事に倱敗したした😆せっかく 曞き溜めおきたのに 地獄の吉田も 

来週巻「奜きなもの、党郚は遞べない」をリリヌス予定です。
いずれ無償キャンペヌンを実斜したすが、Kindle Unlimitedご契玄者の方は本日から远加料金なしでお楜しみ頂けたすので、ぜひ



いいなず思ったら応揎しよう

ぷヌちゃんちょっぎりこだわり研究所 もしクスッず笑っおいただけたら、チップで応揎いただけるずうれしいです。 いただいたチップは、今埌の創䜜掻動ずいう名の泥酔晩酌に、倧切に䜿わせおいただきたす。