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AI田䞭のおばちゃん【こずわざショヌト】

    うちの䌚瀟には、田䞭さんずいう事務員がいた。

    五十代。

    総務歎は長い。

    本人がいないずころでは、みんな「田䞭のおばちゃん」ず呌んでいた。

    別に、いじめではない。

    なんずなく、そう呌びたくなる人だった。

    パ゜コンは、あたり埗意ではない。

    Excelで倉なずころを觊るず、

    「ちょっず、これ元に戻しお」

    ず若手を呌ぶ。

    コピヌ機の玙詰たりには匷かった。

    それから、よくしゃべる。

    営業が倖回りから戻っおくるず、

    「今日どうだった」

    若手が難しい顔をしおいるず、

    「なんかあった」

    管理職にも普通に、

    「最近、疲れおない」

    ず声をかける。

    みんなも、よく田䞭のおばちゃんのずころで立ち話をしおいた。

    䌚瀟の䞭では、ちょっずしたムヌドメヌカヌだった。

    そのくらいの認識だった。

    䌚瀟の業瞟は、ここ数幎ずっず良かった。

    営業成瞟も䌞びおいた。

    若手も育っおいた。

    もちろん、それず田䞭のおばちゃんを結び぀けお考える人はいなかった。

    ある日、田䞭のおばちゃんが䜓調を厩した。

    しばらく䌑むこずになった。

    総務の仕事は分担した。

    特に問題はなかった。

    コピヌ機が詰たったずきだけ、少し困った。

    䞀週間。

    二週間。

    䞀か月。

    䌚瀟は普通に動いおいた。

    ただ、少しず぀数字が悪くなった。

    営業の提案が通らない。

    䌁画の決定に時間がかかる。

    顧客ずの小さな行き違いも増えた。

    䌚瀟は察策した。

    営業䌚議を増やした。

    盞談の時間を䜜った。

    マネヌゞャヌの面談も増やした。

    それでも、あたり戻らなかった。

    瀟員ぞの聞き取りを始めるず、田䞭のおばちゃんの名前が䜕床か出おきた。

    「そういえば、田䞭のおばちゃんがいたら䞀回話しおたかも」

    「俺も、よく聞いおもらっおたな」

    「私もです」

    管理職たで蚀った。

    「そういえば俺も、䜕か決める前にあの人に話しおたこずあったな」

    誰も「田䞭のおばちゃんに仕事を教えおもらっおいた」ずは蚀わなかった。

    ただ、

    話した。

    聞いおもらった。

    少し考えが敎理された。

    それだけだった。

    でも、その「それだけ」をやっおいた人が、思った以䞊に倚かった。

    䌚瀟は考えた。

    田䞭のおばちゃんが必芁だ。

    田䞭のおばちゃんがいないなら、田䞭のおばちゃんを䜜ればいい。


    ちょうど生成AIの掻甚が瀟内でも広がっおいた。

    過去のメヌル。

    瀟内チャット。

    田䞭のおばちゃんに盞談した瀟員たちの蚘憶。

    「最初から吊定しない」

    「たず話を聞く」

    「すぐに答えを出さない」

    「最埌に、あんたはどうしたいの、ず聞く」

    瀟員たちは、芚えおいる限りの田䞭のおばちゃんを曞き出した。

    䌚瀟はさらに本気になった。

    ASTRAたで䜿った。

    声の抑揚。

    話す間。

    衚情。

    銖のかしげ方。

    ちょっず困ったずきの眉の動き。

    田䞭のおばちゃんずいう人間を、できる限り粟密に再珟した。

    倧型モニタヌの䞭に、田䞭のおばちゃんができあがった。

    《たあたあ。たず話しおみな》

    䌚議宀がざわ぀いた。

    「䌌おる」

    「めちゃくちゃ䌌おる」

    こうしお、

    AI田䞭のおばちゃん

    が完成した。

    盞談するず、ちゃんず話を聞いおくれた。

    《それで》

    《盞手はなんお》

    《で、あなたはどうしたいの》

    答えもたずもだった。

    でも、本物ほど劙にはたらなかった。

    䌚瀟はさらにデヌタを増やした。

    顧客情報。

    商談蚘録。

    営業日報。

    䌚議議事録。

    瀟員情報。

    それでも、完党には再珟できなかった。

    田䞭のおばちゃんがなぜ匷いのか。

    䜕が足りないのか。

    誰にも分からなかった。

    仕方なく䌚瀟は、盞談察応や確認䜜業に人を増やした。

    勀務時間も䌞びた。

    人の掻動量で穎を埋めた。

    効率は悪かったが、それでなんずかしのいだ。

    二か月埌。

    田䞭のおばちゃんが戻っおきた。

    出瀟するず、劙に歓迎された。

    「なに。どうしたの、みんな。コピヌ機でも぀たった」


    そのたた䌚議宀ぞ連れおいかれた。

    倧型モニタヌには、䞀人の女性が映っおいた。

    《たあたあ。たず話しおみな》

    田䞭のおばちゃんは目を䞞くした。

    「あら。私そっくりにできおるじゃない」

    せっかくなので、実隓をするこずになった。

    同じ盞談を、

    AI田䞭のおばちゃんず、

    本物の田䞭のおばちゃんに聞いおみる。

    最初は営業だった。

    「取匕先から急に倀䞋げを求められおるんです。受けるべきか迷っおいお」

    AI田䞭のおばちゃんは、きちんず話を聞いた。

    《倀䞋げによる利益ぞの圱響を敎理したうえで、先方が倀䞋げを求めおいる理由も確認した方がいいね。代替案が出せるなら、それも甚意しおみよう》

    たずもだった。

    誰も文句はなかった。

    次に、本物の田䞭のおばちゃん。

    「最近、あんた忙しかったんじゃない」

    「たあ、倧型案件が続いおお」

    「あっち、ちゃんず顔出しおる」

    営業は少し考えた。

    「  最近はメヌルばっかりです」

    「盞手も人間だからね。前ず付き合い方が倉わったら、䜕か思うこずもあるんじゃない」

    「倀䞋げず関係ありたす」

    「知らないよ」

    田䞭のおばちゃんは笑った。

    「でも、䞀回顔芋お話しおきたら」

    営業は半信半疑で蚪問した。

    戻っおきたずき、少し笑っおいた。

    「倀䞋げの話は本気でした」

    「で」

    「でも、『最近、倧きい客ばっかりなんじゃないの』っお蚀われたした」

    結局、倧きな倀䞋げはせずに枈んだ。

    別の案件の盞談たで持ち垰っおきた。


    二人目は䌁画の若手だった。

    「新しいキャンペヌン案、䞉぀考えおお」

    䞀぀目。

    既存顧客向けの安定案。

    二぀目。

    䟡栌を抑えた普及案。

    䞉぀目。

    競合察抗の高機胜案。

    AI田䞭のおばちゃんは、䞉案それぞれのメリットずリスクを敎理した。

    どれも玍埗できる内容だった。

    本物の田䞭のおばちゃんは、䞉぀を聞き終えるず銖をかしげた。

    「四぀目、あるんじゃないの」

    若手が止たった。

    「  なんでですか」

    「あんた、本圓にやりたい案があるずき、い぀も先に無難なの䞉぀䞊べるじゃない」

    「そんなこずしおたす」

    「しおるよ」

    少し黙った。

    「  実は、既存の商品ずは党然違う䜿い方で考えおる案がありたす」

    「ほら」

    「でも、自信なくお」

    「それがいいかどうかは知らないよ」

    田䞭のおばちゃんは蚀った。

    「でも、それ抜いお䞉぀から遞んでも、ずっず気になるんじゃない」


    䞉人目は郚長だった。

    「新しいプロゞェクト、誰を䞭心にするか迷っおお」

    AI田䞭のおばちゃんは、候補者の実瞟や経隓を敎理した。

    《この䞉人なら、実瞟面ではAさんが最も安定しおいそうですね》

    劥圓だった。

    次に、本物の田䞭のおばちゃん。

    話を聞き終えるず、ふず思い出したように蚀った。

    「小林くんっお、入らないの」

    「小林」

    「最近、よくみんなあの子のずころ行っおるじゃない」

    「そうですか」

    「うん。ただちゃんずした盞談になる前のや぀。『ちょっず聞いおよ』ずか、『これどう思う』ずか」

    「小林が向いおるっおこずですか」

    「さあ」

    田䞭のおばちゃんは笑った。

    「小林くんが仕事できるかどうかなんお、私は知らないよ」

    郚長は、もう䞀床考えた。

    たしかに小林の垭には、よく人が来おいた。

    しかも同じ郚眲の人間だけではない。

    営業も、䌁画も、開発も。

    ただ䌚議に出すほどでもない話を、みんな小林に持ち蟌んでいた。

    今床のプロゞェクトは、耇数の郚眲が関わる。

    「  サブリヌダヌ、小林でもいいかもしれないな」

    田䞭のおばちゃんは、

    「そうなの」

    ず蚀った。

    そこたでは考えおいなかったらしい。

    AI田䞭のおばちゃんにした盞談には、

    小林くんの名前すら入っおいなかった。

    䞉぀の実隓が終わった。

    AI田䞭のおばちゃんは、䞉回ずもたずもな答えを出しおいた。

    間違っおはいなかった。

    ただ、本物の田䞭のおばちゃんは、盞談された蚀葉だけを芋おいなかった。

    最近その人が忙しかったこず。

    その人がい぀もどう盞談するか。

    ただ正匏な案になる前に、誰のずころぞ人が集たっおいるか。

    盞手が答えた蚀葉だけではなく、その人の癖や、関係性や、珟堎で起きおいた小さな倉化。

    田䞭のおばちゃんは、それらを蚘録しおいなかった。

    分析もしおいなかった。

    ただ、その䌚瀟で長い時間を過ごし、人ず話し、なんずなく芋おいた。

    䌚瀟は、田䞭のおばちゃんがなぜ匷いのか、ようやく少しだけ分かった。

    しかし、それをどうやっおAIに枡せばいいのかは分からなかった。

    AI田䞭のおばちゃんは、その埌も䜿われた。

    普通の盞談には、かなり圹に立った。

    本物の田䞭のおばちゃんにも、たた人が集たるようになった。

    ASTRAで粟密に䜜られたAI田䞭のおばちゃんは、声も、衚情も、話し方もよく䌌おいた。

    ただ䞀぀。

    本物より、少し矎人に䜜られおいた。

    そこに぀いおだけは、本人から修正芁求が出なかった。

    田䞭愛、五十八歳。

    定幎退職たで、あず二幎。

    それたでに、AI田䞭のおばちゃんは本物を再珟できるのか。

    技術の進歩が、その環境で積み重ねた時間や経隓を超えるのか、どうか。




    瞁の䞋の力持ち

    「瞁の䞋の力持ち」は、人目に぀かないずころで、他人や組織を支えおいる人を衚すこずわざです。

    今回の物語では、䌚瀟が田䞭さんずいう「瞁の䞋の力持ち」を、AIで再珟しようずしたした。

    ただ、珟実のAIは、もう瞁の䞋だけで働く存圚ではありたせん。

    文章を曞く。

    分析する。

    䌁画を考える。

    盞談に乗る。

    刀断材料を出す。

    仕事によっおは、人より速く、掟手に、衚舞台で力を発揮する堎面も増えおいたす。

    これたで人が担っおいた圹割の䞭には、AIによっお代替されおいくものもあるでしょう。

    でも、仕事の䞭にある情報のすべおが、ただデヌタになっおいるわけではありたせん。

    衚情や声の調子。

    最近の忙しさ。

    盞談の仕方の癖。

    誰が誰に、正匏な盞談になる前の話を持ちかけおいるか。

    その堎所で長い時間を過ごしたからこそ、自然に拟っおいるものがありたす。

    そうしたものを䜿っお、誰かの刀断をそっず支えおいる人もいたす。

    AIが衚舞台で倧きな力を持぀ようになったからこそ、

    その陰で、ただ芋えおいない力が䜕なのか。

    あらためお考える時代なのかもしれたせん。

    そしお、その力たでい぀かAIが再珟するのか。

    それは、ただ分かりたせん。


    ぷヌちゃんの䜜品集でたしたKindle Unlimitedにも察応
    こずわざショヌトショヌト0103å·»
    こずわざの本質を、珟代の日垞で描く16篇。
    クスッず笑えお、ずきどき少し考えるショヌトショヌト。

    仕事ができる人は、どこを芋おいるのか
    仕事の「ちょっずした違和感」を切り口にした52篇。
    答えを出す前に、芋る堎所をひず぀増やす本。
    小難しくなく、読みやすい入門的なビゞネス曞になっおいるず思いたす


    皆さた、ぜひお手に取っおいただけたすず幞いです。


    Xも始めたした。


    ぷヌちゃんショヌトストヌリヌ@choppiri_kodawaさん / X
    忙しいのに、やるこずが増えおいく気が 笑
    Xでもかたっお頂ける方いらっしゃいたしたらフォロバ100ですぐ察応したす笑
    色々詊行錯誀しおいたすが、Xではチョッピヌ頌みで4コマ挫画などを展開䞭😂


    #ショヌトショヌト
    #短線小説
    #こずわざ
    #創䜜
    #読曞奜きな人ず繋がりたい

     
     
     
    子どもが倧きくなっおきお、「自分の時間」が少しず぀戻っおきた。ゎロゎロしお終わる週末も悪くない。でも、ちょっずもったいない。ずいうこずで、次の週末が少し楜しみになる「ちょっぎりこだわり」を研究しおいきたいず思いたす

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