劇場版カブちゃんズ。
🍀
2026年9月21日。
ベッドには、眉間にしわを寄せて苦しそうに横たわるゆるしまさんの姿がありました。
その顔は赤く、触らなくとも熱を帯びているのがわかるほどです。
「ゆるしまさん……」
傍らで見守るカブちゃんは、ゆるしまさんの額に貼られたクールシートを取り替えようとしました。
そこで気づきます。
ベッドサイドのテーブルに並べられた痛み止めの薬、経口補水液のペットボトル、プリン、クールシート、どれもが空になりそうでした。
「あ……なくなっちゃう」
そこで、点けっぱなしだったテレビからニュース速報が流れてきました。
『台風は勢力を保ったまま、関東地方に接近しています。雨と風は次第に強くなり、午後1時頃には暴風域に入る見込みです──』
カブちゃんはそれを聞いて、壁に掛かっている時計を見ました。
──午前10時。
3時間後に台風が来る。
それまでに。
不安そうな表情は、
何かを決めた顔に変わりました。
「ゆるしまさん、待っててね」
🍀
外に出ると、すでに風は強くなっていました。
葉っぱと茎をなびかせながら、カブちゃんはふらふらと道路沿いまで歩きます。
何台かの車を見送ったあと、向こうから来る軽トラに目を留めました。
ころころと近づいてくるそれに合わせ、カブちゃんは民家の塀に上ります。
目の前まで来たところで、ジャンプ!
見事、荷台に飛び乗りました。
カブちゃんに気付かないのか、軽トラはそのまま走り続けます。
さあ、目指すところへ。
ドラッグストアまでは、この道をまっすぐ。
このままゴールまで行けると思っていました。
🍀
安心したのも束の間。
軽トラは急に「え! そこ車で入れるの?」というレベルの畑の中にノーウィンカーで曲がりました。
でこぼことした地面でカブちゃんの身体は跳ねたり揺れたり。
「わ、わ、わ! そっちじゃないよ!」
呼び掛けは届かず、ついに大きい段差で落ちそうになってしまいました。
その瞬間。
ふわっと、身体が浮かびました。
誰かが持ち上げてくれた──。
カブちゃんは上を見ました。
「アシタルカちゃん!」
カブちゃんを抱え、必死に背中の羽をぱたぱたさせているのは──。
ゆるしまさんの『ことばの守護者』。
羽妖精のアシタルカでした。
「う〜ん、う〜ん、カブちゃん意外と重いぃ〜」

険しい顔のまま、カブを抱えたアシタルカは再び県道まで戻ってきました。
そして今度は軽トラではなく、コンビニ配送トラックの上にどすん。
「ありがとうアシタルカちゃん🍀」
「もう! カブちゃんったら。心配で見に来たらこれだもの〜」
「えへへ、ごめんね💦」
ともあれドラッグストアはもうすぐそこ。
ふたり(2匹?)は目を合わせ、頷き合いました。
🍀
ついにドラッグストアに着いたふたり。
カートを押しながら、買うものをどんどん入れていきます。
痛み止めの薬。
ポテチ。
経口補水液。
ポテチ。
クールジェルシート。
ポテチ。
「カブちゃん!」
「なぁに?」
「ちょいちょいカブちゃんの食べたいもの混じってるよ!」
「え? ゆるしまさんポテチ好きだよ?」
「今日は買わなくていいの」
「でも、ゆるしまさんおデブだよ?」
「おデブでも今日は食べないの」
渋々ポテチを諦めたカブちゃん。
2人は残りの買い物をカートに乗せてレジに向かいました。
レジにて。
次々にスキャンされて袋に移されていく商品をふたりは見ています。
「合計で2456円です」
と、レジのお姉さんが言いました。
「はぁい!」
カブちゃんは胸ポケットを探り、お金を取り出しました。
──720円。
「カブちゃん……ぜんっぜん足りてない」
カブちゃんはあれぇ? というお顔でした。
アシタルカは焦りました。
──このままでは迷惑系になってしまう。
そこに、がたん、ごとん、と何かの音が聞こえてきました。

近づいてくる音に目を向けるとそこには──。
古ぼけて、足の生えているトランクがいました。
可愛い顔の彼はふたりの前で止まりました。
そして、手帳やペンが入っている小物入れをアピールしています。
カブちゃんは小物入れに手を入れました。
取り出したのは、お札。
小さく折り畳まれていたのは5000円札でした。
「……お借りしてもいいの?」
アシタルカが尋ねました。
トランクは無言のまま、にこりと微笑みました。
🍀
トランク型のゆるキャラ『ツムギバコ』の登場により無事支払いを済ませた3人は外に出ました。
身体に吹き付ける風は、来たときより明らかに強くなっていました。
「わあ!」
手に持った袋が風にあおられ、カブちゃんは今にも転がってしまいそうです。
そこでツムギバコは、トランクのメインファスナーをアピールしました。
「カブちゃん、中に入れて良いみたいだよ」
「えっ、ありがとう🍀」
ファスナーを開けて中に袋を入れました。
最後にカブちゃん自身も頭だけ出して中に入りました。何か変ですか? という顔でした。
「ちょっとカブちゃん! 初対面のトランクさんの中に入ってはダメよ」
真っ当なことを言うアシタルカでしたが、ツムギバコは気にせずにっこりのままでした。
アシタルカは戸惑います。
カブちゃんを持ち上げるだけでも精一杯なのに、もっと重そうなトランクは持てない。
そこでふと、ツムギバコから顔を出すカブちゃんの葉っぱの向きに気が付きました。
帰る方向。
ゆるしまさんの家に向かって、風が吹いている。
追い風を上手く利用できれば──。
ツムギバコはその考えを理解したのか、がしゃりと音を立てて自分の足をトランク内に収めました。
代わりに出てきたのは、車輪でした。
「トランクさんすごい!」
カブちゃんが褒めると、ツムギバコは照れた仕草をしました。
そして。
ふたりの視線はアシタルカに向いたのでした。
「えええぇ〜〜……わかったわよ」
🍀
台風がすぐそこまで迫っている中、田舎の県道をすごい勢いで走っている1台のトランクがありました。
そのトランクを後ろから押しているのは、羽を広げて低空飛行するアシタルカです。
追い風に乗ったスピードは、来たときの比ではありませんでした。
🍀
あっという間に家に到着したとき、
3人の顔には小さな達成感が浮かんでいました。
中のゆるしまさんを起こさないよう、ゆっくりとドアを開けるカブちゃん。
(カギかけてないの!?)と、アシタルカは心の中でツッコミをしました。
車輪から足に戻ったツムギバコは、玄関の靴箱脇で止まり、足を収めて目を閉じました。
「あんまり無茶しないでね」
アシタルカは、そう言ってタブレットの中に吸い込まれていきました。
ふたりとも、ありがとう🍀
カブちゃんはサイドテーブルの上を片付け、買ったものを並べていきました。
まだ赤い顔のままのゆるしまさん。
冷たいジェルシートを額に貼ってあげると、少しだけ呼吸が和らいだようでした。
それから。
カブちゃんはゆるしまさんを見守り続けました。
雨風が強くなり、お家が揺れて少し怖かったけど、それでも見守り続けました。
夜が明けて。
カーテンの隙間から台風一過を伝えるような日差しが射し込んでいました。
ゆるしまさんのベッドには誰もいません。
テーブルの飲み物食べ物は、食べ終えたのか、整理されていました。
テーブルに突っ伏して寝ているカブちゃんの背中には、薄い毛布が掛けられていました。
すぐ側にメモがありました。
ゆるしまさんのとても汚い字で、
カブちゃん ありがとう☺️
ポテチはあとで食べようね☆

おしまい🍀
Special Thanks
#ゆるキャラ作ってみた 企画者様👇👇👇
めかぶさん✨✨
お陰様で物語が生まれました😊
ありがとうございました🙇✨
バトンを渡してくれた方👇👇👇
みんなのアイドルチゲ鍋しゃん✨✨
ゆるキャラ登場まで文字数かかってしまいました😂
声をかけてくれてありがとうございます🥰
あとがき
今回の記事を読んでくれた方、
前回の報告記事を読んでくれた方、
本当にありがとうございました🙇✨
多くのスキと心配や励ましのコメントをいただき、素直に驚き、嬉しかったです🥲
今現在もお返しをしている最中ですが、
私の読書速度がちんたらちんたらしているので、
そのうち来るだろ〜、くらいのテンションで待っていてもらえると助かります🤤
長い文章を読んでくれてありがとうございました🙇✨
またいつでもお立ち寄りください😋🍀

