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殻と空

    レールのお外

    人間という殻の中で生きる私たちはなんだろう。

    あまりにも弱く脆い殻。すぐ悩み、ささやかな幸福を感じてはまた悩む。そもそも幸福の定義は人それぞれだというのに、国が違うというだけで争い信仰の違いで差別が生まれる。文化や言語が違うだけ、肌の色が違うだけ、自分とは違う。それだけ。

    空を見上げてみると、人間がいかに小さくくだらないことで悩み争っているのかがよくわかる。天井のない空のどこかにあるちっぽけな星。日常のどんな出来事よりも恐ろしいものが空にはある、私たちはなにも知らないのだ。

    人は時代が進むにつれて空を見上げなくなっただろう。自分の身に降りかかる不幸やたまにある幸福に血眼なのだろう。空を見上げてほしい、酷く美しく恐ろしい空を。なにも考えずにただ上を見るだけでいい。

    なぜ星は輝き、月は満ち欠けるのか。どこまで広がっているのか。
    天候や季節も変わる、地球は丸い。解明されていることもあるだろうが、私にとっては全くもって答えになっていない。目の前に広がる¨これら¨はなんだ。もしかしたらこの世界でたったひとりぼっちなんじゃないか、私はこれに酷く悩まされているところだ。これを「唯我論」というらしい。

    唯我論にたどり着いた時、私は少し安堵した。同じ考えの人間がこの世にいるということがわかっただけでも救いになった。このように自分と同じ思考や行動するものを発見すると安心してしまうのが悔しい、人間だからこれは仕方のないことなのだろうが。

    それはそれとして、これは理論なわけでやはり正解ではない。
    私は答えが知りたいのだ。どうしてこうなっているのかを知りたい。
    そしたらきっと納得した上で生きていけるだろう、悩みもしないだろう。
    今感じる幸福なんて些細でちっぽけなものだ。
    もっと爆発的に生きてみたい。

    話は変わるが、この世には本質から道を逸らせる誘惑が多すぎる。私もすっかり道を逸れてしまった。軌道修正はなかなか難しいだろう、残念ながら。これから先もきっと逸れて逸れて死んでいくのだ。小さな星の、小さな人間として殻に閉じこもり死んでいく。それはもう決められたこと、そう思い私はここで気づく。

    『人間という殻から逃げ出すことは絶対にできない』

    しっくりきた、これは決定的なこの世で唯一の明確な答えだ。そうなったら私が考えるべき問題はひとつ。いかにしてこの殻に閉じこもった状態で人生を謳歌し、爆発するかということだ。せっかく人間になったのだから人間らしく足掻いて幸せになってみたい。もしかしたら勢いでポロっと人間をやめることができるかもしれないし、絶対はこの際撤回しよう。

    まず私は今を生きたいと思っている。言葉通り¨今¨である。先のことは考えたくない。私は備えがどうも苦手でなかなかできないでいる。いざという時の備え、将来の為の備え、老後の備え。災害の多い国だ、緊急時の備えはもちろん必要だろう。自然の摂理には勝てない。ただ老後の備えについてはどうも納得がいかない。

    老後の自分は他人だ。今の自分には関係ないと思う、これは乱暴な個人的意見だ。今の私を疎かにしたら絶対にその¨他人¨は怒るだろう。これだけは明確だ、矛盾しているが他人であり自分自身だからわかる。どうなるかもわからない将来のご老体より、間違いなく生きている今を優先する。幸せになる、これが私の答えだ。

    先にも言ったが幸福の定義は人それぞれだ。幸福はトレンド、日々その定義も変わる。現在私のトレンドは映画鑑賞である。そんな幸福の中には生き方を見出せるチャンスも転がっているもので、私は最近それを拾った。それはたまたま見た映画で流れた曲の歌詞だった。

    ¨きみとぼくには思い出がある¨
    ¨目の前に伸びている道よりもずっと長い思い出が¨

    ビートルズの「Two Of Us」だ。孤独が出会った愛情、希望のない命の中に差す光。命だって投げ捨てる覚悟の中に捨てきれない希望に気づかされるような存在、友情や愛だけでは片づけられない、この世でたった一つのかけがえのない半身のような存在。今までに味わったことのない幸福感が駆け巡った。

    私は死ぬまでに見つかるかもわからないこの世でたった一つの存在を探す旅に出ようと思う。命の懸けがいがありそうだ、懸命に生きられそうだ。ダラダラと生きている暇はなくなった、ひとまずこれを私の生きがいにしてみよう。上を向けばすぐわかる。私たちはちっぽけな殻だ、なんとかなる。

    #創作大賞2026 #エッセイ部門

     
     
     
    27歳。戦争や差別、宗教について考えるようになり、ムスリムの父を理解してみたいと思うようになりました。少しずつ世界のことを知っていきたい。

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