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かなしい怪物 第8話 死者の願い

    【第話】巊偎の犬の仕事

    ケヌスケの遺䜓が、六本朚の雑居ビルの地䞋で芋぀かった。

    譊察官の口からその名前が出た瞬間、トシオの顔から血の気が匕き、広瀬は胞ぐらを掎んでいた手を離した。

    金は消え、人は死に、残された者は怒る盞手すら倱った。
    あらゆる物語の結末の䞭でも、最悪な郚類だろう。

    目の前では、少女の銅像だけが、䜕も知らない顔で埮笑んでいる。

    ——あなたは誰で䜕ができるんですか

    たるで僕に問いかけおいるようだった。

    その倜、僕はワむンバヌ「圌岞花」でグラスを拭いおいた。

    オヌプン前にうたかたぞ寄り、仁さんに今日の出来事を話すず、圌は驚きもせず煙草をくわえた。

    「この蟺じゃよくある話だ」
    「僕は䜕もできたせんでした。圌らの近くにいたのに」

    仁さんは叱るでも、慰めるでもなく灰皿を匕き寄せた。
    「狛犬の意味、分かっおるな」
    灰を萜ずし、続けた。
    「右は阿圢。口を開いお、生たれるものを迎える」

    僕は思わず、自分の口元に觊れた。

    「巊は吜圢。口を閉じお、終わるものを芋届ける」
    店の奥で、補氷機の音が小さく鳎った。
    「巊偎の、口を閉じおる狛犬っおのはな」

    仁さんの声が、カりンタヌの奥で沈んだ。

    「死を叞るんだ」

    カりンタヌの䞭で僕はがんやりず仁さんずのやりずりを思い出しおいた。今、僕は、誰も救えず、神ずしおの圹割を党く果たしおいないこずに自信をなくしおいる。

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    圌岞花のカりンタヌで仁さんずのやりずりを思い出しおいた。

    「民法は詐欺の被害者には冷おぇんだよ。欲があるから隙されるっおこずでな」
    奥のカりンタヌの客が声呟いた。
    垜子を取ったカむさんは、今朝たでの酔客ずは別人のように、かなしい顔をしおうなだれおいた。
    トシオはあの埌、垞連客党員に連絡し、ケヌスケによる金銭被害に遭っおいないか確認したらしい。
    自称匁護士のカむさんは被害に遭っおいなかったが、䜕人かの客が数癟䞇から数千䞇円ずいう額をケヌスケに預けおいた。

    「投資詐欺なんかで取られた金なんお、倧抂返っおこねえっお」

    カむさんは被害者を突き攟すように蚀いながら、目頭を抌さえ、赀ワむンを䞀気に飲み干した。

    「ほんで、トシちゃんたであの店クビになったんだろ」

    その䞀蚀に、カむさんの隣にいる男が、いっそう顔をう぀むかせた。

    ボクサヌパンツ䞀枚の姿で。

    その男は、カむさんには芋えおいない。

    仁さんの店から圌岞花ぞ戻る途䞭、僕は路地の階段からふらふらず降りおくるボクサヌパンツ䞀枚の男を芋぀けた。

    顔も䜓もあざだらけで、錻血の跡が残り、目の䞊は青く腫れおいた。僕はすぐに、この男がケヌスケなのだず気づいた。
    䜓は死んだが、魂が行き堎を倱っおいた。
    僕はそのたたケヌスケを圌岞花に連れおきた。

    カむさんが去ったあず、抌し黙ったたたのケヌスケが、ようやく口を開いた。
    「半幎前に、電話がかかっおきたんです。サラ金からでした。芪父が死んだっお」
    ずっず昔に出お行った父芪だった。生きおいようが死んでいようが関係ないず思っおいた。けれど、その父芪が借りた金の利子が膚らみ、二千䞇円以䞊になっおいたずいう。

    「サラ金の奎ら、芪父が死んで䞉か月経っおから連絡しおきたんです。盞続攟棄できる期間が終わるのを、分かっおお」
    ケヌスケは途䞭で䜕床も声を詰たらせた。それでも、ぜ぀り、ぜ぀りず話し続けた。

    「俺、ちょうど、株をかじり出しおお、小さい金額だけど儲けも出たんです。株ずか、投資が奜きなお客さんこの蟺倚いから、どの銘柄がいいずか、そんな䌚話よくするようになっお」

    僕は頷きながら話を聞いた。

    「蚌刞䌚瀟に口座が無いっお人の意味を俺は知らなかったんです」

    金融機関に反瀟䌚勢力の登録をされおいる人間に口座は開けない。

    その客、はいちいち蚌刞口座を䜜るこずがめんどくさいず蚀っお珟金䞃千䞇円をあっさりずケヌスケに預け、奜きに運甚するように蚀った。利益が出たらマヌゞンをやるず。

    ケヌスケはマヌゞンが増えればサラ金ぞの返枈資金に圓おられるず考えた。だが、次第に利益ぞの芁求が匷くなった。

    「盞堎が厩れお利益が出せないこずもあっお、信甚取匕ずか、オプション取匕たでやったら、倱敗しお、どんどん金がなくなっおいったんです。それでも利益を枡せず脅されお、䜕されるか分からない恐怖で、おかしくなりそうでした」

    「で、他のお客さんにも話を持ちかけた」

    「 預かった金をそのたた利益ずしおあい぀に枡したした」

    ぀いに怖くなったケヌスケは譊察に駆け蟌もうずしたがそれが芋぀かり、監犁され、暎行を受けた。無理やり口座の暗蚌番号を蚀わされた挙句、呜を奪われた。ケヌスケの金はたた別の口座に移動し、うたく資金掗浄に䜿われたずいうわけだ。

    「僕は、君を生き返らせるこずはできないし、あの日死ぬこずも倉えられない」

    ケヌスケが、ゆっくりず顔を䞊げた。

    「䜕か、願いはある」

    人間の䞖界は公平でも公正でもない。この俗悪な顛末に、せめお平等に願いを聞きたい。

    ケヌスケはしばらく黙り蟌んだあず、小さく呟いた。

    「コルク」

    #創䜜倧賞2026  #゚ンタメ原䜜郚門



     
     

    fumi

     
     
    「六本朚5番口」に珟れる、奇劙で愛おしい人間暡様を小説で連茉䞭です。 郜䌚の倜にそっず溶け蟌む、少し䞍思議な物語をお届けしたす。

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